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一滴の波紋【原文】1巻の2  作者: 藤田 ユキト
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ある日の日記・86回


八十六回



 しかしこの恋の引力とゆうものは、そう自然の法則みたいに規則正しくおよんではくれないのです。


この恋こそ……


自分から自分に引きつける引力を作動しなければならないのです。


真実の愛というものがあるなら、どうしても自分の方から彼女の愛を引きつけなければならないのです。


しかし……


しかし……、この僕に果たしてそのような大業が果たせるでしょうか?


アァ~、僕はもう待っていられない!


もう沢山だ。


このように魂を吸い取られ、あやつり人形みたいに、彼女の思い通りになっていることが……



 イエイエ、別に彼女の愛を放棄しようと思って、このようなことを言うんじゃないのです。


その愛を掴み取る為に、僕はその柿が手に届くような台を据え置いて――

その柿をもぎ取ろうとするのです。


この行動は、早とちりでしょうか?


イヤらしい行動でしようか?


 しかし僕には、どうしてもその柿を手にしてみなければならないのです。


柿の実り期において、最後に残ったその柿を僕は、やさしく受け入れなければならないのです。


アァ~、神よ!


私に勇気をお与えください!


彼女の愛を引きつける強盛な引力を、僕にお与えください!


そうすれば彼女はきっと僕の手元に素直に入って来てくれることでしょう。



 しかしながら、この二人の恋というものは、本当にクセが悪いですね!


この日記で語り合っている内は「早くあの人と夫婦になりたい」と思いつめているというのに――


イザ、僕が彼女にアタックしようか? と思って行動に出ようとすると――


彼女は不思議なことに、気もそぞろにならんばかりに動転して、一目散に逃げてしまいます。



 まったく自分でも彼女の愛をどうして掴み取ったらいいのか?


頭を痛めますよ!


まるで鬼ごっこをしているみたいですね。


幼稚園の芝居じゃなかとぞ!


見てみい、もう彼等は大口開けて僕達の幼稚な恋を嘲り笑っているでわないか!


本当に彼女と語り合っていると、ダンダンオツムの程度が下降して、幼稚になっていくようです。


 確かに自然とそうなっていくとゆうことは、お互いのリズムが合い、その世界にこそ二人の幸福境涯があるのだと思いますね。



 こんなに大人の世界を醜く感じ、馴染めないでいる僕にとって、この恋こそ……


幼稚で子供みたいな恋こそ、今まで自分がただひたすら待ち望んでいたものでわないかと思うのです。


世の大人から笑われても構わないのです!


僕も彼等のことを嘲り笑っているのですから、チットも気にしないのです。


どうですか?


この純粋な恋というものを、いつまでも忘れないようにし、第二の恋(愛)にスタートしてみませんか?




 まだまだこのような交流の仕方を続けていて、思い出を沢山作りたいのですが、もうきりのないことでしょう?

これまでの事で充分だと思いませんか?


後は、二人が合致して、二人の手による人生の絵画を描いていく番です。


どんなに辛かろうと、どんなに苦しかろうと、僕達の強盛な愛情をもってしたら、必ずどのような困難をも乗り越えていけるものと思います。


二人さえしっかり手を繋いでいたらね!



どうですか?


もう手紙を出してもいいでしょうか?



 とにかくこのがんじがらめの糸をたぐっていくには――


最初に手紙による開願の道を切り開くしかないのです。


君もこの行為を気が小さいとか、卑怯だとか思わないで下さい。


この一行動こそ、我が人生最大の勇気と、情熱を必要とするものはないのです。


この苦しい胸の内を察して下さい!



明日は土曜日ですね。


明後日は日曜日ですね。


この期間に決して他の男性に身を許すんじゃありもせんよ。


今の僕は、その事を考えるといても立ってもいられなくなるのです。



これまでもその苦しみを、再三味あわされてきました。



もうダメだ!


もう彼氏に奪われているだろうと――


その苦しさ、切なさというものは、想像を絶する――

まさに地獄の底に叩き落とされたみたいなものです。


天界に夢を馳せながら、自分の足は、針の山を支え、よじ登ろうとしました。


死骸の山でドロドロになっている底なしの池を、這い上がろうとしました。



 また、他の人達が苦しんでいるのを、脇目もふらずにかきわけようとしました。



それはひとえに天界に登りたい一心で……



天界に住んでいる君の顔を一目でも見たいが為に、それらのあらゆる地獄苦を掻き分けて来たのです。



その為、今の自分の身体は、針の山をよじ登ってきたお陰で、足の裏は傷だらけになり――


とてもまともには歩けそうもありません。



今にも倒れんとする我が身を、辛うじて支え――


君の立っている菩提樹の幹下へと向かいつつあります。



また、そのような死骸の池から這い上がってきたお陰で、自分の身体からは、死人の悲しい叫び声を発散しています。



また他の人の苦しみもかまわないで、掻き分けて来たお陰で、自分の心は、ご慈悲のひとかけらさえ残っていない、冷たい人間になり下がっています。



今の……


この僕のみすぼらしい姿を、どうか嘲り笑わないで下さい。


どんなに苦しんで、ここまでたどり着いたことかを察して下さい。



 君には出来ますね!


あたり前でしょう!




君は天界に常住している、光のみ子ですからね。



君の身光みひかりによって、僕の汚れきった暗黒の心を照り輝かせて下さい。



君にならきっと出来ます。


イヤ、君でしかこの大業は務まらないのです。


君でしか……





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