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一滴の波紋【原文】1巻の2  作者: 藤田 ユキト
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ある日の日記・68回


六十八回


(1月7日つづき)


 まだ少し時間がありますので、今日はチョッと恥をしのんで彼女(モタイ殿)のことについてお話ししましょうか。


「藤田のウワサを聞いてモタイはたまりかねて言ったよ!」


「ウチ達と藤田さんとは文通友達という仲なのよ! 本当は好きで好きでしょうがないの! でもあの人はチッとも言ってくれないし、それでどうしていいか悩んでるの!」


「奴等は暇さえあれば藤田の日記を読みに行ってるんだってよ! ひどい奴等だなぁ~。人の部屋に無断で入ったりしてさぁ~」


「だってあの人は入っていいって言ったんだもん」


「しかしそれは日記の中でだろう。実際口に出して言ってないじゃないか」


「でも……」


(良いんですよ! 今までどうりに見たい時に勝手に見て下さいよ!)


「どんなに貧乏してもいいわ! あの人と一緒になりたい」


――などと言ってくれる貴徳きとくなお人が現れてくれないもんでしょうかねぇ~!

 本当に待ちどおしくて、待ちどおしくて仕方がないんですよ!

早くしちくれ!

命(愛の情熱)が枯れぬ内にねっ!

お願いしますよ、後生ごしょうですから!


 本当はまだまだ落ち着けるような柄じゃないんですよ!

今日も車の調子がおかしくて、修理工場に見てもらいに行きましたならば――

「エンジンを分解してみなければ分からないし、部品を取り替えたり何やらで、多くて五、六万円はかかりますよ!」と言われて――

ウッリャ~! こりゃ~、困ったことになった!

こんなにお金に困っている時に――、やっと皆の返済が済んで楽になったと思っていたのに、またまたこのような予定もしないお金が要るようになって……


 聖人ほど金と女に不自由するってゆうことは本当なんですねっ!

僕もとことん弱り果てましたよ!

これにお金を費やしたら、また当分は川口の方へ飲みにも行けないだろうし、お嫁さんをもらうことさえ出来ません……

本当に新年早々から、このようなことがあっちゃ~、先々思いやられますよ。


 一層この美ぼうを利用して金持ちの女のヒモにでもなろうかナァ~と、汚ない空想もしたくなりますが。

しかしそれはできませんねっ!

とにかく今年も相変わらず苦しい年の瀬を迎えそうです。

誰か手を貸してくれるお人は居られませんかねぇ~。


 せっかく免許を取って、これから意欲的にドライブに狩り立とうと思っていたのに。

それも叶わぬ夢となりました。

当分は辛抱して乗らないことにします。


 君達とドライブ出来なくなるのも寂しくはありますが、仕方ありませんねっ!




 アァ~、――

それとこのような訳で、もしかしたら川口の方へ飲みに行けなくなるのかも分からないことを――

もし、向こうの人と連絡が通じていましたら伝えておいてくれませんか。


しかし出来るだけ行こうと思ってはいますがねっ!


「バカだなぁー、まだあんなこと言っているよ! むこうのママさんは、そんなに奴のこと、気にもとめていないってゆうのに、いい加減で縁を切ったらどうだい! 本当に救いようのないバカな奴だなぁ~」


……本当はそうかもしれませんし、しかし――


「せっかく行っているのだから、そう思いたいんだろう」


――ということです。


ハイ!


 ではお休みなさい!


午前0時30分消灯



 もういつも同じことの繰り返しばかり言って、面白くないと思います。

ただ一部分を修正しているだけですからねっ。


 しかし今の所、別に書くこともありませんし、辛抱して下さい。

その内また他の知識を吸収して面白いことを書けるようになりますからねっ!



 1月9日


 今日は話すことなし!

ただ、今、自分がこうして寮の中で皆とかかわらずに、部屋に閉じ込もっているのは自分の時間が欲しいからだけなんだ。

皆のことを思うったって、はたして毎日毎日テレビを見ながら寝そべっていることで、皆のことを思っているということが言えるだろうか?

そして自分のようにそうしないことで、皆のことを思いやる気持ちがないと言えるだろうか?


 もう俺達は子供じゃないんだし、この会社も家から通学している学校のようなものじゃないんだ!

会社で縛られているだけで沢山だ!

自分の時間を奪われることは……


 寮以外に住むべき場所を持っている奴等は会社を出てしまったら、もう会社という動物園のオリから解放されて、自由気ままなことをしている。

もう沢山なのだ!

このように窮屈なオリに入れられているのは。

そしてそのオリから出たら、後ろも振り向かないで自分の世界に飛び込みたい!


 もうこの歳になってみれば(この時24歳)、自分のやりたいことってゆうものがハッキリしてくる。


 それをやらなければ気が済まないのだ!

だから自分は会社を離れたら、一人でやりたいことをやっている。それがたまたま寮の中でやっているもんだから、共同生活を無視しているということで批難の的にされる。


 しかし勝手ながら、今の自分は共同生活とゆうものには興味のないことだし、もしお金さえあれば、この寮をスグにでもオン出て、今と同じくやりたいことをやっていたいのだ!


 彼等にはそういったやりたいことを――、

やるべきことというものがないのだろうか?

そのようなものがないでいて、ただ目的もなく毎日毎日寝そべってテレビを見ている。

そして皆とチョボチョボ話したりして、それで共同生活を規則正しくやっているなどと大きな態度をして言えるのだろうか?


 ただ何の目的もなく、いい加減に生きていることを、皆と共同に思いやりながら生活をしているなどと誤魔化してしまう。

そのような無意味な常識に、今の俺はついていく気もしないし興味もないのだ!


 俺は若いんだし、もっともっと価値あることをしていかなければならないんだ!

その為に一人自分の部屋に閉じ込もってやることもやむを得ないことなんだ!


 君達は、人との心の交流をするのに、ただ顔をつき合わせ、話をすることだけだと思っているのだろうか?


 たしかに一緒に生活し、話しをしていれば、お互いの性格が分かり、困っている時も、悩んでいる時も助け合っていくことが出来る。

それはそれで良いことなんだ!


 しかしだからといって、人との交流も断ち、話もしないでいて、相手の性格や、今思っていること、悩んでいる事等が分からないということはないんだよ!


 たしかに君達のように、まだ一緒に生活し、話しなどをしてみなければ相手の素性も考えも分からないのかもしれない。


 しかし経験を積んでいる者にとっては、たとえそのようなことを通じなくても、そのことが心を通じているがごとく手にとるように分かるのだ!


 君達の方では、何にも話をしない自分のことなど何一つ分からないことだろうが、自分には何にも話さなくとも君達の動向を察知することが出来るのだ。


 それを大袈裟に言えば、神通力が多少なりとも身についているということだろうか……


 だから――、アァ~、君達は知っているだろうか?


何も――、ねぇ~。


 相手のことを知っていなければ、相手に対して良いことができないということはないんだよ!

昔の聖人といわれる人達は、その人間としてあるべき心を悟る為に、何も人と話すことだけに頼ってはいないんだよ!


 大自然を散歩し、その中からみずみずしい、そして真実の心を悟り、汲み取ることが出来ている。

それに、たとえ一人でいるからといって、何も人の心と語り合っていないということはないんだよ!


 僕のまわりには、いつも尊い聖霊達がとびかっている。

その者達と、僕は常に語り合っているんだよ!

君達と話すよりもよっぽど素晴らしい(高貴な)教えを彼等から教わっている……


 今の僕にはあえて人と語り合うことなんか必要としないのだ!


 これは一時的なものかもしれない。

しかしどの聖人も、一度や二度は山ごもりをしたり、陰とんの生活をして、自己を省み、悟りを開いている。


 そのような話を聞いてみても、決して今の自分の姿を殻に閉じ込もっているとか、カタワだとかは言えないのだよ!


 のぼせ上がって言うなれば、人間が出来すぎて、必要とされる予定通りの行動なんですよ!





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