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一滴の波紋【原文】1巻の2  作者: 藤田 ユキト
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ある日の日記・67回


六十七回


 と言うことで――


もし僕が愛人を持ったとしたら、たとえ日頃、控え目に自分は女の一人も幸せに出来ない、不甲斐ない男なんだと言っていても――

実際持ったら、決していい加減に済ませない真心を持っているのです。



「藤田さんって人は決して女を不幸にするような人じゃないわ! 持ったら幸せにしてやらなければ気が済まない性分なのよ。だから藤田さんのような人のお嫁さんになる人はきっと幸せだと思うわ! とにかく、どんなに貧乏しても良い、一生ついていくわ!」

と――

自分を全信頼してくれる娘を待ち望んでいるのです。


そりゃ~ないか!


今の自分の姿を見たら、チッとも頼り甲斐のある男だとは思えないでしょうし……

それが正解なのです。

 とにかく、今のところ全て生き方においても、言動においても、逆なことばかりやっているのです。

モテようと思えばモテられるのに、モテないようにして、その苦しみ、辛さを味わい

好かれようと思えば好かれられるのに好かれないようなことをして、その苦しみ、難しさを味わい……


 ということで、今のところ、苦労を買って、受けているということだろうか。


 やはり人の上に立ち、人を理解する為には、まず一番低くて弱い立場の人の気持ちを理解しなければなりませんし

また、自分一人の我、信念、思想というものを強調してばかりいたり、固執してばかりいても、自分一人だけしか生きれず。

皆を生かし、まとめる為にも、その一人一人の人格、性質というものを把握して、我が内におさめられるほどの、幅広いスケールの大きい自我、人格を持つことに努力を払わなければならないと思います。


 今の自分が、たとえこのような真理を説いても、現段階の自分のスケールの大きさは、まだ最大限に伸び広がっていないことだし、

従って、「奴の言ってることは間違ってはいないが、奴の言と、実際の奴の言動とは不似合いとゆうことで腹を立てているんだ!」

ということを言われています。


 確かに、今現在の自分だけを見てみますれば、そのような言葉が出るのはごもっともだと思います。

しかし、やはり今現在の自分がこの先づっと続いていく訳ではないのです。

まだまだ伸び、広がりつつあるのです!


 だからその日の為に、今はこうして人前ではカッコウの良いことは言いません。

本当にこの日記に書いているようなことを、言動に移せるようになった時――

僕は初めて堂々と人様の前で口を開くだろうと思います。

僕はいい加減なことは嫌いだし、自分に出来ないようなことは、決して見栄やハッタリで言いません。

だから出来ないうちは、決して口にはしないのです。


 ただ今こうして日記で、君達にぬけぬけと言っているのは、その日が来るまでの準備トレーニングをしているだけなんです。

こうして人の生き方、人生、男女の愛、云々のことに関しては一応イッパシの批評が出来る力を持ってはいますが

今のところはこれだけなんです。

何せ、自分が小さい時から苦しみ悩んできた、二大問題というものが、この二つのことであって、それを解決する為に必死になってきました。

ただこの二つの為だけに……


 だからたとえこのような面で、人に負けないような理論が打ち出せるからといって、それをそのままスケールが大きいとか、人格が出来ているとかゆうふうに受け止められては困るのです。


 確かにこの二つの問題は、最終的に人間として一番難しい困難な問題ですし、それを解明できたら大したものだと思います。


 しかし真にスケールの大きい人間、人格が完成された人間と言われる為には、それを大枠(おおわく)として、その内に含められるべき日常茶飯事の戯言(たわごと)、冗談、知識というものを兼ね備えていなければなりません。


 今の僕は、新聞も読みませんし、テレビも、雑誌も、本も手にしません。

それで、日常茶飯事のたわごと、冗談、知識とゆうものを手玉にとって、皆と和気あいあいに、溶け込むことが出来ません。

それさえ身に付けることが出来たならば、文句なく僕はスケールの大きい人間、人格者として人の上に立ち、人をまとめあげることが出来る資格が持てると思います。

いわば今の自分の姿は、人形を作っても、魂を入れずという所なんです。

骨組みは出来たが、肉付けが出来ていないというところなんです。

 だから今のところ、そういった簡単で、さほど難しくもなく手に入れられる知識、たわごと等の利器を使用できなくて――

従ってそれだけで「何を偉そうなこと言ってやがんだ! 話したって何も知らないくせに」というふうにバカにされるのです。


 本当はその力を手に入れるよりも、もっと困難な大業を成就している立派な人格者だというのにねぇ~!

しかし今の所、何も見栄や、はったりは言いません。

とにかくその点が欠けていては完全なものではありませんし――

それが欠けていては完全に生かすことが出来ませんので

もしその欠けているものでも補充することが出来た日には、堂々と胸を張って、立派な人格者、スケールの大きい人間ということを鼻にかけてみようかとも思います。


 しかしたとえそのような力をつけたとしても、実際、自分のようにお人好しで控え目な人間には、そんな気どることなんか出来ないだろうと思います。

本当はそのこともやはりスケールの大きい人間のあるべき態度とゆうものに含まれるものであって――

そう出来るようでなけれは完全なものとは言えないのです。

いわば、実れば実るほど垂れ下がる稲穂かなと言うことかな!

頭につめこめばつめこむほど頭が大きく重たくなって、自然に下がるということです。


 逆を言えば、頭の中がカラッポな頭ほど、カランコロン、カランコロンと――

バカみたいに音がはずみ、そして風船のごとくフワフワと宙に浮いていて、頭が高いということです。

ハイ!


 君達もこれにちなんで、真似事でも良いですから見習ったらどうですか?

今の自分の目には、そのように見栄やハッタリをきかせて、ふんぞり返り、頭の高い奴を見るにつけ、内心では「ホントウに手のほどこしようのないくらい、頭がカラッポで、小っぽけな人間(魂)だなぁ~」と、あわれんでいるのです。


 僕ですか?

僕はといえば、一見「奴は控え目であんな態度をしているんじゃないんだよ! ただ気が小さくて、高く上げられないでいるだけなんだよ!」

と言われるぼと控え目の、またその下の謙遜という高貴な態度を装っています。

このことの真実を見抜けない者にしてみれば、「実に卑しい奴だ!顔を見ただけで吐き気がするよ!」


という、自分の浅はかさを返って暴露するような醜態をさらけ出すはめになるのです。


 結局は、その者がそう感じるということは、まだまだ人間的にスケールが小さいということだろうか!?

まだまだ修業が足りんのですゾッ!

と――、

今日のところは強がりを言っておくことにしましょうか。


 本当はどうなのだか? 自分でも自信が持てないありさまなんですよ! 本当は――

しかし言っていることは間違ってなんかいないでしょう?

実に立派な理論です。これを盾にとって戦えば、誰にも負けないほどの自信というものがありますが

あいにく、今の自分はこのような素晴らしい利器を口を通して表すことが出来ないでいるのです。

いわば宝の持ち腐れということですかねっ!

 しかしせっかく持ったことですし、実際現実に現せるようになるまでは努力しようと思っています。




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