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一滴の波紋【原文】1巻の2  作者: 藤田 ユキト
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ある日の日記・62回


六十二回


一月五日


 何をやっても……

どんなに力をつけても……

真から満足できるものがないのだ!

どんなことをして生きても安心感が湧いてこないのだ!


 いつ死んでもいいという覚悟が出来ていたら、今あること、これからのこと、そして過去の後悔などを、あえて取りざたして思い煩うこともないと思う。

 今の自分は不安なのだ!

いつも過去を振り返り、未来のことを想像し、そして今、何をすべきか?ということで思い煩ってばかりいる。


 そのくせチッともハッキリとした目標も立てられずズルズルと無意味な時を過ごしている。

それだから益々神経質的になり、何にも手がつかないで、何もしない日の悪循環になっている。


 何が……。どうしたら、そのような不安な気持ちを払いのけて、現実の事に我を忘れて没頭することが出来るのか?


 とにかく常に今あることを自覚していなければ不安でどうしようもないのだ!

いつも、取り越し苦労ばかりしている。

自分一人の力で生きている……。

この考えがそもそもの間違いなんだ。

何ちゃって――詳しく書けば宗教の本でも一冊写し書きすれば簡単明瞭、一目瞭然であることなのだ。


 とにかく自分一人の力だけで生きていない。

生かされている――

この自覚(悟り)さえ出来れば、まったく生きていること、過去のこと、現在のこと、未来の事など。

まったく思い煩うことはないのだ。

何せ、生かされているんだからねっ!


 だから車の事故にあうも、病気になるのも、失恋するのも、仕事のことで失敗するのも、

また恐ろしいベッピンさんに巡り会えることも、健康であることも、仕事の面で良い成績を残せることも――

全て自分を生かしているモノの力によって起滅するのだからねっ!

――また死ぬことも――


 だからまったく死がいつ来るかということを思い恐れる必要もなく、失恋するんじゃないかという不安も……


 あぁ~、面倒臭せ~!


 とにかく、その自覚を得る為に信仰の修業でも試みてみようかとも思います。


 誰ですか?


「上手くもないのに、うまいと思ってまた書いてるよ!」


 などと言っている人は!

その様なことはいいでわないか!

何も自分は――

良いかっこうしたいと思っても、それだけの力量も、才覚も持ち合わせていないのだし。


 今はただ自分のウップンを、

下手だと自負している文章に、吐き捨てているだけなのだ!

もし自分に君達を魅了するだけの、上手い文章を書ける力を持っていたなら、とうの昔に、誰か一人(の女)でもひっかけて、今頃はこんなに彼女からふられたことばかり悲しみ、苦しみ、悩み、思い煩っていることもないのだ!


 しかし――、どうして君達は、何の為に――

この日記を開いて見ておられるのでしょうか?

ただの面白半分?

このよじれきった(ねじれきった)心――

かたわ者――


 滑稽な生き方がそんなに面白いというのでしょうか?

とにかくナァ~ンにも、もう期待していないのです。

君達から救ってもらおうなどと思っていたら、人生いくらあってもおっつかないのだ!


 だから、もうそろそろこの日記を通して君達と語り合うのも少なくなると思います。

何せ、自分はこれから信仰の見習いに出かけることになるのですからね!


 本当は本腰を入れるようになる為に、頭を丸坊主にでもしたいのだけど

その世界と、ウチの会社の世界とはあまりにも違い過ぎますからねっ――

いくら坊主頭の世界でモテたからといって、女にありつける訳ではありませんし――

イヤ、これは間違いですか?

坊主ほど肉欲にこりかたまり、イヤらしい人間はおりませんねっ!

 ただ見習いの内は、とにかく肉欲を節制しなければなりませんし。


 そういうことで僕は坊主になることをやめるのです。



 こんなにサッパりした頭(本当は不潔なほどボサボサしているのですが)をしていても、チッとももてませんし

思い切って、坊主頭にでもしたら、君達をそのテカテカと光輝く頭の光で、目をくらませ、一女ひとりぐらい盲目にし――

自分を好きになってくれる娘が現れそうな気もするのですが。


 それも――


 マァ……


 どうして僕に普通の女性が理解も出来ないような、高貴きわまる聖霊を授けられたのでしょう。


 僕にはその様に現実で良い目を見られないような自我など欲しくはなかったのだ!

もう少し程度の低い魂を受け、君達くらいの平凡な娘を相手に出来るほどの、男として生まれ生き、死にたかったのだ!


 どうして……


 アァ~、そのようなことを悔やんでいても仕方ありませんか。

これも仏のお導きとなるものでしょうか?


 いつか――

とにかく僕にも自分に似合った女性ひとを授けてくださるだろう。


 そのうちねっ!


 僕が生死の境をくぐり抜けてきたことは本当かって?

その様なこと、もうどうでもいいでわないか!


 実際こうして今、君達の眼前にみすぼらしい姿をさらけ出したのだし。

とにかく生きている以上、これから生きていくことしか考えてはならないのだ!


 さて!


 どうしましょうか?

 仏門の道にでも思い切って入ってみましょうか?

そうなると、もうしょっちゅう、今までのように君達と愛を語り合う時間もなくなると思いますねっ!


 その寂しさ、辛さを思うと……


 それだけでも、この孤独の部屋から飛び出して、君達と離ればなれの生活をすることを躊躇してしまうのです。


 本当に恐ろしいですねっ!

君達の執念というものは。


 本当は愛の執念という言葉を使いたかったのですが、もし本当に君達に愛情があって、こうゆうことをしてくれているのだったら、今ごろ――


 アァ~、またさっきのグチに戻ってしまいましたねっ。


 とにかく、しばらくの間だけでも試みてみようと思います。

それで自分が少しでも良いように変われたなら、そのまま続けていくことになるだろうし。

もしそうなれた時には、君達の愛情を受けなくても寂しがらないような、たくましい自分になれていて、

結局、これでお別れということになるのでしょうか?



 先輩、奥さん……

そして、そのような彼にノコノコとついていく彼女という人物のことは分かりましたか?(多分、分かっただろうと思います)

チヨッと彼女にとっては迷惑なことをしてしまいましたねっ!


「藤田さんは、あんたのことを心配して言っているのよ。あの人は本当にそうゆう人なのよ。付き合わない方が良いわ!」


「でも、高田さんのことは大きなお世話だわ! ウチはあの人が好きだからついていったのよ。たとえあの人がそうゆう人だと分かっていても、ウチは好きなのよ!」


「もうあの人とはかかわり合わない方が良いわよ! 何でも書いて、人にバラすんだから」


「本当に奴もバカな奴だなぁ……。これじゃ、返って自分の手で墓穴を掘ったみたいで、もうこの会社の娘とは付き合えなくなったよ!」



 しかし……


 それでも良いのだ!少し強がりを言うなれば、オイドンも(俺も)、もうワサン()達のダチのことなんかチッとも相手にしとらんのじゃけん。

嫌われても平気の平ざちゅうもんたい!


「あんなことしていたら、益々嫌われてしまうよ!」


――ちゅうこつは(ということは)どうゆうこつかいの~(どうゆうことですか?)

 そんなに俺はイヤらしいことを書いているのでしようか?

もう今の自分はあえて決まったことを書く材料もなくなり、あるものなら何でも使って書きまくっている。

だから時には良き我が友の君達にも反感を買われそうなことを書くかもしれない。


 しかし今はこれで良いのだと思います。

何せ……

ねぇ……


 もう僕には普通の事ではチッともオモシロがれない、気違い寸前まできているのですからねっ!





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