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一滴の波紋【原文】1巻の2  作者: 藤田 ユキト
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ある日の日記・59回


五十九回



x一年一月一日



 このような夢は望まれないことだろうか?

やはり自分はただのお客で、遠路はるばる通いつめてくれる、一種特別なお客というだけの存在なのだろうか?――


 しかし、とにかく今年は生まれ変わらなければならないことだし

ネェ~!――


 この会社で身を立てていくことが出来るだろうか?という高い望みに気を煩わされているところじゃないんだ!

この沈みきり、亡霊同然に死物化している我が魂を、生き生きと生き返らせることが先決問題なのだ!

その為にと――

来年はある一つの活動を試みてみようと思う!


 大晦日の夜は、会社の上役の所で過ごしました。

別に女の所ではありませんよ。

そんな貴重な者がおりましたら

そんな――、といったら悪いですが。

休み中、ベッタリくっつきですよ!


 来年の正月にはそのような夢も実現出来るようになっていたいものだと思いますが

今の所は仕方ありません。我慢します。



 何が……、どうして……


 こんなにママさんの生き方に引かれるのか?

ひとせん(〇〇〇〇)は何も分からず

ただ自分が意味なくゾッコン惚れ込んだママさんの店だからということで

金銭的にそれほど困っていない頃には「この店でだったら、いくらでも金落としても悔いないや~」


……と、惜しげもない金をつぎ込むことができていた。

丁度その頃が、僕の華やかな全盛期だったのだ。


 しかしこの頃は、身を落ち着かせることを考え

その為の計画を練ってみると、どうしてもママさん所に落としている飲み代の金額が、以外に大きな負担になっていたことに気がついてきたのだ!

これじゃ~ダメだ!

このまま続けていたんじゃ~

いつになっても落ち着くことなんか出来やしない。

結婚資金はおろか、「一円の貯金すら出来ないぞ!」と思って――

この頃は、不必要にママさん所で落とすお金のことを気にしていた。


 マァ~、八月頃からまた別に音楽テープの購入や、月賦返済の為にも、余分にお金がかかって苦しかったこともあるが。


 とにかく、正直言ったなら、本当に川口の店に落としているお金が「もったいなくて、もったいなくて」仕方がないという考えばかり先走っていたのだ。


 それが為に、どうして自分がわざわざ通いつめていたのか?

ママさんに引かれていたのか? などということを見失っていて、

ただ面白くないのだ。

こんなことをしていていいのか?

何の為にこんなにまで苦しみながら通いつめるのか?

などということばかり考えていた。


 そうやってふさぎ込んでいるうちに、いつの間にか前述したようにママさんからは嫌われるようになるし

他の女性達ともあんまり仲むつまじく出来なくなり、

たんだん窮屈になってきていたのだ!


 アァ~、もう不必要なことは言わないことにしよう。

ママさんから嫌われていた原因も分かり、年末最後に通いつめた自分の誠意によって、その点はいくらか解消したのでは? と思います。


 このように貴重な体験をさせてもらったからには、今後二度と二の舞を踏むことはしないつもりだし

いくら自分がお金に困っている時にも、お金のことなんかこんりんざい口にしないつもりです!


ハイ!



――話しは変わりますが。


 どうしてあの店や、ママさんの生き方に引かれていたのか? という点に移りたいと思います。


 それはまったく去年最後の日に

もう店も閉じようという間近にあった時に、どういう気持ちであれほど彼(誠)が力を込めて言ったのか知らないが。


 多分、俺達にだけはママさんの気持ちを知ってもらいたいという気持ちからだったのだろうと思います。



――とにかく格別安いのだ

メニューの金額らんを見ても、これほど原価ギリギリに切りつめてやっている店はないのだ!(これはチョッと考え過ぎなのだろうか?)


 ただ普通のお客としてだったら、同じ飲むんだったら、少しでも安い所が良いに決まっている、ということで来やすい店だろうと思う。


 しかしただそれだけの計算しか出来ないで来ているんだったら、いつまでたってもただのお客としてしか見られないだろうし

人間的にもスケールが小さいということで失格になるしかないのだ。


 マァ~、俺も随分悩んでいるんだ!

いくらママさんの心が分かったとしても、やはり悲しいことだが。

いつか落ち着くことを考えると、これまでのようにむやみやたらと、ポンポン使うことも許されないのだ。


 しかし……しかし……


 その点も考えようによっては、チャンとした貯金をしながらでも、実現させられるようになれるんじゃないかと思うのだ。



 とにかく貯金もしていかなければならない。

ママさんに対する義理の為にも、ある一定の金額を贈与しなければならない。

計画を立てて他のものを切りつめていったら良いことなんだ。

いつまでこの交際が続けられるのか分からない。


 しかしとにかく、これからの自分は、ママさんの生き方について行こうと思ってます。

チョッピり鼻がシャクれて、口達者で、生意気そうな面もあるけど。


 しかしきちんとしなければ気がすまない

欲に目がくらむことを嫌い、自分の欲よりも他の者の幸せを重んじる、ママさんの態度を吸収しよう。


――と思います。


 本当は自分も昔、このような立派な態度をとれていた頃があったんだ!


 しかしそれをここ最近、見失っていただけなんだ。

もう見失いわしない。

この生き方に徹していこうと思います。


 そのような信念を持って生きている人も、そのような信念でやっている店も、この広い世間を捜し歩いたら、いくらでもあることかも知れない。


 しかしたとえそうだとしても、今のママさんとは縁あってめぐり会ったことだし、続けられる所まで続けていきたいと思います。


 そのような気持ちを抱いて自分が通いつめている事を、たとえママさんが気づかなくとも、俺はついて行きたい。


 その内、僕の誠意をママさんが分かってくれる日が訪れるかも知れないしねっ!


 これが義理と人情の絆ではないかと思います!


 マァ~、当分はこのような気持ちで通っていようと思ってます。



――あとはこの孤独地獄から抜け出す努力をするだけです。


 ある程度、考え練ることも価値があって必要なことかもしれませんが

今の状態では、とても価値があり、必要だとも思えませんし

従って、孤独に浸り考え込むことから脱しなければならないのです。


 こんなことをしていても、死んでるのとまったく変わりないんです。

だから今ですら死物化している自我を抹殺して、新たによみがえろうと思います。

生き生きと生きかえるように……。


 でも、自分はあくまで気まぐれで面倒臭がり屋だから、この点も思うようにやっていけるかどうか心配です。


 しかしもう今さら後へは引けないのです。

もう僕は生死の境をまの当たりに見てきましたし

今後、後退することは死を意味することなんです。


 だからいやがおうにも引けないし、それ以上に、生きる力が湧いてきたなら前進するしかないのです。

 だから今後、今年一年の自分の変貌ぶりを観察してみたら、きっと面白いものだろうと思います。

本当は全然変わらないのかも知れませんがねっ!




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