ある日の日記・56回
五十六回
十二月二十八日
この元気のなさ‥‥
グッタリしている原因は、このタバコを吸い過ぎる為なのです。それが分かっていながらやめられないのは、タバコを吸っている人が一番よく知っていることだと思います。
僕が全ての面で面倒臭がり屋になったのは、このタバコを手にしてからなんです!
それまではさほど何をするにも面倒臭いってこともなく、充実して計画通りに規則正しい生活をしていられたのです!
とにかくこのタバコはいけませんねっ!
頭がボケ、身体がかったるくなり
従って何にもやる気がしないでズルズルと無意味な時間を費やしているのです。
どうしても止めきらなければ、せめて本数を減らすとか、これほどまでに害を与えないような工夫をしなければならないことを痛感しています!
いつそれが実現するか分かりません。
もしそれが実現した時には、きっと自分はこれまで蓄えた自力を基礎にして、多大な業を実現させることが出来るようになれると思います。
とにかく何とかしなければいけませんねっ!
君達と仲良くなれる日を来させる為にもねっ!
川口の店においても、この会社内においても
自分がチョッと良い目を見ようとすると、すぐ周囲の人達が白い目で見るようになる原因は分かっているんです。
本当にママさんが言うように
「他の人と仲良くしていさえすれば、別に彼がウチ達に好かれていようと、自分一人特別に良い目を見ていようと、他の人達の反感をかわないで済むんですよ!
それを彼は要領が悪くて、まったく他の人達と仲良くしようとしないの!
イエ、そうしたいとは思っているんでしょうが、自分を売りたくない‥‥とか、控え目過ぎるとかいう性分から出来ないでいるんです!
彼もそれほどバカじゃないでしょうし、そのことが分かるはずだと思いますわ!」
‥‥確かにその通りなんです。
理屈だけを取り上げてみましたなら‥‥
原因が分かっていますから、後は、自分がどんだけ周囲の人達と仲良く出来る要領を身につけられるか?どうかが課題になってきます。
僕もいつまでも周囲の人達に遠慮して縮こまってもいたくありませんし
とにかく僕が自分をあらわにしたなら、彼女等の好意を独占することは分かりきっているのです(これはチョッとのぼせ過ぎかもしれないということです(ハイ!)
それが出来た時に、もし周囲の人達と仲が悪く、孤立している身でしたら
やはり今と同じく、とたんに反感をかわれて縮こまざるを得ないは目になってしまいます!
そうしなくて良いようにと‥‥、マァ‥‥
自分としてはそのようなことを目的として、周囲の人達と仲良くするなんてこと、死んでもやりたくないんですが‥‥
しかし‥‥しかし‥‥
僕が沈みきっていたら、またそれをネタにして
「あんなに縮こまってオシみたいに喋らない奴に、何が出来るか!」
‥‥という
いかにも自分本意で、僕の誠意なんかまったく理解しようともしない奴等に腹も立ちますし、負けてもいられないと思っています。
そのような奴に限って、もし僕が彼等をしのぐほどに、人柄的にも口達者な面でも、要領の良い面でも勝る活動をした時には
またとたんに口を尖らせて不平を言ったり、愚痴を言ったり、反発したりするのです。
マァ~、どうなるかは分かりませんが
この事は肝に命じて、今後、少しでも良くなるように気を配っていきたいと思います。
本当は、ただ自分の殻に閉じ籠っているだけなのかも知れませんがねっ!
今日はこれくらいです。
お休みなさい!
十二月二十九日
田舎へ帰ってこの休日を過ごすのも良いのだけど
いつも同じようにブラブラと意味のない時間を費やしているにすぎない。
だから今回はたとえ同じく無意味な時間を費やすことになろうと元々だし
何か‥
自分の内面で変化することを期待して、今の‥‥最も苦しい孤独の部屋に閉じ込もって自分と戦ってみようと思う。
どうなるか分からない‥‥
何が生まれるか分からない。
しかしとにかく挑戦してみよう!
それで自分に負けたら潔く田舎へ帰ることを決断しなければならないだろうし
勝てばこのままズッと居ることを決断するかも知れない。
とにかく‥‥ねぇ
君達も陰ながら応援してくれたまえよ!
マァ~、せっかくの休日だし、何も僕に付きっきりでいなくても良い!
僕も君達の幸運な年明けを願って、ひとまずお別れすることにしましょう。
また来年、楽しく付き合えるようになれば光栄だと思います。
では、さようなら
よいお年を!
今、川口の人達からどう思われているかしれない。
嫌われているかもしれない。
または、それほどではないかもしれない。
僕も、好きなのか?どうなのか分からなくなっている!
このままズッと付き合っていけるほどの愛着心が残っているのか?分からない。
しかしとにかく今日は行ってみよう!
今、自分がママさんから嫌われている原因は分かっているんだ!
自分としては、お金に困っていることは確かなことだけど
それをこの頃、不必要にあの店へ行って口にする。
「お金のことばかり言うから嫌いなのよ!」
‥‥ということです。
ハイ!
ウフフ‥‥誰が‥‥
この僕の苦しみを想像できようか?
「何だ!ただ同情されてるだけじゃない!」
と‥‥
あれほど親しまれているように
好かれているように
誇張していながら。
実際はこのように情けない始末なんです!
あの店の誰一人として、今現在の僕の苦しみを察知できる者が居ろうか?
行く時には、やはり昔のはなばなしい面影を胸に抱いて、飛び出してみる。
そしてそのはなばなしい面影を味わっていた頃と、まったく同じドアを勢いよく押し開けてみる。
その中はやはり昔とチッとも変わらない
ママさん所のルームガーデンなのだ。
また同じママさんが‥‥
あいも変わらず、常連のお客とはしゃぎ回っている。
実になごやかな‥‥
そして実に幸せそうな笑い顔が部屋中を明るく照している。
その相も変わらず昔と変わらない雰囲気の中を素通りして。
僕は一目散にご指定の席に座る。
そしてそれから僕の苦しみは始まるんだ。
どうして‥‥?
そんなに苦しいものなら行かなきゃ~良いじゃないか?
と君達は言うだろう。
そのような、皆がしゃべっている言葉を聞き取れず、話しにのることが出来ない。
そして笑うことさえ出来ず、うずくまっている。
「ガロさんは入ってくる時は勇ましいけど、座ったらダメねっ!」
‥‥この言葉ほど僕の全身を真っ二つに引き裂くものはないのだ。
「昔はあんなんじゃなかったのよ!
もっと陽気で朗らかだったの」
‥‥俺だってどんなにはしゃぎ回りたいことか
しかし‥‥、しかし聞こえないんだ。
まったく皆のしゃべっている声が‥‥
ジュークボックスのすぐ脇ということもある。
それほど騒がしくなく、皆の声が聞き取れるものだったら
いくら無口だとは言っても、も少ししゃべれるんだ!
とは言え今は、さほどしゃべる気にもならないのだが。
ただ最低限度、彼や彼女等が
自分の塞ぎきっているのを心配して、何とか楽しませようと話しかけてくれることに相槌が出来るくらいのことはしたい!
それさえ出来ず。
「何だ、ガロさんはもっと気さくな人かと思っていたけど、案外貫禄だおしだねっ!]
「本当ねっ! 今のガロさんだったら他のお客を相手していた方が良いわ!
あの塞ぎきった顔を見てると、こっちまで憂鬱になるわ!」
‥‥などと
せっかく周囲が明るいのに、自分の為に暗くしていることを思うと
それも悪くていたたまれなくなる。
もう行くのをよそうと思うのだが、どうしても別れるのが出来ない‥‥
本当に辛い‥




