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一滴の波紋【原文】1巻の2  作者: 藤田 ユキト
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ある日の日記・52回


五十二回



 先週の金・土よう日までは、まったく彼の威圧によって

 もう自分がこの会社で生きていかれない立場に追いやられていたのです。


 やはりある人が言っているように

 同じやるのなら、人を追い越し、人の上に立てるほどの力と名誉を持ちたいと思わない者はいないと思います。

 自分においても、いくらそのようなことを無視した反イデオロギー的な言動をとってはいますが

 やはり恥ずかしながら、そのような夢をまったく持たないということではないのです。


 だからチョッピリしょげ返りもしました。


 あぁ~、またまた面倒臭くなりました。

 人が言うように、何もこのようなことを、わざわざ文章で言い合うことはないのです。

 彼等はいつも口で言っていますから、あえて家に帰ってからまで、自分のようにこのようなことで時間を費やすことはないのです。


 僕も今までは何の目的もなく暇と退屈を紛らす為に、半ば楽しみになっているように、書かずにはいられなかったのですが

 段々、アホ臭くなってきたのです。


 どうしてこうまでして書かなければならないのか?

 君達が楽しんでくれているという確証もありませんし

 もし、まったく相手にもされていないものでありましたなら

 本当にバカな人間を代表した大バカ者として自分もまた君達も(あざけ)り笑う絶好の材料となるだけのものなんです。


 そりゃ~、確かに口でいったならそれが済んだときには跡型もなく消えてしまって面白味がありません。

 こうして書いておけば、後になっていくらお金を費やしても買えない立派な宝物に変えることが出来ます。


 今のところ、このようなくだらないことを書いている甲斐があるとしましたなら、ただその一つの楽しみだけでしょうねっ!


 本当にもう皆はこのような自分を見て「バカじゃないのか」


と、嘲り笑っているのです。


 しかしもし本当に君達が来てくれていて、楽しんでくれているとしたら、

 書くのを止める訳にはいきませんし


 アァ~!


 結局また書いていくしかないのですねっ!

 いくら書かずにはおれないといっても、いつまでも続く訳ではありませんし

 いつかきっとこの面倒臭い仕事からまぬがれる日も訪れることと思いますので

 とにかくどのように人様からバカ呼ばわりされても、その日が訪れるまで書き続けていこうと思っています。


 しかし本当に君達がこの日記を読んで楽しんでくれているのか?

 チョッピリ疑問な気持ちを湧かせる出来事が今日1つあったのです!


 と言うのは、僕がアルバイト時分から顔をつき合わせていて、少しは自分のことを知ってくれていると思ってた(ひと)から、突拍子(とっぴょうし)もない後声を聞いたのです。


 エレベーターから出て行く時に


「今の子、可愛いわねっ」などと


 そんな言葉を喜んで受け止めたらいいのか?

 悲しんで受け止めたらいいのか?

 分からないんです。

 何しろその一声で、まったく・・・

 本当にこの日記が表沙汰になっているとしましたなら、彼女もこの事を知らないはずはありませんし


 従って、その一声で一瞬、僕の妄想が砕けかかったのです。


「藤田さんも『あの子』と言われるようになっちゃ~おしまいねっ」


 ‥まったくその通りですよ!

 何の権威があって彼女が僕に対して「あの子」なんていう言葉を吐くことが出来るのでしょうか?


 いくら同じ歳だといってもですよっ!

 まさかねぇ~


 考えてみましたら、人様のことに気を配れるお人が、今の時世におられる訳はありませんし

 こんな僕なんかに振り向いてくれるなんていう貴徳なお(ひと)もおられる訳はありませんしねぇ~。


 それはさておいて先を続けることにいたしましょう。

 時間も後わずかしか残っていませんしねっ!

 急いで書き綴っていかなければなりません。

 本当はもう書きたくないのです!

 このように下手な文章を書いていても、チッとも君達に満足できる名案も浮かんできませんし

 書けば書くほど自分の無能な脳チャンネルが暴露されるだけですしねぇ~


 今は考えあぐねている所なんです。ハイ!


 しかしもうどうでも良いやぁ~


 しょせん俺シャマには、君達を満足させるほどの立派な文章を書く頭脳を持ち合わせていませんし

 虚勢を張っても仕方ありませんしねぇ~



 マァ~ 、そういうことで、もう僕はふて腐れにふて腐れきっていたのです。



 何が大日本●●(いち)のやり手だ!


「あの人に睨まれたらもうこの会社で立つことは出来ないよ!藤田さんもバカなことをしたもんだなぁ~」


 という言葉を聞いて憤慨したのです。


 何が部下思いだ。結局は自分本意な征服欲を満たす為にやっていることじゃないか!


 僕はそのような征服欲に凝り固まった人間(これは誤解しているかもしれませんが?)を見ると、無性に反発したくなるのです。


 僕は押し付けられたくないし、また押し付けたくもない。

 そういう気持ち(信念)があって、僕は益々彼らに対抗する為に柄にもなく貫禄をふりかざし、ふんぞり返った態度をとりました。

 本当はまったくそのような態度を装いたいという気持ちのひとかけらさえ持ち合わせていない

 ごく普通の、ありふれた真面目人間、控え目な人間なんです。


 だから今日、ある娘が言ったように


「ウチは藤田さんの控え目な態度が好きだったのよ! 今のようにふんぞり返ってる藤田さんは好きじゃないわ」


 といった誤解はなさらないで下さい。

 ただとにかく彼に反発し対抗する為に、仮に装った態度ですから。


 それでその態度がいよいよ明日の日曜日に持ち越されることになりました。

 日曜日は臨時出勤で、会社に出かけました。


 休みの日は寮の朝食はありませんので、七階の食堂へカップヌードルを食べに行ったのです。

 そして食べていると

 そしたら

 まさにそしたら

 ごっつい彼と、彼の相棒チャン達がドカドカと食堂に入ってきたのです。


「ウッワ~ 、エレエコツになってしもうたなぁ~」


「ケンカでも吹っ掛けられるんじゃなかろうか?」


 と思って、気もそぞろに、がむしゃらにカップヌードルを食べるふりを装っていました。


 しかし僕の方としても、一端あのようなデカイ言葉を吐いたことだし

 このままコソコソと逃げ回ることはしたくなかったのです。


 いかにも


「へへ~ン。手前らのはったりに縮こまる俺シャマじゃないぞ!」

 と、肝っ玉の大きい人間のごとく、彼らの前をドウドウと素通りしたのです。

 ただ装っただけなんです。


 本当の肝っ玉の大きさなんて僕にはありっこありませんし

 一か八かのかけに出た訳です。

 それがこともあろうに彼のはったりに負けないような仕草になったのです。


「奴も全然ビクついてないなぁ~ 。俺達があんなにけなしたというのに、まったく平然としてやがる。まさに大器を持ち合わせた奴だよ! 恐ろしい奴だなぁ~ 、奴のはったりには負けるよ!」


 という有難い評価をいただいたのです。


 本当はその場限りの装いのはったりですから。もし事の真実が彼等に暴かれたなら、僕はたちどころに彼等から踏みにじられる事態に追いやられてしまうのです。


 だから僕はあくまで本当に肝っ玉が大きく、いかにも度胸のすわったような男になりすましておこうと思ったのです。

 彼らの返し打ちが怖かったからでしょうねっ!


 とにかくそのはったりが今日まで効果を発揮してくれて、平然とした態度を装っていることが出来ました。


 本当に愉快でした! あのような力を持ったお人が、こんなチンケな奴に小バカにされているさまを、めったに見れるものではありませんし

 彼にしても一生に一度の屈辱を味合わされたのではないでしょうか?


 僕はそれだけ見られたら満足なんです。

 やはりあのように立派なお人でも、人様の子なんだなぁ~と、嬉しくなったのです。


 だから僕もいさぎよく虚勢のベールを脱いで元のチンケな自分に戻ろうと思います。

 それが自分には一番お似合いなことでしょうし、気が楽なんです。


 これで大体の真実は飲み込まれましたでしょうか?

 後は別に書くこともないのです。勝負は終わったのです。


 どちらも相手に打ち勝ち、そしてどちらも相手に打ち負かされたのです(相討ち)。


 いわば、お互いに自分の良い面を生かして、自分の道を突き進んでいったら良いことだと思うんです。ハイ!



 昨日(月曜日)の事は、あまりにも複雑化していて、ありのままをソックリ書くのは面倒臭すぎます。

 ただ段々と自分に味方してくれる(自分のことを理解してくる)人が増えてきたことは信じていいことなんでしょうか?


 そして彼も(今にしてお詫びいたします!とてもあの人のことを彼だなんて気安く呼べる柄ではありませんしねっ)段々と自分の真心を理解してくれて

 今後、さほど自分の進む道を立ちふさがることはしないだろうということを信じていいのでしょうか?


 もしそうだとしましたなら、まだしばらくこの会社にとどまっていることも出来るようになりましょうし

 また自分の決意も改めるようになりそうです。


 本当にここまで来れたのも、君達の援助があったればこそなのです。有り難うございました!


 明日はどうしょうかなぁ~?


 ママさんも心配していることだろうし、やはり一度顔を出さなければならないだろうなぁ~。


 こんな時に車をおっとられるなんて(盗まれるなんて)本当にしゃくにさわるよ!

 いまいましい警察犬めっ!





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