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一滴の波紋【原文】1巻の2  作者: 藤田 ユキト
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ある日の日記・51回


五十一回



 今日までにおいては「いまいましい奴だ!」ということしか吐かれていないお人でしたが

 このことを聞かれたらきっと僕の真心というものを理解して頂けることと期待しています。


 いわば、今まで僕から見て彼に何やら弱点があるように思えたのはこのことだろうと思うんです。

 これさえ心に補給されたなら、もう少し押しもおされもせぬ名実共に立派なお人であられることでしょう・・、ねっ!


 随分話が横道にそれましたので元に戻すことにいたしましょうか・・、ねっ。


 また奇想天外な事実があらわになりました。

 これは真実のことかどうかは知りませんが

 (なに)


※この頃は、たえず悪霊君達から語りかけられています。それを受けて僕はこの日記に記してますので、これらが現実に起こっているかどうかは分からないままに綴っています。ご了承ください!



「オイオイ、奴の親父とお前の親父とは兄弟だっていうじゃないか!」


「そうなんですよ!僕の親父の兄弟から勘当された叔父(おじ)の末の子らしいんです。」


「じゃ~、お前とは従兄弟(いとこ)ということになるじゃないか」


「そうなんですよ。一番近い従兄弟なんですよ。奴は可哀想な奴なんです。一番不幸な時に生まれて・・・親父の顔も知らないんですよ。あれじゃ奴があんなにひねくれるのも無理ありませんよ!」


「それじゃ、ここで公然と従兄弟同士ということを明かしたらどうだい」


「イエ、それは出来ませんよ!奴は奴の親父も俺達の親父のことも憎んでますからねっ。

 こうなったら影で力になってやるしかありませんよ」


「・・・・・」


「奴の気持ちが不思議に分かると思ったら、こういうことだったんですねっ!

 ビックリしましたよ。 奴が日記に書いているとうり、奴の親父は皆から勘当されるほど人様の道から外れたことばかりしていましてねっ。 とてもまっとうな人じゃなかったらしいんですよ!

 イエ。 悪いというんじゃないんです。 結局人が良すぎてまっとうな道から外れたようなことばかりしていたんでしょうねっ!

 それにやはり頭に血がのぼったら何の見境もなくなり、もめごとばかり起こしていたらしいんですよ!」


・・そりゃ、一昔前には、このように不幸のドン底に落ち込むと分かっているお袋や、幼い子供五人を置いて蒸発するなんて、ひどい親父だなと恨んでいた頃もあります。

 またこのように貧しい生活に苦しんでいる我が家の家庭に何一つ援助の手を差しのべてくれなかった叔父達を恨んでいた頃もありました。


 しかしもうそれは過ぎ去った過去のことで

 今さら表沙汰にして認め合うこともない

 無縁の関係の人達だと処理していたのです。


 そりゃ~、確かに思いがけなくもこのような事実が明らかにされて


「アァ~、何という奇遇なのか?・・」


 と、意味なく胸に込み上げるものを感じました。


 もし本当にあかし(〇〇〇)合って、僕の親父の兄弟だというお人にお目にかかったら

 とたんに僕は涙流してお袋の苦労話しや、僕達の苦しみをボロクソに吐き捨てようと思うのだが‥‥


  ‥‥


‥‥


 あぁ~~


 とんだところで邪魔者が入ってしまった。

 せっかく僕が涙ぐましい人の苦労話しをしてやろうとしていたのに


 このお金に困っている最中に、駐車違反で警察に車を持っていかれたんだと!


 アホ臭くなってきたわ!


 どうしてこのように善良な人間を世間は冷たくあしらうのか?


 もう俺は絶対に善良な人間の仮面をかぶった奴等に手助けなんかしないぞ!


 誰がバカ正直者になってやるもんか!


 反発して反発して、ムチャクチャにコケにしてやる・・


 バッテリーの充電の料金をせっかく君達が小遣い銭をはたいて出してくれたというのに

 これじゃ~


 君達の好意も水の泡になってしまいましたねっ。


 行き止まりのどっちらけです!


 もういよいよ僕の可能性は完全に絶ち切られたのでしょうか?


 とにかくあまりのショックで気が動転してます。


 今日はもう書くのはよして、しばらく黙想でもしていようと思います。

 せっかく君達が心配して来てくれたのに、申し訳ありませんねっ。

 とにかく黙想・・



 このはかない我が不幸の運命を呪って、しばらく黙想します!




 アァ~、いつもいつも僕の結末は、このように行き止まりのどっちらけになってしまいます。


 いつになったら君達みたいに幸せ一杯だという顔をすることが出来るようになるのでしょうか?


 とにかく思い出が‥

 苦しみ、悩み、悲しみ、寂しがり、そしてふて腐れた、奇想天外な思い出が、出来すぎるほど出来て仕方がありません。


 どなたかこの思い出を買って下さるお人はおられませんか?


 自分一人の(てのひら)ではとても持てそうにありませんしねっ。

 とにかくさっきの続きを述べてみることにしましょうか!


 本当にその叔父とやらの頭を床にねじ伏せてまで、僕はお袋の可哀想な屈辱をなすりつけたい氣持ちになったのです。


 しかし‥、今さらそのようなことをしたところでねぇ~。


 ひねくれて人の道からはずれてしまっている兄貴達の人生を取り返せる訳ではありませんし

 僕にしても、もう彼等の力を借りないで立派に生きていけるほどの力を備えてしまっているのです。


 だからもうこんな話しはよしましょうねっ。


 とにかく僕はその屈辱にムカムカと腹がたってきました。


 涙が込み上げてきました。


 やはりこのように上品な会社の娘からお嫁さんをもらうことなんか、まったく身の程知らずの、夢ごとだとあきらめる決意をしたのです。


 その反面


「ようし、それなら奴等(君達)が、とても手に届かないような天上の人となってやる!

 力をつけて力をつけて、奴等の鼻っ柱をへし折るほどの立派な男になってやる!」


‥と、メラメラ!僕の情熱のタイマツに火がともってきたのです。

 何が上品な家柄の娘だ!

 一皮むけば皆、穴っぽこにこえだめを注いでいる、こきたないメス犬ではないか(これはチョッと言い過ぎ、失礼しました!)


 そのようなことを思ったら、少し胸のつかえもとれました!


 とにかくもう僕は、あのような暗い人生を歩いている人達と縁を切ってきたのです。

 やろうと思えば、君達と対等の立場で

 イヤッ!

 それ以上に立派な名声をかかげて、身を立てられるほどの地位にまでよじ登ってこれたのです!

 ここまで来るのにどれほどの岩壁と、(いばら)の道をくぐり抜けてきたことでしょう。


 その一つ一つの思い出を履歴書に書いたなら、とても君達が手に出せるような代物ではないんですよ。

 最も高貴で尊い神の落とし子みたいに立派な僕チャンなんですよ。


 まぁ~、これは脇に置いとくことにしましょう。


 いくらそのような苦労を積み重ねてきたところで

 そのように恵まれた家柄で楽に多大の力を獲得してこられたお方達には、いまだかないっこないのですからねっ!

 でも、僕チャンは負けたくないのです。

 あのように人の道から外れた人々の苦しみも知らないでノウノウと幸せに生きている人々を見返してやりたいと思うのです。


 しかし・・


 しかしこのひ弱な僕に、そのような大業が果たして出来るでしょうか?

 今にも自滅寸前の僕に、この先切り開いていける道が用意されているのでしょうか?

 あのような恐ろしい人に歯向かい、この会社ででも生きていくことが危ぶまれているこの僕に

 この先、生きていく道が用意されているでしょうか?


 確かに、ただ1つ道はあります。

 しかしそれはあまりにも途方もない高望みなことなので

 このまま(いさぎよ)(あきら)めて、田舎へ帰ろうかとも思っているのです。


 とてもとても自分にはあの人を倒せるほどの力量を持ち合わせてはいませんからねっ!

 しかしとにかくこのまま居座るのだったら

 やはり彼を倒すことしか自分が生き延びる道は残されていないのです。


シャ~て(さぁ~て)


 一体、どがんしたら(どうしたら)よかろかい(いいだろう)ニャ~!




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