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僕のブレスレットの中が最強だったのですが  作者: Estella
第一章 伝説の始発点//in人間界
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ななかいめ そして時は五年後かな?

 あれから五年が経った。

 村は半壊したものの、建築スキル持ちのロゼスにより楽々と解決された。

 しかし変わったことがひとつ。

 フェンラリアの態度が変わり、本当にご主人様として慕うようになった。ルネックスもそれほど気にしたことはない。

 いじめは続き、ルネックスの冒険者になりたいという決意も固まった。


 ロゼスも村の様子も変わらない、ルネックスの創造世界クリエイトスペースへの関心、意欲も深まり、扱いも十二分にうまくなった頃でもあった。

 ルネックス、十八歳。

 そろそろ彼は冒険者を目指し始めている。

 新しく手に入れたスキルがあった。それは【聖神召喚】というもので、よくわからなかった。


 神父のような服を着たルネックスは、ベッドの上で洗練された存在感と威圧を丸出しにした。

 そして彼はフェンラリアから姿を変える魔法を教えてもらった。


「まあ僕が何かの加護を受けてるのは間違いないだろうね」


 そう言いながらも、ルネックスの髪は銀色の長髪へと変わり、眼もブルーと紫のオッドアイに変わった。

 もうひとつ、彼がフェンラリアにも黙っていた新しいスキルがある。


「【記憶分析アカシックレコード】によると、僕は聖神に気に入られてるのかな?」


 【鑑定】【記憶分析】【聖神召喚】この三つのスキルが五年間の成果だ。

 そしてこの記憶分析でルネックスはフェンラリアの記憶を見たことがある。

 レベルが低すぎて最後まで見ることはできなかったが、ルネックスが「聖神」と呼ばれる「聖の力」という精霊や神、勇者の力の源である力を創った神に気に入られていることが分かった。

 もちろん、生贄としてと言うことも知っている。

 しかしこれほどの力を手に入れているのだし、ルネックスは限界まで生きたかった。


「っとまあ、仕方がないのかな」


 ルネックスは最近この村にて友達を見つけた。

 同じく忌子扱いされているシィレア・フェリスと呼ばれる少女である。

 魔界に住んで居るはずの鬼族の一人で、いつの間にかこの世界に居たのに理不尽な扱いを受け、この村の一番頑丈な檻の中に入れられてしまっていたのだ。

 それを助け、なぜか慕われたルネックス。


 この一件のおかげで称号「紳士」を手に入れたのは計算外だったが。

 もちろん計算などしていない。


「ルネックスさん、お待ちしましたか?」


「ううん、全く待ってないよ。自分の考えに浸っていたからね」


 この五年間で、ルネックスも大人らしくなった。


 ルネックスの小屋に入って来たのはシェリアだ。薄い緑の肩までの髪で、おでこよりすこしずれた位置にはピンク色のつのが生えている。

 鬼の角にも、なぜか種類があるらしい。

 シェリアの場合は、上位の鬼なのだが人間たちはそういうものの知識がないのだ。


「ルネックスさんは、いじめられているのですね……」


「うん、そうなんだよね。失望したかな?」


「いいえ! 全くそのようなことはありません。呪いでもかけちゃいましょうかと思いますね」


「えぇ!? ちょっと物騒だよ!?」


 上位の鬼が使える特殊技術は【呪い】。指定した対象に何でも呪いをかけることができるという能力だ。多くの者達はこれを恐れてシェリアを閉じ込めたのだという。

 しかし解放された今、全てをとりもどすことができるのではないかと思ったのだ。


「私」はルネックスさんを助けたいのです。何をすればいいのですか!?」


「え、あ……今はとりあえず、僕についてきてほしいな」


「はい! それで今日はなにをするのです?」


「ブレスレットはもうそんなに頼りたくないから、外行こうかな」


 ブレスレットは最近使っていない。

 シェリアがブレスレットに入れるようになったのは一年ほど前で、フェンラリアに理由を聞くと主人が最も信頼する者しか入れないのだという。

 シェリア自身は「最も信頼する者」になれてとてもうれしいのだという。


「ルネックスさん、変わりましたね」


「シェリアに出会ってからだよ。ありがとう」


「ふふ。ありがとうと言う言葉は私が言いたいところですよ」


 シェリアは相変わらず重苦しいドアを軽く開けて、飛び込んでくる新鮮な空気に目を輝かせた。ルネックスも久しぶりなきれいな空気に思わず涙がほろりと出てきてしまった。

 あの広い草原では、相変わらずロゼス達とフレアルが戯れている。


 二人は遠目でそれを見て、ルネックスの小屋の裏へ……シェリアの檻があった方向へと歩いて行った。


……

。。。



 相変わらず冷気が漂い、体を突き刺すような暗闇も見慣れたものだ。そう思わせる要因は二人が慣れた様子でその空間を歩いて行っているからだ。


「姉さま」


 その行き止まりで、シェリアが彼女と同じ髪色をした女性に声をかけた。

 その女性の髪はぼさぼさで、足のところまで髪が伸びている。


 四年前、シェリアを助けたとき、女性に掛けられていた鍵を解くことができなかったのだ。

 どうやら女性には不幸を招く呪いがかかっていて、もっと強い鍵が掛けられていたのだろう。


「シェリア……私は……っもう……助けなくて、いいの……貴方だけでも……生き……」


「姉さま!? 姉さま!!」


「ファリア!!!!」


 ファリアはそこで、息絶えたのだった。これまでの食べ物はルネックスとシェリアが送っていたのだが、一度村人につかまって一か月間小屋に閉じ込められていたのだ。

 きっとそれで栄養不足になったのだろう。


 シェリアは絶叫を上げて泣き、ルネックスは目から光をなくし膝から崩れ落ちた。

 冷気が一層強くなる。

 絶望と憎しみだけが漂うこの空間は、残酷しかないということ。


「何故気づかなかったんだ……気づいていれば、助けられたかもしれないのに!!!」


 もしもこの空間を「斬」れたなら。

 精神で絶望を斬れるなら。

 もしかしたらファリアは助けられたかもしれない。しかしルネックスはできなかったのだ。


『スキル【封印】【感情斬り】【呪い】を取得しました』


 頭の中で、その声だけが響いた。


……

。。。



 ルネックスの小屋では、ルネックスがベッドに、シェリアが椅子に座っていた。


「ルネックスさんは、気にしなくてもいいのです。これから頑張っていきましょう!」


「……シェリア、今の感情消したい?」


「できれば見えないところまで吹き飛ばしたいです」


 シェリアのその返答を聞いて、ルネックスは頷いた。


「スキル【感情斬り】」


 シェリアの周りを金色に光る刃が囲い、それが彼女に吸い込まれていくと、安らかな顔を浮かべてシェリアは眠ってしまった。

 その可愛い寝顔を見て、ルネックスも愛おしさを感じていた。


 シェリアは十七歳。

 もちろん意識しない年でもないが、ルネックスにとっては妹のような存在らしい。

 しかしシェリアが密かにルネックスに恋心を抱いていることはフェンラリアのみが知る。


「そうだね、シェリア。感情は時に見えないところまで吹き飛ばさなきゃいけないんだ」


 ルネックスは真剣な表情で見えない空があると思われる場所を見上げ、手を拳にして胸に当てた。

 父と母のために。シェリアのために、フェンラリアのために、村に復讐をするために。



 たくさんの目標を持って、冒険者を目指さなければならないのだ――――。


「ルネックスさん……頑張って……」


 シェリアのそんな寝言が、ふと聞こえた。


「……」


 ルネックスは無言で、そして腕にはめているブレスレッドに向かって。


「入れて」


 と。

 そうつぶやいた。

 ブレスレッドは輝き、ルネックスの姿とブレスレットも消えっていった。

 

 その反動で目が覚めたシェリアが慌てたのも、ルネックスの計画だったのだろう。





「フェンラリア、僕、もうブレスレットに頼らないよ」


「るねっくす様がいいなら、あたしもなにもいわないっていいましたよね、それにしぇりあさんといいふんいきじゃないですか」


「いいやそれはないよ。……ない、と思うよ」


「やっぱりびじんずきです?」


「いやいや! 違うから! フレアルは優しいんだ、話すときに抵抗もない」


「さんってつけなくなりましたね」


 そう楽しそうに話すものの、ルネックスはフェンラリアの表情から哀しみの色が見えた。

 しかし、わざと斬ることはなかった。


「きっとシェリアのおかげなんだろうね。……それで、フェンラリア。今日来た用事は」


「わかれをいいにきたんじゃないのですか?」


「それだけじゃないよ。まだ言いたいことがあるんだ」


「え……」


「フェンラリア、君をブレスレットの外に出したい。勿論負荷もかけずに」


 ルネックスは優しく微笑み、フェンラリアの頭を撫でた。フェンラリアは感激の涙をこぼし、ルネックスに飛びついた。

 どうやら淋しかったようで、ここから出たいと何度も思ったことがあるようだ。


「まず、僕の分析からするとフェンラリアには一種の呪いがかかっていると思うんだ」


「あ、それならしってる! えいえんにしていされたばしょから離れたらいけないものなの。るねっくすのおとうさんでもむりだったんだよ?」


「僕ならできるよ。お父さんと僕では、きっと違うものがあったんじゃないのかな」


 フェンラリアの態度が変わっていた。

 どうやらルネックスのその言葉が、彼女を感化したようだ。 

 そう言って微笑むと、ルネックスは掌をフェンラリアに向け、スキル【封印】をフェンラリアの心臓……呪いがあるはずの部分に向けて呪符を飛ばした。

 うめき声を上げて、フェンラリアは地面に尻もちをつき、何回か深呼吸をする。


「なんだか……ふしぎなかんかくだね。これでそといけるのかな?」


「行けるいけないじゃなくて、行こう!!」


「わっ!?」


 ルネックスがフェンラリアの手を引き、ブレスレットの外へ思い切り出た。

 レシェアが困惑しながらフェンラリアを見ている。


「まあ、精霊は小さいからポケットの中に隠しておけるね」


「フェンラリアさん! 出てこれたんですね!」


「んー、わかんないけどるねっくすがだしてくれたんだ」


 嬉しそうに話すシェリアにきょろきょろするフェンラリア。どうやら彼女は神聖な世界にしか出歩くことができないようで。

 人間界に来たのは一度目らしい。


「るねっくす、これからもよろしくね!」


「ルネックスさん、一人増えたからと言って捨てないでくださいね」


「あ、あぁ。うん。」


 二人から「よろしく」されたルネックスは内心で「これはハーレムになるのではないか」と思っていた。

 「ハーレム」と言う言葉は約二年前書庫を創り出したときに「地球」と言う国が生み出した言葉なのだということを知った。

 地球と言う国は魔法がなく、稀にそこからアルティディアに来る者もいるのだという。

 もっとも、それは伝説で、ありえないとされているのだが。


「もう、五年間も経ったよね。あれから実戦は少しずつしかやってこなかったけど、久しぶりにりたくなってきたなあ」


「……ルネックスさんが強力殺戮者へと姿を変えました」


「さすがだよるねっくす……でもやりすぎないでね?」


 否定したいのだが、ステータスの称号に「魔物殺戮者」というものがあっては否定の仕様がないのだ。

 これは今のこの場面を想定して産み出された称号だったのかもしれない。

 調べるとこれはルネックスのみに存在するユニーク称号なのだということを発見した。




 とりあえず、久しぶりの大殺戮といこうではないか。

異世界転生の方が明日つまんなくなるためコレで……

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