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僕のブレスレットの中が最強だったのですが  作者: Estella
第三章 伝説の最高点//in全世界
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よんじゅうろっかいめ その後の彼らかな?

 あの後、テーラは転移を使って帰っていった。ルネックスに託されたのは、大量の下克上系やら相性系やらの魔導書だった。

 例えカスなスキルしかなかったとしても、たくさんあれば勝ちというような、大胆なものばかりでもあった。

 ルネックスは一日それを読み、一日実技練習……とそれを繰り返していた。


「はぁっ! ……グレード・アップ!」


 詠唱の短縮、剣技の進歩。ルネックスは的を同時に何百個も当てたり、限界まで魔力を消費し、その魔力で作られた魔術を自分に当てたり。

 十分神に届き、十分それ以上の実力を持ち、それでも足りないと彼は立つ。


 ルネックスの剣技は、剣技に優れるシェリアとリーシャ二人と戦っても勝ち、テーラを圧倒できるがギリギリで勝てないといったくらい。

 魔術にはそれに優れたリンネやフレアル、フェンラリア三人がかりでも、魔術のみしか使えないと限定したり、その場からルネックスだけが動いてはいけないと設定しても、勝つことはできなかった。


 だがひとつだけ。カレンには次の手を見破られ、しないと言ってもすると脳内で浮かべていれば嘘だとばれ、間合いに入られるのもカレンのみ。

 彼女の覚悟と大胆さは、魔導書を手に入れたルネックスと大差なかった。


(追いつけ……追いつけ……テーラさんに追いつけ! そして、追い越せ自分! 僕は此処で止まっていては、いけない!)


「うあぁ……っ」


 神罰とも言える苦痛を味わわせることができるルネックス自身の魔術。それをひとつ選んで、全ての魔力を注入し自分に当てる。

 もう魔力がなかったとしても、魂を燃やさずに物理的に魔力を増やす。こうすることでステータスの魔力がアップしやすい。


 剣を振る。幾度も幾度も振るだけではない、何度も自分を刺すこともあり、苦痛を減らす。片足でも同じように振るえる、片手片足でも同じ。

 剣に魔力を纏わせる。そうすれば威力が増す。自分の作った武器を入れる。そうすればもっと自分にあったものになる。

 風を纏う。全てを切り裂くように剣を幾度となく動かしていく―――。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 息が切れたとしても振り回し続ければ、腕力、器用さ、体力、剣技スキルだって上がる。そしてその速度はずっと速い。

 訓練の時間を終えた。ルネックスは自分で治癒をすると、その場に座り込む。


「さて……休憩の時間はない。行くか」


「どーも、迎えに来たヨ! 彼らが断るとも思えないけどボクが居れば信憑性は高くなるからね。ってことで~」


 今日はテーラが言っていた「助っ人たち」を探しに行くのだ。正直、変人だらけなので何があるかは分からないのだが……。

 それでも強くうなずくと、テーラとルネックスの姿は消え去った。



 ♢  ♢  ♢



 幻無。幻のように美しいのに、目の前には本当は何もない。フェンラリアに必要なのは、冷静さ。そしてルネックスのように大量なスキルを使うことは負荷となる。

 ならば、自分の出来るスキルたちをひとつに合成すればどうか。フェンラリアならできないということはない。


「【閻魔】」


 蒼く、黒い部分もある炎。闇属性と火属性と水属性を組み合わせた、トリプルスキル。それは人に幻影を見せ、その隙にその者を燃やし尽くす。

 フェンラリアは目を閉じ、胸に両手を当て、女神のように祈りを捧げる。

 フェンラリアに今一番効率的なのは、精霊王ルテスファリアの力を借りることだ。彼女と親しいフェンラリアなら、どの大精霊よりも効率的に力を引き出せる。


「【聖煙】」


 魔力を全体的に纏い、装甲とする。フェンラリアはセバスチャンからの訓練を受け、最も効率的な訓練方法を提示された。

 それは、今フェンラリアがいる場所での訓練だ。フェンラリア自身の形をした、セバスチャンと同じくらいの強さの人形と戦える場所。


 ここの先へ行くと、世界を守る樹がある。ここならば、どれだけ怪我をしてもそこへ行けば癒してくれるので、適度に訓練をするということも言いつけられた。

 それからフェンラリアは深夜以外、家に帰ることは無かった。たとえルネックスに心配されても、フェンラリアの訓練は終わらない。


「あたしが……るねっくすの先頭にたたなきゃ、いけないの……! まけたら、だめ。あたしは、大精霊だから……」


 息を切らしながら魔術を放つフェンラリアが、後の歴史にルネックスの最強の助手と記されるのは、もっと後の話。



 ※  ※  ※



 晴れ渡る空を、一本の神聖なる光の槍が切り裂いた。カレンだ。カレンの光魔術は神より上位互換なほどの強さを持っている。

 ちなみに今のパーティメンバーにステータスというものはない。限界を超えすぎているのだ。ステータスを作ったのが神だというのが本当なら、神を超えればステータスは砕け散って無くなる。


 だがその上でも、ゼウスはこのメンバーの中でルネックスを抜けばカレンが一番成長できるとまで言ったのだ。

 それからカレンは、光魔術を極め、人の精神を惑わす幻想属性への適性が発見された。セバスチャンに通用するくらい最強の適性だ。


(ゼウス様やルネックスにさえ……お墨付きをもらったんだ……期待を裏切るわけには……いかない……わたしには……この方法しか……ないのだから)


 カレンは雷を周囲に広がらせ、手には雷の剣が握られている。それを発動している限り、広範囲に広がる雷は触れるだけで致命傷となる。

 何故ならそこには光魔術と闇魔術を合成し、その上での幻想属性を込めた毒が入っているからだ。


 家族との思い出を、友人との思い出、あるいは恋人との思い出を感じながら死ぬことができる、カレンなりの情けだった。


「はぁああああああ――――――!」


 地面に先が見えないほどの大穴が空き、それをカレンは修復して見せた。それくらい当たり前なのだ、全属性を取得しているのだから。

 つう、と頬から汗が流れたのを確認すると、カレンはタオルを取りに、街特製のカレンのためだけに作られた庭から家に戻るのだった。



 〇  〇  〇



 神と対決できる最高の属性である魔の力を持つシェリアは、カレンの次にゼウスとセバスチャンの二人に重用されていた。

 なのでシェリアは頑張りに応えようと、必死に魔の力のみを練習している。

 逆にシェリアにとって他の属性を扱うのは、足手まといになる可能性が出てくる。


 表に出るような四大属性は裏系であるシェリアにとっていいものではないし、何と言っても聖神の弱点が闇なのだ。


「【腐食】」


 シェリアに用意されたのは、無数の人間の肉体を再現した人形。毒の霧が彼らを腐食していき、白骨だけが地面に倒れる。

 その白骨でさえところどころ溶けてなくなり、形がいびつになっている。


 キリッと目の前の敵を睨んだシェリアの集中度は、『それ以外何も見えない』ではなく、『それ以外何も見るつもりすらない』というひとつ上のものだった。

 セバスチャンとゼウスによると、シェリアの性質はルネックスとよく似ている。

 なので、今の彼女に必要なのは闇に関する魔術を全てマスターすること。


「……一応魔導書は貰いましたが、ルネックスさんと比べるとずいぶん少ない量ですね……」


 今日用意された分の人形たちを軽く薙ぎ倒すと、シェリアは自分の部屋に戻り魔導書を胸に抱える。そしてため息をつく。

 ルネックスに負けているのは自覚があるが、闇属性では同じくらい強い自覚はある。スキル数で戦うルネックスと戦って勝てる確率ははっきり言って0。


 だが、ルネックスを相手に闇属性だけだったとしても同じくらいというステージに立てただけで、ロゼスの取り巻き相手なら時間稼ぎ程度にはなる。


 ゼウスは言う。

 あくまでルネックスがアカシックレコードを見たときのデータであり、今どれだけ成長したのかは分からないのだ。

 今のルネックスもきっとアカシックレコードを見る暇などない。何せ、メンバーが全員集まらないのだ。


「頑張らなくては……私が足手まといなどには決してなりません!」



 ♦  ♦  ♦



 火を纏った剣、闇を纏った剣、宇宙につなぐ鎌、触れただけで命が消える槍。音速を超えるような速さ重視威力重視の鉄球。

 それらをどこからともなく、フレアルが巧みに操っていた。

 武器を自由に操り、防御へ攻撃へと変えていくことで、フレアル自身の威力を高めていく。スキル付きの武器のみを選ぶことを重視。


 無限に治癒される、魔法陣の上に存在する魔物に幾度となく挑んでいく。無限の治癒だが、一瞬でどれだけダメージを与えられるかという試練だ。

 フレアルの場合は、武器に全てを委ねるので『一瞬』が大切になる。


「はぁっ! もう、死になさいよさっさとぉおおっ!!」


 ハサミやら鎌やら斧やら物騒な武器を全て一度に叩き込むが、雄叫びを上げた魔物は瞬時に回復する。フレアルは少しイライラした。

 ちなみにこの魔物を倒す方法はスキルを封じればいいだけなのだが、フレアルはそれをしない。訓練のためのものだ、と納得している。

 

 勝利にこだわる少女だが、ここでは身を引くことも覚えなくてはならない。殺してはいけないものを殺しても意味がないのが当たり前なのだから。


「はー、はー、さぁて、新しい武器作ってくるか。今度はもっと薄っぺらくして防御中心に……いやこのシステムだとおかしくなるし―――」


 最近フレアルには錬金術師の才能がある事が分かったのだ。しっかりとセバスチャンが鍛えてくれたのでプロレベルだ。

 そして、最近意味が分からない言葉をつぶやき始めたのはそのせいだろうか。



 ☆  ☆  ☆



 三対のロボットの相手を、短剣でしているリーシャ。その理由は、彼女が急に姿を消したことにも原因する。

 隠蔽系魔術。

 完全後衛型の魔術だが、罠設置、結界設置にも特化しており、ねちねちと敵を攻めていくのに特化した少女だ。

 この才能を発見するために、ゼウスは結構努力したのを覚えている。


「リーシャを相手するのに……ロボットじゃ無理だと思います―――ます!」


 一応ゼウスお手製の無限に現れるロボット。いつでもニ十体になっていて、一体倒されるたびに一体補充される形だ。

 ボタンにつぎ込まれる魔力がなくなる時は、大体結構な時間がたつ時だ。


 それほどゼウスの魔力は膨大だが、聖神の力はそれとさほど変わらないのだ。


「ふう……さて、今日はここまでにします――ます。お疲れ様です、ロボットさん―――さん」


 ふわりと笑うと、リーシャはロボットの動きを治めているボタンを押し、その部屋から退出したのだった。

 そして懐から開いたのは、隠蔽魔術の効果的な場面、瞬間での使い方。


 それを読みながら、リーシャは「ふむふむ」と声を出しながら魔力を練る。


「大体こんな感じですかね……」


 満足のいく魔力の練り方をマスターすると、リーシャはまたどこかへ向けて駆け出した。ギルドの対人戦用訓練場だ。



 ♡  ♡  ♡



 グシャ、という不気味な音がして、魔物の体がつぶれていく。その状態を成し遂げた少女は、なんともないかのように平然としている。


「ふぅ、成長したような感覚がしないわぁ」


 と、リンネは口ではそう言っているが、実際はそうではない。殺生力(威力)、速度の二つだけに特化した彼女。

 彼女の姿を捉えるのはもうルネックスくらいにしかできないほどだ。

 実際、魔物が彼女の姿を見るより早く、既にその体は潰れてしまっていたのだ。


「今頃みんながさらに上言ってると思うとぉ、休んで居られないわぁ」


 話しながら何百体も何千体も、森林を突き進みながら屠っていく。これでも魔物を屠るたびにギルドに行っているのだ。

 現在彼女はSランクであり、そのパーティメンバーも同時にSランクだ。


 国民の憧れであり、もはや国王コレムをも超えてしまうくらいだ。ちなみにそれを知らされたときのコレムは苦笑いだったらしい。


「さて、終了だよぉ」


 リンネが手を振り払うと、また何十体の魔物が消えていく。










 ―――さあ、出来るだけの努力はした。神界を圧倒できる実力もある。


 ―――各世界も戦闘に向けて訓練をしてきた。




 ―――さぁ、この世界はどう終盤を迎えるだろうか。



『ええ、待ち遠しいですわ』


 少女の手に抱いている人形は、あくまでも無表情だったが。


 ―――ボクも待ち遠しい。操り人形が動いてくれるのだから。


『まだ出れないのが悲しいですわね……どうしましょう?』


 ―――ボクは黒歴史探りが好きだ。


『そうですわね。また大声で笑いましょう。ふふふふふふふ』


 ころころと笑う少女と共に、世界に亀裂が走った。誰にもみえないほど小さなものだが、それは大きな脅威となるのか―――?

いつもより文字数が増えるだけにクッソ疲れました(笑)

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