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僕のブレスレットの中が最強だったのですが  作者: Estella
第一章 伝説の始発点//in人間界
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さんかいめ 限界を超えた訓練の日々かな?「1」発端

チュンチュン。


「んん……?」


 さえずる、良く村に現れる謎の緑色の鳥の音を聞いて、ルネックスは瞼をさすって起き上がる。

 半壊していて、何とか機能している窓を覗くと、太陽が上がり始めており、もう朝だということを知らせていた。


「あのまま寝ちゃったのか、って、首が痛い」


 あの時倒れこんだ姿勢は横だったため、枕がなかった。まあいつもの枕といってもたったひとつの替えの服を丸めて置いただけなのだが、それでもないとずいぶん違う。

 ところで今日も、大草原に行かなければならない。いつもは呼ばれたり雑用で連れていかれたりするのだが、今日は本当に用事がある。


「よし、行くか」


 昨日フェンラリアのところから貰った布で作られた真っ黒な上着を着て、重い扉を開ける。きれいな服を着たのは久しぶりで、とても気持ちがいい。

 今朝、フェンラリアから連絡をもらった。今日の朝にフレアルと会えば吉という伝言だった。その真意はよく分からないが、フェンラリアがいけいけと背中を押してきたので、そこまで言うのなら行くつもりだ。


……

。。。




「……あれ、なんか!」


 普通に歩いて十分も経たずに、大草原までついた。そこにはまだ誰もいない。それもそうだろう、まだ朝方なため、遊ぶのにいいスポットとして人気なこの場所にはそれほど人がいない。

 という事なのでルネックスは久しぶりに外でゆっくり探索することにした。すると、さほど時間はかからずに彼はそれなりに珍しいものを発見した。


「薬草セリア!」


 治療によく使われる薬草の「セリア」。だたし茎の部分に毒があるため葉の部分だけきれいにとらなければならないのが使用の難しいところだ。

 学んだ知識を思い返しながら、帰ったら使い方をフェンラリアに教えてもらおうと思い、ルネックスはセリアをポケットの中に突っ込む。

 ちなみにセリアは素手で触っても問題ないが、茎の処理なしで口に入れたら間違いなく死ぬ。


「それ、私が植えたんだよ」


「えぇ!? フレアルさん? どうしてここにいるの? それにフレアルさんが植えたって……」


 後ろから声がかけられ、びっくりして振り返ると、フレアルが立っていた。ロゼス達もいるのかと思っていただけに、安心のため息をつく。

 クリーム色で少しウェーブが掛かった肩までの髪の毛、いつもこだわりのある運動に適している組み合わせだと一目でわかる服。

 いつ見ても、誰が見ても綺麗としか思えないが、ルネックスはそういうものには興味がないため、綺麗とも何とも思わない。

 それよりもセリアはフレアルが植えたという方が気になる。


「あのね、私が初めて薬草を扱えるようになった時、初めて使った薬草なんだよ。凄い薬を使って永遠に生えるようにしたから、何回でも取ったらまた生えてくるの! お金は沢山使ったけど、自分でこつこつ貯めたから後悔してないわ」


「へえ、そういえばフレアルさんって調合師になりたいんだよね」


「うん! 今では全部と言うわけではないけど、結構な量の薬草の名前を覚えたよ」


 そう言ってフレアルは生えている薬草を愛おしそうに見つめる。その瞳がやや寂しそうに光を灯している事に、ルネックスは気付かない。

 調合師とは、薬草などを使って薬を創ったり、時には怪我した者達への治療もしたりする職業。

 国からスカウトされることもめずらしくなく、なったという事実だけでも誇らしい職業だ。

 フレアルは天性的に「調合スキル」を持っており、薬草やその調合方法などの覚えも早く、調合師の中でも天才だと崇められている。

 戦闘スキルは持っていないのだが、ロゼスがそれを補足できるほどの実力。改めて似合う二人だとルネックスは思った。


「へえ。調合師になれるといいね」


「もしなれても、嬉しくない。私は薬草が好きよ。薬草が可愛いと思ってるわ。でも、違うのよ。私の理想は、そうじゃないわ――」


「え?」


「だって自分の道を生きてきたことがないの。ねえ知ってる? 私、ルネックス君が羨ましいのよ。たとえいじめがあっても、自分の道で自由に生きていられるのなら、私は……」


 フレアルは目尻に涙を溜めて、ルネックスにそう訴えた。彼女は強くて、優しいが誰にも弱みを見せたことがない。

 それは紛れもなくルネックスを信頼しているということなのだが、単純なルネックスはそれを理解することができていないようだ。

 フレアルはハッと気づき、ルネックスの方を見た。そして慌てて顔を伏せる。


「ごめんね、変なこと言っちゃって。ロゼス達がもう来ちゃうから、帰った方がいいよ」


「あぁ、うん。じゃあお言葉に甘えて、僕はもう帰るよ、フレアルさん。えっと……頑張って」


「!! え……えぇ」


 女慣れしていないルネックスはこういう時にどう声をかければいいのか分からなかったが、頑張れと一言声をかけた。

 声をかけた後、すぐ走り去ってしまったため、フレアルの顔がほんのりと赤くなっていたことに気付かなかった。

 果たしてこれは吉だったのか。それとも凶だったのか。ルネックスは勿論、もしかしたらフェンラリアでさえも、分からないかもしれない。


「フレアルー!」


 フレアルの言う通り、ルネックスが行ってしまったあと、すぐにロゼス達は来てしまった。フレアルは普段通りに応じていたが、ルネックスのことを聞かれても絶対に答えることは無かった。



 その後ルネックスは急いでブレスレッドに向かって念じ、中に入る。

 中ではすでに入り口にてフェンラリアが待っており、淋しかったと言いながらルネックスに抱きつく。なので流れでルネックスが彼女の頭をなでると、嬉しそうにその羽根がばたばたした。

 前までそれほど気にしなかったが精霊の皆の背後についている羽根はさまざまな模様が入っていてきれいだ。思わず見とれたが、彼女が言葉をかけてくる。


「どうだった? いいことあった?」


「あったよ。フレアルさんにも会ったけどさ、薬草がとれたんだよ」


 そう言いながらルネックスはポケットから薬草セリアを取り出す。真っ白な薬草だ。ほんのりと薔薇とラベンダーを掛け合わせたような香りが漂っている。

 セリアを見て、フェンラリアはぱああと目を輝かせた。


「あー! せりあだー! これ調合方法しってるー?」


「知らないから教えてもらおうと思って」


「んん! いいよ~、あたしこれの匂いだいすきなんだ!」


 ルネックスがセリアを渡すと、フェンラリアは嬉しそうに笑顔を浮かべながら受け取った。フェンラリアによると、セリアの匂いは心が洗浄されるような香りだそうだ。薔薇とラベンダーの掛け合わせなど何と言えばいいのか確かに分からない。

 彼女のたとえは確かによくわからないが、それ以外にどう例えていいかもわからない。なのでその考えは一旦置いておき、とりあえず調合してみるほかない。


「調合スキルをあげるよ!」


「えぇ!? そんな簡単にあげちゃっていいの?」


「え? だってご主人さまにはつくすべきでしょ?」


 SRスーパーレアスキルともいわれる調合スキルをセリア欲しさにくれるというのだ。

 スキルにもランクがあり、F、D、B、A、R、S、SS、SR、AAR、SSRと下から順に並べればこんな感じだ。

 その中でも上から数えた方が早いSRスキルをくれるのだという。

 まあどちらにしろもらって損はないので、ルネックスはもらうことにした。


「何でそう自由にスキルをあげられるの?」


「だって創造せかいだよ? あたしみたいな精霊のみが、スキルとかそういうのもだせちゃうの!」


「へぇ、そういえばこの世界って名前とかある?」


「なまえ? ないよ」


「昨日決めたんだけどさ、【創造世界クリエイトスペース】とかどうかな?」


 ルネックスがそう言った瞬間、創造世界クリエイトスペースが輝いた。その神々しい光は二人を照らしたあと、やがて徐々に収縮した。

 ルネックスは美しさに目を細め、フェンラリアはその光を眺めて、頷く。


「どうやら名前を気に入ってくれたみたいだね! きょうからこの世界のなまえは【創造世界クリエイトスペース】ってことだよ」


「僕の造った名前が気に入られたのか……嬉しいな」


「しみじみしてないで、きもちを切り換えて調合してほしいんだけど」


「あ、ごめん」


 もー、とフェンラリアは頬を膨らませ、手を組んでルネックスを見つめる。

 ルネックスでも可愛いなあとは思ったのだが、こういう可愛い子こそ怒らせたら大変だとどこかで聞いた覚えがあるため、フェンラリアに急いで調合方法を聞く。

 ―――あ、そうか、父さんか。

 父が可愛い子を怒らせてはいけない、と母を見ながら言っていたのをルネックスは思い出す。思わず涙が出そうになるが、フェンラリアも言った通り気持ちの切り替えだ。


「じゅもんはあたまにでてくるとおもうから、薬草にむけててをかざせばいいよ」


「ん、了解」


 フェンラリアからもう一度薬草セリアを受け取り、体の中心に来るように持つ。そしてゆっくりを目を閉じて、調合されるときの情景を思い浮かべる。


【セリア・調合!《治療薬ポーションレベル3!》】


 脳内に浮かび上がった呪文をそのまま詠唱すると、薬草セリアは薬丸へと形を変えた。

 そこから途切れ途切れにふわりと流れる幻想的な清らかな香りは、ルネックスを夢の中に誘うようで、フェンラリアの言う通りだと思った。それはもう 薔薇とラベンダーの掛け合わせではなく、もっと別の神聖な何かだった。

 フェンラリアもその香りを楽しんでいるようだ。彼女は間違っていなかった……。


「これは、またるねっくす練習ちゅーに怪我とかするとおもうからその時にね!」


「あぁ、確かに。実戦とかやるかもだし」


「それはー、けっこうさきになっちゃうかな?」


「あはは」


 ルネックスは髪をかりかりとかく。

 まだ魔術もままならないし、スキルも全く成長したり新しいものを取得できていないのに、実戦などたしかにまだ先の事だろう、しかし夢があるのは悪くない。

 ただ、フェンラリアの苦笑いには、一筋の期待がこもっていた。今度こそルネックスはその笑顔の中から少しだけ期待の色を読み取れたが。


「るねっくすに、きたいしてるね」


「……? あ、あぁ。うん」


 フェンラリアのその声は、いつもより意味が深い気がして、ルネックスはまともに返事することができなかった。

 フレアルといい、フェンラリアといい、今日は一体なんなんだとルネックスはため息をつく。まさかこれが自分の運命だとでもいうのか。

 それはさておき、ルネックスが調合した薬丸は一旦フェンラリアが預かった。その薬丸を受け取りながらフェンラリアは思い出したように手をぽんと叩く。


「そういえば、きのうの剣の魔力はあたしのMPボックスにいれておいたよ」


「えむぴーぼっくす?」


「魔力ポイントのりゃくだよ、魔力が保存できるレアスキルで、アイテムボックスみたいなかんじ!」


 その説明は分かりやすかった。つまり魔術でアイテムボックスを呼び出すように、MP(魔力ポイント)ボックスを呼び出し、その中に魔力を入れるということだろう。

 昨日と言い今日と言い、やはりフェンラリアの説明は分かりやすい。だてに大精霊として長い間生きていないという事なのだろう。


「きょうは、るねっくすに合う武器をさがすの! だから武器庫を創造してみて」


「呪文はまた頭の中に浮かぶんだよね」


「うん! とりあえずへやのレイアウトをしてね」


 目を閉じて、武器庫の創造をする。小さいころから相手がいなく、妄想や想像、物を作ったりするのが日常だった。だから想像力だけは人一倍だと断言できる。

 さっきルネックスがやってみせた調合も、調合師を目指す者たちが一か月かかってやっと想像するところまでできるようになるくらいのレベルのことをやっていたのだ。隠れ天才である。


創造クリエイト・武器庫・豊富でレアな物を示す】


 ルネックスがそう詠唱をすると、創造世界クリエイトスペースは道場から武器が大量に置いてある武器庫へと姿を変えた。


「やっぱ便利だね、ここ」


「とかいってるけど、これ通常のひとがやったらプロでも何日かはかかるから」


 ルネックスは喜んでいるが、フェンラリアは既に苦笑いである。もう一度いうが、ルネックスは正真正銘の隠れ天才だ。武器庫の中の武器は全てレアな物で、フェンラリアすら見たことのないものもあった。



 いくつかの武器をとって、素振り、使用をしてみた結果。


「るねっくすはつえだね」


「これ気に入った~!」


 結局ルネックスに一番合うとされたのは先にダイヤモンドが付いているシンプルであって豪華なちょうどいい杖だった。

 この杖を使うと異常に彼の速度が速まるのだ。

 あの短剣を使っても構わないのだが、ハイスペックすぎていつか爆発したりするかもわからないため魔力の動きを掌握することができるようになるまでしばらく短剣の使用はお預けだ。


「ふう、じゃあもうかえっていいよ」


「うん! 帰ってからゆっくり鑑賞するね!」


 そういってルネックスはブレスレッドから出た。中にいたときは楽しくて気付かなかったが、ブレスレットから出ると疲れがどっと襲ってくる。

 ルネックスは自分の体力のなさにため息をついて、今日は早めに眠りにつくことにした。




 ―――結局、今日の訓練は簡単に終わってしまったが、今日の分が明日に加算されそうだ。

 ルネックスは実戦がしたくて仕方がなかった、ただそれだけではあるが。

頑張ったんですよ。

明日はもうきっと更新しないですよー

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