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僕のブレスレットの中が最強だったのですが  作者: Estella
第二章 伝説の着地点//㏌天界&魔界&人間界
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にじゅうきゅうかいめ 神界の動きかな?

今回も字少なめです。

視点は神界です。

ロゼス達の視点は次々回になりました。

 神の会議。

 神聖なものだとして広まっているが、残酷なものも良いことも、すべて神の会議で進められる。そのため「本物」はそこまで神聖とは言えない。

 神の会議に参加するのは自由で、現にディステシアなどの神は来ていない。


「あの少年……恐ろしいぞ、恐ろしい……」


 議長、中級神ヴィーナズケイトがうんうんと指でこめかみを抑えて悩んでいた。他に参加している神たちも同じような表情をして固まっている。

 人間の範疇を超え、神の領域にまで手を伸ばしたのだ。


「私は聖神派です。覚醒した聖神様を攻撃するというのなら、私は懸命に反発させていただきます」


 上級神フィナレイドが真剣な顔をしてヴィーナズケイトに語る。聖神派と清純派は恐らく半々に別れていて、覚醒した聖神を殺せと命令するのなら、反発がひどいだろう。

 もっとどうすればいいのか分からなくなった。


「―――お悩み中ですかー?」


「聖神ッ!!」


「おやめになってください議長。貴殿では私には勝てませんよ?」


 気の抜けた声で、気配を消しながらヴィーナズケイトの頭の上にふわりと現れたのは聖神だった。彼が攻撃しようとするが、フィナレイドの言葉によって動けなくなる。

 いくら中級神でも、上級神に相手をするのなら一瞬で殺されてしまうだろう。


 聖神ははぁ、と呆れたため息を吐いてこの場を見つめた。


「ルネックスだっけ? その子に抗う策すら立っていないのに、私を攻撃することができるとか思わないでくださいねー」


「何故現れたッ」


「え? 歓迎しない? まあそりゃそうだよねー、それで理由なんですけど、私も協力しようと思いまして~」


「信じられん……あの聖神が協力だと?」


 ヴィーナズケイトはフィナレイドの威圧に耐えながらも聖神の言葉に何とか声を絞り出した。前髪で顔が見えていない聖神だが、その口元が緩んだのは見えた。

 まるでそうなることが分かっているかのように、弄ぶかのように。


「信じられないです? 威圧でぜーんぶ解決しちゃいますよ、信じなかったら。私だって威厳があるんです~。あの子は……あの子には、怒りがあるんですよ」


「聖神様が、怒りを感じた者、ですか。もっと許せませんね」


「だが、貴様が来たとしても解決できることは何もない! 何か策は練ってきているのだろうな?」


 言葉の最後に到達したとき、聖神は手を拳にして強く握りしめていた。そのせいで肩も微かに震え、フィナレイドのルネックスへの恨みもMAXになる。

 ドン、とヴィーナズケイトが机に拳をぶつけ、聖神に向かって叫んだ。


 それはこの場に居る聖神派にとっても反論はできなく、期待の目で聖神を見つめていた。最初に聖神が出した言葉は計画でも何でもなかった。


「あの力はいつか天界を征服するほどになりますよ」


 一言。たった一言。

 何も言えない。

 意見でも何でもないのに、ヴィーナズケイトなら反論するかもしれない言葉だったのに。


 目は見えないのに、その光が。

 笑いすらも威圧に変わる、その口元が。

 怖かったのだ。


――――「怖くないんですか? あの力が」


 長い長い時間をおいて、恐怖が散らばる時、聖神は皆に問いかけた。


「怖い、とても、怖い―――――――――」


 息を揃えようともしていないのに、この場に居た者は全員でそう言った。

 聖神は満足そうに微笑むと、空いた席に腰かけた。


 ゆびをピン、と立てて目で皆を見渡すその姿。

 何も言えない、何も口を出せない。

 彼女の口から次に出てくる言葉を、皆が期待し息をのんだ。


「今回、彼の計画に加担していたのは神もいるよ」


 敬語を改め、聖神はその威厳をとりもどして不敵に微笑んだ。その情報を受け取った神々は会議に参加していない者達も「はぁ?」と言った表情で驚いていた。

 まさか、同族が裏切るようなことをしていたとは誰も思わなかったのだろう。


「そうだよ。人間でも神でもなんでも、完全な忠誠などない、カンペキなどいない。誰だって裏切るし、誰だってほかの人に協力したくなるよ」


 ふふ、と微笑んだ聖神のその表情はなんだか悲しく、淋しさすらも籠っていた。神々はようやく彼女のしたいことが分かった。

 そして、同意した。


 同族だろうと、神がその心を緩めることは無い。

 神の威厳、それだけで皆は決断したのだった。


(気づいてないんだね……ただいいように利用されているだけなのに。やっぱりカミサマなんて頼りにならないし、それなら人間の方がずっとずっとすてき)


 ふと、聖神は自分の考えに浸った。


「……この剣に加担した神―――精霊管理神ディステシアを処刑なさい」


「はっ」


 この場の者は聖神に心の内を掴まれ、完全に動く忠誠なる駒となっている。完全な忠誠は無い。分かっている。だからこそ裏切るのならば捻り潰せばいい。

 自分はそんなに簡単な存在ではない、聖神の心には憎しみしかないのだ。


 伝えたいことを伝え終わると、聖神はそのマントを翻し、地面を一度にらんだ。


「―――日程ややり方は、貴様らで決めていいよ。ただしひとつ。あの少年たちにとって一番残酷なやり方で。そうね……大精霊の心を折るやり方でもいいよ」


「了解致しました。聖神様」


 フィナレイドは神の中でも突出している聖神派だ。

 彼女が腰をへの字に折って聖神が出ていくのを見えなくなるまで見届けた。


 そんな彼女の行いをヴィーナズケイトは認めないともいうかのように聖神とフィナレイドを睨みつけて会議を終えたのだった。


――――――。


 ドォン。

 真っ白な空間にただひとつおかれたテーブルが二つにぽきりと割れた。

 しかし「ぽきり」と割れたにしては大きな効果音が響いた。


 その現象を起こした女性が、聖神が。歯で唇をわざと切る。そこから血が垂れても気にせずぺろりと舌で舐めとる。

 表情は相変わらず読めないが、拳にした手は震えていた。


「ディステシア・プロミネイトォ……」


 思わずと言った感じに口ずさんだ名前は、精霊管理神ディステシアの過去の、人間だった時(・・・・・・)の聖神が知る彼女の名前だった。

 そして過去の聖神が捨てた苗字を口ずさむたび怒りが湧きあがってくる。


 ふと力を抜き、にやり、と口を三日月のようにして笑う。

 これから処刑される者の名前で恨んでも仕方がないと判断したのだ。


「さて、どう踊ってくれるかな?」


 神界の者がどうディステシアに処刑をするのか、一番残酷な方法でどう踊って見せるのか気になり、一度聖神は恨みのことを放っておいた。


「はは。騙されやすいよねぇ【見せなさい、彼らの嘆きを】」


 やたら長い詠唱は彼女が作り出したものだ。

 何もない空間だったところから画面が浮かび上がり、聖神はその中の内容を見て不敵に笑った。




―――――時は同じくして、神界中心にて―――――


「き、貴様ら……!? な、何故だ、なぜ私を?!」


「ディステシア、すまんな。私たちも逆らえなかったんだよ」


 上級神たちがディステシアを中心部に引きずり込み、何百、いや何千の神が処刑されただろう処刑場の丸太に固定された。

 ディステシアは身に覚えもない罪を着せられて瞳を大きくして反論した。

 しかし帰ってきたのはためいきと必要もない罪滅ぼしかのような謝罪。


 精霊たちが心配そうにこちらを見ているが手を出す者は誰一人いない。


「所詮……神も完ぺきではなかったということか」


「勘違いしていますね、精霊管理神。聖神様はいつでも完璧です」


「そうか、あいつが……」


「あいつ呼ばわりは止めてください【見せなさい、彼らの嘆きを】」


 フィナレイドが威圧をかけて睨み、聖神と同じ呪文を詠唱する。

 表示された画面は、ルネックス達の家の中だった。


「やりなさい」


 フィナレイドの掛け声とともに、ディステシアの腹部に神の聖なる槍が撃ち込まれた。


「あ゛あ゛ぁあああっぁああああっ」


 その叫びと共に、吹き出す血と共に―――――――――――。




――――時はさかのぼり、王都のとある空いたとても大きな土地――――


「よし、此処でいいよ」


「「「「「うっす!!」」」」


 レンガや木などを運んでいる冒険者達に指示を出しているルネックス。その隣には姿を消しているフェンラリアとリーシャ、フレアルがいた。

 リーシャとフレアルはもっと後方で待機している奴隷たちに支持をしている。


 もうすぐ、出来上がる。

 もっと、望みに近づく。

 そう思うと、ルネックスの気分は高揚した。


「みんな、凄いな」


 冒険者立の働きっぷりを見ると、ルネックスはもっと頑張らなければと思ってしまう。

 ニコリと笑って土地から背中を向けた。


 城の最上階に向かって、コレムへの最後の挨拶といろいろな手続きがある。






―――何故彼らが此処に居るのか、何故こうなったのか―――

―――それはまた、もう少し、もっと時間がさかのぼる―――

なんてことを!!

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