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僕のブレスレットの中が最強だったのですが  作者: Estella
第一章 伝説の始発点//in人間界
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にじゅういっかいめ ランク上げかな?②

 突然水晶が光った。

 いきなり部屋に転送され、何事かと思う期間すら与えられず、ルネックス達はただただ黙って驚きを心の中で咀嚼するしかなかった。


 光った水晶の中からさらに石のようなものが飛び出した。


『あたちは此処のダンジョンマスター、アーナーです。このダンジョンを通過するには、あたちという門を超えなければなりません。この門を超えても、まだまだ試練はありますよ。あたちはナビです。あたちがこのダンジョンの商品でもあるのです』


「そうなんですか!? アーナーさんに勝ったら、どうなるんですか?」


『あたちの後ろにあるドアに送り込み、そこにあるのはキングスライムの大群です……そう、貴方方が先程対決したスライムたちの量くらいですかね』


「えぇ!? キングがそんなにぃ?」


 シェリアが聞き、声が答え、そしてリンネが口をぽかんと開けて驚いた。

 キングスライムはスライムだが、物理的攻撃が大きくなり、魔術攻撃は相当レベルが高いものでないと通らない。

 その強さはスライムの次に強い鬼の魔物、子鬼ゴブリンくらいであるという。


 それが、先程対決したくらいの量。

 何百体、いや何千体と対決することになるだろう。


『そしてそれらすべてを倒し、もう一度この部屋に戻ってくることが出来たらこのダンジョンを攻略することができたことになります』


「い、意外に……凄いんですね……」


 往復しなければいけないし、何故か休憩というものがない。

 しかもキングスライムを討伐している間アーナーは休憩し続けられる。不公平だ。

 それもダンジョンマスターが設立したルールなのなら誰も口は出せない。


 ルネックスは若干顔を引きつらせながらも何とかそのルールに応じた。


『では送ります! レッツゴー!』


 詠唱もしていないのに、ルネックス達は真っ暗な部屋に送られた。

 シェリアが輪になっている場所を触ると、光が灯されて明るくなった。しかし、安堵などどこにもない。何故ならキングスライム達が眼を光らせてこちらを見ているのだから。

 その数は確かにアーナーが言った通り、何百体もあった。


「これはちょっときついかもしれませんね」


「僕でも一瞬では倒せないかな、フェンラリアは楽かもしれないけど」


「うーん、あたしはできるだけさけたいかも」


「みんなのレベル上げ目的だしぃ、まあゆっくりやってこーよぉ」


 リンネの言葉を聞いて、少々安堵した。

 これだけの戦力が此処に居るのだ、ゆっくり攻略していけばいい。


「いやぁぁぁぁあああ!!」


 ズガァァアン。

 そんな音がして、奥で身長の低い、顔は良く見えないが少女が壁に突き飛ばされ、壁には大きなクレーターが生じていた。

 対峙しているのは、ルネックス達と同じくらいの量のキングスライム。

 きっと彼女も結構な実力を持っているのだが、キングスライムの包囲には耐えられなかったのだろう。


 助けに行かなければ。

 ルネックスは前方攻撃をシェリアとカレンに任せ、自身は少女を助けに行く。


「ルネックス……人助け……好き?」


「ルネックスさんは、少しお人よしでッ! それでも助けてくれるんですッ! どんな時でも……私たちが何かあったら、飛んできてくれるんです!」


「そうなのぉ? でも確かにぃ、むやみに人を殺そうとはしないよねぇ」


「カレン、リンネ。此処に居るみんな、ルネックスに助けられた人なんだよ!」


 こうしている間も、無数のキングスライムが襲ってくる。

 シェリアは苦戦しているような様子はなく、カレンも普通のスライム相手くらいだ。

 フレアルは少々汗をかいているが、戦闘に支障はない。


 ルネックスのいいところを語っていると、いつの間にか体力が向上するのだ。


「私は鬼族で、処罰されるところを助けてくれたんです」


「私は村の拘束から、色んな手を尽くして助けられたんだよ」


「わたしを……奴隷という暗い場所から……助け出して……くれた」


「私はぁ、元のご主人のぉ束縛からぁ助け出してくれたのぉ」


「「「「最も、本人は気づいてないみたいだけどね!」」」」


 そんな四人の掛け声は攻撃になり、四つの最上級、もしかしたら精霊くらいの攻撃に及ぶのではないかという暗いの攻撃が広範囲で放たれた。




「【水弾ウォーターショット】!!」


 ルネックスの放った一撃は少女を襲おうとしていたスライムキングを一撃で殺し、更にルネックスは風で結界を張った。

 これで足止めになるかはわからないが、ルネックスは少女に駆け寄る。


「ありがとうです―――です! リーシャ、死ぬところだったです―――です」


「大丈夫だよ、僕も此処に来たんだ。良かったら一緒に戦う?」


「分かりました―――ました! 一緒に戦いましょう―――ましょう!」


 少女、改めリーシャはルネックスに尊敬の念を込めた目を向けながら、彼の願いに応じた。

 というかリーシャは既に何を言われても応じるつもりでいた。


 そしてルネックスはまた本人が気づいていないところで一人助けてしまったのだった。


「リーシャさんはそっちに、こっちは僕に任せて」


「分かりました―――ました」


 二か所に別れ、ルネックスとリーシャはスライムの大群を屠っていく。

 昔ルネックスがやっていた実戦とはレベルが下がっており、やった気がしなかった。


 しばらくして全部ぶっ倒すと、ルネックスとリーシャはシェリア達に合流する。


「こんにちは、リーシャです―――です! 助けてもらいました―――ました!」


「えっとね、さっき了承貰ったんだけど仲間になってくれるんだって」


 シェリア達も戦いを終わらせていたようだ。

 フェンラリアはちまっとルネックスのポケットの中に入っている。


 フェンラリアのことはリンネにも教えてあるし、リーシャにも今度教えるつもりだ。


 ライバルが増えた、と女子陣が嫉妬していたのはスルー。

 シェリアは思い切り壁を破壊してアーナーの居た部屋に強制的に戻った。


『へ? ちょっと早すぎませんか?』


 そこではアーナーが―――石なんだけど―――びっくりしたように体を輝かせた。

 ルネックスの後ろにいるリーシャを見て、女子陣を見て、何が起きたのか分析した。何が起こっていたのか分かったようだ。


『わかりました、約束の通りあたちを取り入れてください。えっと、ルネックスさんに力を与えますので、少々待ってくださいね』


「分かった――――っ!?」


 アーナーの体(石)が光り、ルネックスの体を包んだ。そして光がルネックスの体内に吸収されると、水晶もともに消えた。

 その水晶はダンジョンを維持するためのもので、「コア」と呼ぶ。


 それが消えてしまえば。


『ご主人様。右へお進みください、フェンラリアさんに転移させてください』


 ルネックスの脳内にアーナーの声が響き、ルネックスはシェリア達を連れて迷わずに右に向かう。なぜアーナーがフェンラリアを知っているのか、それは彼女がナビだからに他ならない。

 ダンジョンで獲得するタイプのナビは皆神級くらいに強力なものばかりなのだ。


 コアが砕け、ダンジョン全体が崩壊する。

 土で作られた軽いタイプのこのダンジョンは一瞬で崩れるためにフェンラリアを使う必要がある。


「フェンラリア! 転移して!」


「りょーかいっ! 【転移】」


「え? フェンラリア様がいるのです? ―――です? 凄いです……―――です……」


 やはり本気でルネックスのことを慕っているのだろう、リーシャの目は今までになく輝いていた。

 フェンラリアが魔力を活性化させ、詠唱をすると同時に。


 ダンジョンが崩壊し、全てが崩れ去った。

 冒険者達が果たしてこの中にまだ居たのか、それはだれにもわからない。何故ならルネックス達は寸前のところでギルドの門の前に転移したからだ。


「ちょっとフェンラリア……転移の場所が凄すぎるよ」


「てへ♪ ちょっとやりすぎちゃったかな?」


「フェンラリアはいつでもやりすぎするからもう慣れてるもんねー!」


「フェンラリア……凄い……尊敬する……」


 実はカレンがフェンラリアに昨日弟子になってくださいと頼んでいた。初めての弟子にフェンラリアは二つ返事で承諾。

 その後のカレンは確実にその腕をめきめきと上げていたのだ。


 横でリーシャが疑問符を浮かべているのでルネックスは計画の事、フェンラリアの事、今自分が付けているブレスレットの事、聖神の事、伝説の事……すべてを話した。


「凄いんですね! ―――ですね」


「えっとね、リーシャ。敬語は要らないよ、もう仲間だからね」


「分かったよ―――ったよ!」


 いろいろと個性的な人が集まったな、と思いながらもルネックスはギルドの中に入っていく。コアが消え去った時、何故かその水晶だけが消えその中にあった紫色の宝石がルネックスの手の中にあった。

 恐らくそれがコアの本体であり、その力は水晶にあったのだろう。


 とはいえ、これは攻略証明部位になるのでとても助かった。


 これが本体であることは、アーナーに問うてみたところ間違いないことが分かった。

 何でも知っている全知とはこのことか。


「こんなに早く帰って来たとは……何か発見はありましたか?」


「発見というか、ダンジョンぶっ壊して来ちゃったんですよ」


「えぇ!?」


「ダンジョンコアを回収してきました、これが証明部位って感じですね」


 待っていたかのように接してくれる受付嬢にコアを渡すと、目を丸くしてルネックス達をしばらく見つめた。

 

 後ろに居た鑑定士に鑑定してもらうと、ダンジョンコアに間違いなかったようだ。

 いつも忙しい鑑定士がたまたま此処に居合わせたこと自体がとても幸運だ。


 信じられないという顔をした受付嬢はルネックスに報酬を渡す。結構な額で、もし今宿に入っていたら半年辺り余裕で泊まれるだろう。


「えっと、たまたまそこに居たリーシャさんっていう冒険者を助けて、仲間にしてきました」


「それはリーシャさん、とっても幸運でしたね。色んな意味で」


 その意味は分からなかった。

 ルネックス達が順番にギルドカードを渡していく。


「皆様、Dランクに上がりました、なお、リーシャさんもDランクに上がりました」


「リーシャも!?」


「仲間になったということはパーティなので、一緒にランクは上がります」


 ランクが、上がった。

 ダンジョンに潜ったことそのものがランクを上げるためだったので、今ランクが上がったのはとてもうれしい。

 また暇があったら、たくさん依頼を受けてみようと思ったルネックスだった。


 Dランクでも実力がそれなりに認められた冒険者で、名誉的なものではある。


「今日はお祝いだね! カレンちょと豪華めにご飯作ってくれない?」


「ん……わたしもそうしたかった……ところだった……」


「いーなーいーなー、私も料理作れたらよかったのに!」


「リーシャ料理作れる―――れる! カレンを手伝ってもいい? ―――いい?」


「いいよ……助かる……」


 Dランク、と新しく書かれているギルドカードを握って、ルネックス達はホクホクした顔で城に帰っていく。


 しかし部屋に行く時に通るべき道である謁見の間のドアから覗いていたのは、コレムですらも顔を俯けて言葉を発することが無い重苦しい雰囲気だった。


 また何か、起こっているのか。

主人公、休みがありませんね。

一難去ってまた一難とはこのことなのでしょう、アルティディアにそんな単語ありませんが(゜-゜)


それはさておき、これから起こる事、これまでのコレムのセリフにヒントがありました。

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