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僕のブレスレットの中が最強だったのですが  作者: Estella
第一章 伝説の始発点//in人間界
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きゅうかいめ 真実は三つかな?

 あれから翌朝、ルネックスは気配消しを使って森に向かった。


 そして奥まで行ってみると、そこにはウルフの巣があった。

 どこからかルネックスやシェリアのことを聞きつけ、巣を作ったのではないかとフェンラリアは仮想を立てた。

 そしてその巣はルネックスが真顔でつぶした。




「だまってても、よくないとおもうの。あたしだまっていたことが……」


 ルネックスの小屋で、フェンラリアがそう言った。


「僕が聖神に気に入られているけれど見放されて喰われる結末になるだろうってこと?」


「うん、それともうひとつね。あのドラゴンは創造神クリエイターエンジェルをしゅじんにしているの。ほんとうはリアルっていうなまえのにんげんで……しんだあとひろわれたからドラゴンになったの」


 これはきっとルネックスの記憶分析のレベルが低くて見られなかった一部だろう。


 ルネックスのステータスは鑑定されていたため、フェンラリアは彼がこのことを一部知っていた事には驚いていない。

 シェリアは何を話しているかよくわからないため、隣で訓練をしている。


「リアルさんはね、るねっくすのおとうさんなの。あたしもついさいきんしったんだ、ディステシアさまがおしえてくれたの」


「あの人一体何者なのかな。それで、僕はお父さんと戦ったわけねー」


 ルネックスは少しだけ嬉しかった。父と戦えたことが。


「まあそういうこと。それでるねっくすにはみっつのせんたくしがあるの」


「へえ、できれば死なないのがいいな」


 もちろんルネックスが死ぬほどの事件があるとも誰も思っていないのだが。


「ひとつは聖神に喰われるか。ふたつは神界を征服して聖神よりうえになるか、伝説となって抗うか、このみっつになるね」


「伝説になる、うん。それがイチバンだと思うね」


「ぜんぶりすくはあるしねー」


 フェンラリアはしばらく考えた。


「ついでに神界もせいふくしちゃう?」


「いやだ怖い!!」


 できなくもない、とフェンラリアはそう笑った。

 一歩間違えてしまえばなんとも恐れ多い言葉を言ったのだろうか、発言者が大精霊でなければ。


「じつはね、るねっくすがでんせつだとみとめているのは精霊界と神界なの。だから聖神はちょっとこりつしちゃってるんだけどね、いつかせいふくもひつようなんだよ」


「え? なんで?」


「かこに、聖神VS全人類、全次元、全世界というむぼうなたたかいがあったの」


 フェンラリアはモニターに映像を映しながら、少し寂しそうに話した。


「けど聖神はつよくて……あたしもそのばにいたんだけど、そのひとにふういんされて。聖神がふっかつしたいま、もしかしたら第二次ラグナロク……つまりおなじようなことがおこるのはとおいことじゃないの」


「僕の力がいるってこと?」


 フェンラリアは頷いた。

 いきなり言われたその上、精霊界に認められているという事実。


 魔界、竜界、そして最近知った冥界。竜界以外は魔の地とされ、ルネックスを認めるのはまだ先になるだろう。

 かといってディステシアの約束を破り、魔界の味方をすれば心が痛い。


 そのためにも一度伝説となり、神聖の地、神界、竜界、精霊界を征服し……という過程が必要になるだろう。


「リアルは、きぞくにつれさられたんじゃない。前代大精霊さまのてしたにはいちされ、義理の息子になったものの第一次ラグナロクによってせんししてしまったんだよ」


「それで、創造神に拾われてドラゴンに?」


「まあそういうことだね。ぜんぶ正すためにも、ぼうけんしゃにならないとね」


 さっきのシリアスな雰囲気とは反面、フェンラリアは微笑んだ。


 しかしルネックスはその笑顔の中に、淋しさを感じた。


「フェンラリア、君の過去は、ないの?」


「いったじゃない、あたしはふういんされて……」


「それだけ?」


 フェンラリアは黙り込んだ。どこから話せば、分からないようだ。

 シェリアもその雰囲気から空気を読み、ルネックスの隣にちょこんと座った。


「あたしにのこされたじかんは、みじかいの。ブレスレッドそのものにのろいがかけられていて、しゅじんがきえたそのいっしゅんであたしのじゅみょうは何百年もちぢまったの」


「じゃあ! つまり!」


「あたしはもうそれほどいきられないわ。もうせんねんいきてきたんだもの。」


 本来精霊とは寿命がない。しかし呪いをかけられたらそれは別。


 こういった類の呪いはシェリアのものとは違い、不老不死といった種族の寿命を無理に下げるというタイプで、別名を「鎖呪ギアス」という。


 本来ギアスは戒と書くが、この場合は鎖呪とかく。


 この呪いを行う代償に、行った者は散っていかなければならない。そう、行った者は命を代償にする覚悟があったということだ。


「おこなったのが聖神だったばあい、だいしょうはないんだよ」


「はあ!? 何それ理不尽じゃないかっ!」


「……せかいは、りふじんにできてるんだよ」


 そう言ってフェンラリアは微笑んだものの、その目からは涙が流れた。


 そしてそれは止まることがなく。

 ルネックスはせめてその頭をなでることしかできなかった。


 フェンラリアがこんな過去を背負って、笑顔で接してきたのだと思うと、無性に胸が痛かった。


「僕が、その過去を。伝説の名に懸けてネジまげて見せる」


「できたらきっといいけれどね」


「ルネックスさんが言うと本当になりそうですがね」


 シリアスな雰囲気が少しだけ消えたのをみて、シェリアは言葉を挟み込んだ。


 その彼女の言葉によって、三人は腹を抱えて笑い、ルネックスのその能力をさんざん弄った。

 もちろん、ルネックスがそれを拒絶することはなかった。




「で、旅の準備は」


 しばらく笑って弄ったあと、太陽が落ちようとしたとき。

 ご飯は朝食べたため、習慣で昼は食べないようになっている。

 

 話続けてなんと旅の準備を忘れてしまっていたのだ!

 しかも言い出しっぺのフェンラリアが「そんなのあった?」と聞いてしまっている。


「……話し過ぎ、危険だね」


「ていうか旅って何がいるのですか」


 どこから手を付ければいいのかわからず、シェリアは首を傾げた。

 ルネックスもよくわかっていないが、本で見たことがある。


 フェンラリアに頼ろう、というのが今の一番の方法であった。


「おかね、そうび、みぶんをしょうめいできるもの。これでだいたいはたりるよ」


「本当にありがとうございます」


「感謝」


 そう言ってシェリアとルネックスは土下座をした。

 フェンラリアは特に気にした様子はなく、それを一瞥した後荷物の整理に向かった。


 金はルネックスが家にあるもののありったけを探し出し、集まったのは30クラン。


 この世界では1クランであめが一個買える金だ。

 30クランではカプラーメンという、麺を水で浸して野菜をぶち込む伝統的な家庭料理を三セット買える金だ。

 この世界で宿に泊まるには少なくとも100クラン必要だ。

 冒険者が一か月生活するには、最低でも5000クランが当たり前だ。


 なぜなら冒険者は依頼を受けたりするときに出張などもあるため、宿を取らなければならないのだ。

 そして食料費だけでもまた2000クラン以上必要になるだろう。


「しかたないなあ、あたしがだしてあげる!」


「最初からその方法を使えばよかっただろ……?」


 今更の行動にルネックスは呆れるのだった。


 そしてフェンラリアの錬金術によって7000クラン溜まり、それを麻の袋に入れて茶色のカバンの中に押し込む。

 装備についてはルネックスの短剣と、シェリアがルネックスの杖を装着した。


 フェンラリアに武器は要らない、素手で世界を滅ぼせる。


「それでねフェンラリア、この世界の基準は恐らく君の力の百分の一で大賢者になれる」


「えぇ!? よわすぎない?」


「君が強すぎるし強い人を見てき過ぎたんだよっ!!」


 この化け物屋敷に住んで居るがゆえにいつまでも人間界の基準を知らないのである。

 そしてルネックスはついに叫び出してしまう。


「つまり、あたしはひゃくぶんの一のちからをつかえばいいってこと?」


「いや千分の一でいいからね、大賢者超える必要ないからね」


「フェンラリアさん、余程のことがない限り一万分の一で大丈夫です」


 引いて、引いて、引きまくる。


 そしてついに億分の一の力だけを出すことになったのである。

 すべての属性、全てのスキル、マックスの体力、運、魔力など。そのスペックで百分の一は国相手に喧嘩売っても平気なものになってしまう。

 いけない、それはいけない、主な戦力はルネックスでよい。


 フェンラリアは全く力を出せないことに不満を漏らしていた。


「もし第二次ラグナロクが起きるのなら本気出るかもなあ」


「たたかえるっ!!!!」


「いやそれ嬉しい事じゃないからね? ちょっと心配」


戦争と言うのは、いつでも残酷で、絶望を含み、時には誰かの大切な者を殺し……きっとフェンラリアも辛い思いをしてきたもの。

 きっと彼女も遊びで言っているのだろう、本気ではない。


 ルネックスはこの情景をかみしめ、ある決心をつけた。


(僕は……この情景を変えないッ!)


 この情景を消さずに、つねに楽しく居続ける、と。そう決心したのだ。

 そのためにもすべてを征服し、失うことを避けなければならない。


 そして……。


「第二次ラグナロクは、起こらなければならない」


「ん? るねっくす、なんかいった?」


「ううん、何もない」


 小さくつぶやいたルネックスのその言葉は、誰にも届くことはなかった。

 しかし、シェリアだけは何となくその意味が分かったようで、拳を握っていた。


 ルネックスは装備を装着した後、街を出る報告をするために村長の元へ行こうとする。

 噂を聞くと丁度フレアルやロゼス達がそこにそろっているらしい。


「んじゃあ行かなきゃな」


「ルネックスさんー、ちょっとお腹が空いてしまいました」


「しぇりあ。あたしがだしてあげる」


 きっと誰かのユニークスキルであろう、食物を出すというもの。何でもありなそれに、ルネックスは苦笑いを浮かべることしかできなかった。


 カプラーメンを三つ出したフェンラリアは静かにそれを食べ始める。


「あぁ。久しぶりに暖かいもの食べた」


「あたしもそんなにだしたことないしね」


「ずっと魔物の素材を町に売りに行ってお金を稼いでいましたからね」


 特に、ウルフの巣の討伐は結構なお金を手に入れたものの、すぐにつかってしまった。


 一瞬で食べてしまったカプラーメンの器を置いて、ルネックスは小屋のドアを開ける。

 その後ろをシェリアがとてとてと付いて行く。


 なぜ村長の元へ行くか。

 当然、無断で村を出ていくと怪しまれたり捕まって檻に入れられたりするからだ。。


 その、実例もあるからだ。

村長とロゼス達むかつく。

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