歌う伝説
ここから本編開始です。
あまり出来は良くないと思いますが、できる限り一週間に一回。この時間に投稿したいと思います。
そして、十五年の年月が流れた。
夜、とある商隊が囲まれていた。
「運がなかったな。もう少しであの街にたどり着けるというのに。」
囲っているのは二百人を超える盗賊たち。
「俺たちからしても、あの街には近づきたくねえもんだ。何しろあの街にはあいつがいる。」
彼らの視線の先にはある街があった。
その盗賊たちはその街に近づくことは決してしない。
何しろその街には絶対の守護者がいる。
「ここならあいつはやってこないだろう。さあ、男は殺せ。女は攫え・・・。」
盗賊の言葉に絶望しつつある皆。
抵抗しようにも相手のほうが数の上では圧倒的である。
だが、乗り合いにいた一人の少女に手が延ばされる。
「へへ、上玉じゃねえか。」
「いや・・・・・・助けて。」
その単語に盗賊のボスらしき、男が固まる。
「まずい。そのガキの口をふさげ!!」
「へっ?」
「あいつが・・・あいつがやってくる。」
盗賊の頭は偶然、同業者から聞いたことがあった。
その街を拠点としていたあいつは、助けを求められたら、駆けつけてくると。
もっとも、その条件は助けを口にすることではない。
心の底からの救いを求める思いが必要なのだが。
そして、今晩もまたその助けを求める声に導かれ・・・。
歌が聞こえてきた。
歌詞なき歌。だが、それでもそれは歌だった。
助けを求める者には安心を。
現にその歌を聞いた馬車の者たちの表情から恐怖が消える。
外道な連中には恐れを。
現にその歌を聞いた盗賊たちの顔から血の気が引いている。
歌っている存在がどこにいるのか探す。
その歌は彼の出現の代名詞。
ただ歌をまねるだけならちょっと音楽をかじったらできるだろう。
だが、ただそれだけだ。
その歌は彼だけのもの。他人が歌ってもすぐにわかるほどに。
それだけ彼の歌は個性と素晴らしさが黄金律のようなバランスで同居していた。
決して大きくない。だが、不思議とあたり一面に響き渡る歌。
それが響き渡っていき、歌は終わる。
静かに。夜の闇に溶け込むように。
余韻が広がり、皆は息をのむ。
そして、微風が吹く。
「このあたりの盗賊は一掃したと思ったんだけど、まだいたか。」
彼はいつの間にかそこにいた。
雲に隠れていた月に照らされ、馬車の上にいたのだ。
『!!!?』
言葉を発するまで誰も彼の存在に気づかなかったのだ。
立っていたのは一人の青年。青いマントと白い羽根つきの唾の大きな青い帽子。
黒いロングブーツに同じく黒のズボン。上着は青く袖の長いコートのようなものを着ており、その上から黒い革の手袋をはめている。
そして、その顔の上半分を舞踏会で使うような黒い仮面で隠していた。
驚く彼等に向けて、夜空から飛んでくる青い鳥がいた。
それが少女を捕まえようとしていた盗賊に体当たりをかまし、吹っ飛ばす。
「・・・まさか・・・もう・・・。」
かなり優美かつ、特徴的な恰好の彼が少女の側に降り立つ。
その彼の名前は・・・。
「怪傑ブルーバード・・・。」
それがこの街の絶対の守護者の名前であった。
「よく頑張ったね。ここからはこっちに任せて。」
穏やかな声で、助けの声を上げた少女の頭をなで、安心させる。
「ぐっ、ひるむな!!相手は一人だ!!いくら伝説の怪傑とはいえ・・・これだけの数を相手に・・・。」
盗賊たちの頭はそういって檄を飛ばす。実際相手は一人。盗賊たちは二百を超える数。
圧倒的に有利なのは盗賊たち・・・。
多少の腕があっても、勝ち目のないほどの数であった。
その有利を生かすために盗賊たちは一斉に彼に襲い掛かる。逃げ場をふさぐために。
だが、盗賊たちにとって不幸だったのは相手が普通ではなかったこと。
風と共に聞こえてくるのは音叉が鳴るような音。
その音とともに彼に切りかかった十人以上の盗賊たちが一斉に吹っ飛んだ。
「・・・・・・!!?」
倒れたまま起き上がってこない吹き飛ばされた盗賊たち。
身に着けていた防具は切断されている。
だが、その下の体が全く切断されていない。
そんな不可思議な状態で倒れていた。
そして、怪傑の手には鞘に納められていく刀。
その刀は抜刀術に適した、反りがないものだ。
それを手の中に出現させた瞬間も、ましてやそれを鞘から抜き盗賊たちを斬り伏せた瞬間すらも誰も見えなかった。
見えているのはゆっくりと鞘に納めている光景だけである。
「あえて殺さない。斬れないようにしたから。でも・・・・・・。」
鞘に納めた刀を腰に構えながら彼は告げる。
「容赦するつもりもないから。」
皆は思い知った。
伝説なだけあって相手はまさに規格外だと。
目の前の彼にこの程度の数の有利不利など、全く関係ない。
正真正銘の化け物だと。
「今度はこっちから行かせてもらう。」
その宣言とともに姿を消した彼と冗談のように次々と吹き飛ばされていく仲間達を見て盗賊たちは悟った。
己の命運はここで尽きたと。
城壁の外から聞こえてきた歌に、夜にもかかわらず飛び出してくる者たちがいた。
「まさか街の外に現れるなんて。街の結界にも異常はなかったのよね?」
「はい。ですが、彼はそれを簡単に潜り抜けたということに・・・。信じられませんが・・・。」
先頭で馬を走らせているのは五人の少女。
一人はストロベリーピンクの髪を黄色のリボンでツインテールに結った少女。彼女がこの五人の先頭にいた。
「いや、あの歌が外で聞こえたということはあいつは外にいる。それは間違いないわ。だってあいつは規格外なんだもの。何をしでかしてもおかしくないと私は思っている。今回、疑問なのは極めて唐突な出現ということだけど。」
彼女―――アリレッサはその端正な顔に真剣な表情を浮かべながら断言している。
「普段なら、何かしらこちらにもメッセージを送りますからね。おかげであっちの手札に結界突破のための何かがあるのだけわかったわ。術式が気になるわね。毎回驚かされるわ。」
後ろでローブをまとった黒髪の少女がうなる。恰好はまさに魔女という格好だ。
少し眠そうな顔をしているのは寝起きだからだろうか?
彼女の名前はフレイアという。
「確かに・・・。私たちはあの方に驚かされ続けているわね。」
その隣でマリンブルーのふわふわロングヘアの少女――アルビフォルテが苦笑している。
「今度はどんな光景をみせられるのやら。」
その脳裏に浮かぶは、彼女たちの予想をことごとく上回ってきた彼の姿。
「その手段に何らかのアイテムは使っているわね。一体どんな発想で・・・。」
後ろで何やら考え込んでいるのは茶色の毛を三つ編みおさげにした小柄な少女。
「…無駄がなく、なおかつどんな状況にも対応できるあたり、作り手も使い手も超一流なのは疑いようはないわね。」
彼女―――クラリレッダはいろいろと考え込んでいる。マジックアイテム製作をライフワークにしている彼女からしたら、彼の身に着けている数々のアイテムの製作者も気になっている様子だ。
「・・・うん。匂いがするわ。こっちからよ!!」
先頭を走っているエルフが声をあげる。端正な金髪を白いリボンでポニーテールにした彼女―――シルフィエッタの感覚は確かだ。
特に夜でも目が見えるのが大きい。
「・・・これって・・・。」
彼女たちが見たのは・・・盗賊たちがあちこちで倒れている光景だった。
「・・・思ったよりも早かったか。」
その中央に彼はいた。
息一つ切らせた様子はない。
「・・・いえ、むしろ私たちからしたら歌が聞こえてきてから、もう全滅させたのって呆れるところだから。」
二百は下らない盗賊たちをすべて彼が倒したことを疑っていないアリレッサは呆れるポイントは別にあったようだ。
「剣聖クラスの剣の腕なら…と思っていたけど、呆れるわ。」
「剣聖クラスって、そこまでの腕ではないですよ?」
「どこか?謙遜はいいけど、やりすぎると嫌味よ?」
「これは参った。気を付けることにします。さすが一流の淑女は言うことが違いますね。今度デートでもいかがです?」
「・・・一流の淑女か。まさか口説かれるとは思わなかったわ。その素顔を見せてくれたら考えるけど?」
「ふふふ・・・。秘密があるからこそ面白いのです。」
怪傑ブルーバードはそう暢気に笑いながら飛び上がる。
それとともにマントを翻す。すると彼の姿が夜の闇に溶け込むようにして消えたのだ。
「待って!!あなたには聞きたいことが・・・。」
――――あとはお願いします。馬車の人たちの保護も・・・。
その言葉を残し、彼の気配はなくなった。
「相変わらず、逃げ足も速いわね。」
「光学迷彩を使ったのは間違いないか。それと一体何を使って・・・。」
「・・・・・・・検証は後にしましょう。盗賊の護送と馬車の人たちの保護を。後・・・あいつらのアジトも聞きださないと。まあ、あいつがそのアジトを放置しておくわけないから、後始末になる可能性が高そうだけど・・・どちらにしろ、結構人手がいるわね。」
「まさに大取物。これだけの数だと・・・。」
ため息が止まらないアリレッサ。
「次は捕まえる。あなたの正体を絶対に聞き出すから。」
彼女はずっとこの街の守護者を追いかけている。
「あなたが・・・私の探している人なのか・・・。」
その問いは夜風に乗ってかなたへと飛ばされていった。
検索のためにいくつかワードを入れたいと思います。
次は一週間後に投稿予定です、