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すべての始まり。

拙い作品ですがよろしくお願いします。


 二つの作品を同時に投稿し、どちらがいいのか決めて一週間ごとに投稿したいと思います。


 よろしくお願いします。

 彼―――大野木 翼は真っ白な空間で目を覚ましていた。


「ここはどこ?」


 寝ぼけた様子で彼は真っ白なその世界を見る。


「音が・・・聞こえない。いや…なにもいない・・・わけじゃないのか。誰ですか?」


 その白い世界で彼の耳に入ってきた音。それを聞き取り・・・。


――――まさか、私の存在すら聞き取るなんて。


 その言葉とともに現れるのは青い翼を持った鳥であった。


「へっ?鳥?」


その鳥は翼が知るどの鳥とも違う。しいて言うなら彼の世界の鳥の色々な部分をくっつけたような存在。


――――私は神の使い・・・とでも言っておきましょう。あらゆる鳥類の代表にして、王たる者。


 穏やかな女性の声で話す蒼の神鳥。


「まずあなたは死にました。今のあなたは魂だけの存在です。」


―――――あっ・・・。


 それだけで翼は思い出すことができたのだ。自分が死んだ瞬間を。


 彼は一人の少年を救った。


 幼いころからずっと一緒だった彼の友とともに。


 脳裏によみがえるのは流されそうになっている一人の少年。


 それを何とか助けようとして・・・。


「あの子は…助けられた?」


―――はい。助かりました。あの子は運命の子でしたから。我々の祝福を受けし古の種族。ですが、あるものに邪魔され、あっちの世界に飛ばされて困っていたのです。おかげでこの世界に連れていくことができました。あなたたちのおかげです。私はそのあなたたちの勇気に感銘を受けて私はあなたを転生させたいと思います。


 彼は命を賭して助けようとした少年が救われたことを知り、安堵する。そして次に転生という言葉を受け、驚く。


「転生?」


――――今のあなたには肉体がありません。その魂を別世界の人間に移したいと思います。場所はあなたたちの世界とは全く違う、中世ヨーロッパに近い文明レベルの世界ですね。まあ、世界の理は全く違うのですが。


 体がない。


 死んでしまったのなら当然かと本人は納得しつつ・・・。


―――――何か願いはありますか?・・・。


「友との再会。そして、あいつらの幸せかな?これをワンセットで頼む。」


 願いと聞き、真っ先に思いついたのはそれだった。


――――そこにいきますか。


「友とは違う世界でも共に居たいって約束したんだ。それと・・・うん。ずっとに一緒にいようと誓ったのに先に逝ってしまったから、せめてもの罪滅ぼし。あいつが幸せだと思う願いを叶えてほしい。どんな願いでもいいから。そして、同じことを思っているあと三人にも。願いはそれだけ。」


 彼にとってともに命を懸けるだけの価値が、その友にはあった。


 転生してもまた出会いたいほどに。


 そして、それとは違うもう一つの願いは確かな思いがあった。


 その人を愛し、思いやる気持ちが。


 そして、同じ状況になっているであろうその人の親友たちを。


「せめてもの償いになればいいけど。」


 脳裏によみがえるのは必死に自分の名を叫ぶ彼女の姿。


―――――・・・・・・。


 大切な願いを言ったあと、彼はリラックスした様子でセカンドライフを考えていた。


「あの世界で・・・そうだな。こっちは吟遊詩人として生きたいかな?あちこち旅して、おいしいもの食べ、それを歌にする。そして、みんなに聞いてもらう。ワイワイ騒ぎながらあいつらと一緒に・・・な。まあ、違う世界なのならそれなりに身を守る手段も欲しいし。おっとこれは向こうの世界で目立たない程度に自力で何とかするから別に・・・。」


 彼は旅と歌が大好きだった。歌うのは大切な趣味だし、そして彼のライフワーク。そして。彼の仕事でもあった。その稼ぎで海外旅行だってよく行った。


 友と一緒に楽しんだ日々。あんな旅を今度は異世界でできる。


 それを思うだけでワクワクしていたのだ。


 死んだことは残念だが、それならそうと、次の生を楽しみたいと心の底から思っていたのだ。


―――いえ、すべて叶えましょう。あなたに決めましたから。


 翼の望みを聞きながら青い鳥は満足そうな声をあげる。


――――あなたに私と契約をしてもらいます。


「えっ、契約?」


 望みを叶えるにはその世界で転生できるだけでいい。そのはずだったのに、力を託されようとしていた。


――――ほかの皆さんもまとめて転生させるつもりでしたし。


 青い鳥の体が光輝き、その姿を青い翼を模した紋章へと変える。


「ちょっとまって!!こっちは願っただけで、それ以外は自力で・・・。」


――――あなたの願いの対象者たち全員も力を得ます。転生者同士は惹かれ合う運命。故にあなたの望みはこの形で叶えます。


「んな無茶苦茶な!!それって余計な力まで一緒ってことじゃ・・・。」


―――持てる力はあって損はないです。


「いや、強すぎる力はトラブルの元だから!!」


 紋章は彼の体へと吸い込まれていく。


――――あなたにすべて託します。あの世界を…頼みました。世界を卵の殻としか見ていない者たちから、世界を救ってください。


「ちょっと!!こっちは平凡な吟遊詩人を目指すって言ったはずだよね!?身を守る程度の力は自力で身に着けるとも!世界を頼むってまるで・・・。」


 そこまで言って、翼のいた空間が壊れていく。


 崩壊する空間の中で彼は口にする。


―――――まるで勇者じゃ・・・。


 そして、もう一つ気づいていないことがある。


 願いは対象者全員だといったことである。


 それが何を意味しているのか今の彼は知らない。




 そして、彼が目を覚ますと・・・。


 あたり一面、炎だった。


「あ~う?」


―――――――なんで・・・こんなことに。


 赤ん坊の彼はすぐに悟った。


 望んでいた普通の吟遊詩人としての生活はこの世界にこんな形で生まれ落ちた時点で無理だと。


「う・・・しな・・・せない。」


 赤ん坊の傍に背中から血を流して倒れる一人の女性がいた。


 金糸のような長い髪に、耳が普通の人間よりも長くとがっている。


 そして、誰よりも綺麗だったのだ。


――――この人、エルフなの?いや、リアルエルフって・・・ここって本当に異世界・・・。


 声が出せない状態で、彼は場違いなことを思っていた。


「私の・・・私達の大切な子―――ヴィノンを・・・。」


 今にも死にそうなその女性。


 その女性から彼の耳に聞こえてきた音。


 それは悲痛ながらも・・・精一杯の愛情を感じさせるものだった。


「ヴィノンは絶対に死なせない・・・あの人との大切な・・・。」


 そこで彼は悟る。


 彼女こそが・・・この世界での母だと。


―――――生まれ落ちてからいきなりすぎる。その前になんで!?それに・・・この音は?


 混乱している彼。その耳に入ってくるのは不快な音であった。


「やっと見つけたぜ。悪いがお前さんを生かすわけにはいかねえんだわ。」


 一人の男がやってきたのだ。


――――なんだ・・・この男。


 赤子となった彼の耳に届くのは・・・。


―――嫌な音がする。


 不快な音。それは・・・殺気であった。


「ぐ・・・あ・・・。」


 必死に赤子の彼を抱きしめる女性。


 それを見て、男は下劣な笑みを浮かべる。その右手には緑色の焔。


「安心しな。緑炎の名の元に、そのガキともども・・・。」


 緑の焔を宿した右手をふりあげ・・・。


「あの世に送ってやる。」


 その焔を女性と赤子となった彼に向けて放ったのだ。


――――――神様・・・お願いします。あの人との間に生まれた・・・この子だけは・・・この子の命は・・・。


 己の身を盾にしてまで我が子を助けようとする女性。


――――――・・・・・・・死にたくないよな。


 それを見て彼が思ったのは単純なことだった。


―――――死なせたく・・・ないよな。まだ、この世界での母であるあなたのことを何も・・・なにも知らない。


 それは生きたい。そして、助けたい。


――――でも、まだ赤ん坊の俺に・・・なにができる?


 赤子の体。しゃべることも、自分で動くこともできない状態。


 それでも彼はそう思わずにはいられなかった。


 彼の脳裏にあるのは前世の母の姿。彼の母は彼が幼い頃に闘病の末に亡くなっている。


 ビデオレターという形で二十歳になるまでいくつも母からメッセージをもらいながら育ってきた。


 彼にとって母とは特別な存在だったのだ。


――――この際、普通なんかどうでもいい。助けたい・・・この人を助けたい!!


 この場合はその意思だけでよかった。


 守護の気持ちだけで十分だったのだ。


――――そうですか。さっそく私を具現化させるのですね。


 彼に宿った力――存在を目覚めさせるには。


――――契約を履行しましょう。さあ・・・始まりを歌いなさい。


 そして、彼のいう普通がおかしくなった瞬間でもあった。




 緑炎。それは裏の仕事をする者達にとって有名な二つ名。毒の焔という危険な炎を使う暗殺者として。


「・・・さて。この仕事は終わりか。この力もいいものだねえ。この世界で得た俺だけの力。」


 緑の炎はすべてを侵し、焼き尽くす。


 それを浴びて生きている者などいない。


 彼はそう結論づけてその場から去ろうとして・・・。


 歌が聞こえて、立ちどまった。


「んん?」


 その歌に歌詞はない。だが、緑炎はその歌が祝福しているように聞こえた。


 それは誕生。


 それは目覚め。


 それは・・・始まり。


「なんだ・・・。」


 突如、爆音が背後から聞こえ、男は振り向いた。


 振り向くと、そこには青い光の翼で守られた親子の姿。


 その翼はいつの間にか現れた巨大な青い鳥のものだった。


――――始まりの歌。


 赤子からその歌は聞こえてきた。


「まじかよ。なんだよあのガキは!!」


 巨大な青い鳥の視線が緑炎に向けられる。


「・・・っ!?」


 存在そのものの格の違いがその視線から伝わってくる。


 それはまるで蟻と大鷲のごとき違い。


「ちぃぃぃぃぃ!!」


 驚いた緑炎は再び緑色の毒の焔を放つが・・・それを打ち消すのは天井を突き破っておちてきた青い稲妻。


 まるで柱のように緑の焔を打ち消してのだ。


 それに呆然としつつ、緑炎はさらに驚くべき光景を目にしたのだ。


 赤子を守っていたエルフの女性の体を光輝く炎が覆い、血まみれの体を急速に癒していったのだ。見るからに瀕死だったはずなのにだ。


「何が起きてやがる!?どうして傷が・・・。」


 毒づく緑炎が突然の不可視の衝撃に部屋から吹っ飛ばされる。


 それは爆発だった。


「ぬごおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


 その部屋だけでなく、建物すべてを吹っ飛ばす見えない爆発になすすべもない。


 その場にいた女性と赤子たちは地面から延びた石の柱に乗っていて無事。


―――――できる限り遠くへ。母様を助けるために。


―――――ええ。わかったわ。


 夜空に向けて青い鳥は翼を羽ばたかせ、背に赤子と母親とともに空を飛ぶ。

 

「このやろ・・・。」


 倒壊した屋敷。その瓦礫をふっとばし、緑炎は飛び立つ二人を追いかけようとするが・・・。


「あ、足が!?」


 その足が地面ごと凍てついていた。足も膝下くらいまでがれきごと氷に覆われ、その場にぬい止められていたのだ。


「ちぃ、これでは追跡は無理か・・・。」


 それは緑炎の初めての暗殺失敗。


 彼の目にその青い翼はしかと焼き付けられることとなる。





 これは世界の救世主となる、予言の勇者の一人――青翼の物語。


 普通の吟遊詩人になるつもりだった彼――ヴィノンの、この世界での初めての戦いであった。





また感想などで意見をもらえたら幸いです。


どちらの作品がいいのか、または両方か。


 皆さまの反応で決めたいと思います。


 ではまた会いましょう!!

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