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弱虫
考えることを楽しむ少女と嫌う僕。
藤原さんはなぜ満月をみてこの句を呼んだのだろうか、
なぜ、そう思ったのだろうか。
これを現代風にアレンジだなんて僕には無理だ。
早いところ適当な句を詠んで、帰ろう。僕はこの少女とはうまくやっていけない。
『世の中は 生きてていいこと ないのかな お月見なんて N年してない』
蚊の鳴くような声で発言した。
考えることを嫌ってから自分の気持ちを言葉に乗せる機会が激減した僕は、
この程度の声をだすのが精いっぱいだった。
少女の表情が固まっている。
いくらなんでも、これは酷かったか。そっと帰ろう。
建付けの悪い扉をぎしぎしと音を鳴らせながら開けて扉の向こうの世界へ羽ばたこうとしたとき、背後から興味深い音が聞こえた。
「これが、、、ゎか。」
そうだった。すっかり忘れていたが僕がここに来た理由は和歌を詠みに来たわけではなく、"ゎか"の意味をただ知りたかっただけだったのだ。
こんなところで尻尾を巻いてたら本当に無駄な思考だけで終わってしまう。
すっと深呼吸をして目をつぶるとあの記憶が鮮やかに蘇った。