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疑問
彼女は僕の存在に気づいたのか、小走りで駆けていった。
根拠などはないが彼女は間違いなく「わか。」ではなく、「ゎか。」と発した。
周りには誰もいなかったからきっと油断して、ぶつぶつと言葉を発することで
自分に何かを言い聞かせていたのだろう。人は誰もいない空間にいると途端に油断する。
その油断の中で彼女はいったい何を思っていたのだろう。
不幸にも、僕が学校の生徒はめったに使用しないトイレから出てきたために、
彼女の想定外の事象が発生した。
きっと顔を真っ赤にして僕の元から逃げていったに違いない。
僕は妙にあの「ゎか。」という一言に気を取られてしまった。
記憶を遡ってみれば、彼女が着ていた制服は学校指定のものではなかった。
それは転校生か、はたまた、校則を守らないことを美徳と感じる民族か
どちらかのクラスタ属していることを意味する。
ああ、考えれば考えるほど、自分にこんな思考をさせたゎか少女への苛立ちが増すばかりなので
考えることを辞め、教室へ向かうことにした。
旧校舎を抜け、渡り廊下にさしかかるとあたり一面にキンモクセイの香りが澄んだ空気とともに広がっていた。