侍女だったのに王子に幽閉された。説明求む。
「聞いてカルラ!!今日から後宮入りしたの!」
と、興奮した顔もちでこっちに寄ってくるのは私の主人であるシャルロット様。侯爵家の一人娘であり、小さくてフワフワしていて、物凄く可愛らしい。
「そうですか、良かったですね!」
私は心から喜んだ、この国の王子様は完璧であることで有名だ、頭は聡明であり、剣を持たせれば百の軍隊でも倒せる。そして何より相当なイケメンさんであるらしくこの国の貴族で惚れていない女子はいないとされる。
「だからね、カルラ!!一緒についてきて!」
「ええ、喜んで」
私とシャルロットは結構長いあいだの付きあいだ、元々私はこの家で産まれたのだが、遊女に産ませた人間であるため、私の存在は無かったことにされている。だからシャルロット様は私の姉に当たるのだが、そんなことは知らない。
中途半端に愛情と同情をもった父により、私は侍女として、シャルロット様にお仕えしている。正直殺したいと思った事もあったが、シャルロット様がとても可愛らしく姉に当たる人だとは思えない位可愛く、とにかく可愛いので、意外と満足している。
長身で顔が男か女かよく分からない私とは似ても似つかない異母姉、こんなに可愛らしいのだから絶対に王子の目に止まるだろう、私はシャルロット様が結婚した後もお仕えして二人が幸せになるのを見届けたい。
「大丈夫かな?…」
「大丈夫ですよ、シャルロット様はとても可愛らしいです」
私はそういって励ました。この国では小さくて可愛い女の子が美徳とされている。だからきっとシャルロット様は目に留まるだろう。
王子も噂に聞く限りとても優秀な人らしい。噂で人を判断するのは愚の骨頂ではあるが、色々な人に話をきくと、時々変なことはするが基本的には良識人でとても優秀らしい
そんな王子とは素晴らしいものなんだと
そう思っていたのだが…
「何で私、こうなってんの?」
現在、私は幽閉されてます。とは言っても結構豪華な部屋であり、普通に渡される後宮の部屋より凄い、けど出ることが出来ない……何でこうなったんだ?
王子って基本的には良識ある人間だよな?
確か、シャルロット様と一緒に王宮に入って、そこで王子と顔合わせして、めっちゃ見られてる気がしたけど、女子でこの身長と男女の区別が着かない顔のせいでそう言うのはよくあったので、気にしなかった。
王子はやはり格好よかった、身長は私なんかより大きく、筋肉もしっかりとついており、男らしさがめっちゃ出ていて、この国で独裁者をしてるのも不思議ではないと思う。
貧困民を助けた話や周りの国を傘下に治める程の統治力の話もこの人ならばうなずけれる。
何より容姿がとてもいい、切れ長の瞳にツルツルの肌、優男に見えそうで見えなく、力強そうでいかにもか弱い女性を守りそうな美青年だ。
シャルロット様とお似合いじゃないか……
そんな事を思っていたのだが、シャルロット様が部屋に戻る時に私は呼び止められ、なんだろうと思い、もしかしたらさっき見すぎたのかも知れない、面倒くさいなと思いながらも部屋に残ったら・・・
幽閉されました。
「…何でこんな事に?」
いや、抵抗はめっちゃしましたよ?
最初にいきなり殴られて、めっちゃ強い力だから意識が朦朧としたけど、取り合えず殴り返して、また殴られてんで結構ガチな殴り合いになって、最終的に私が負けて意識を失って、気が付いたら豪華な部屋にいれられてた
「おい、起きたか?」
「ええ、起きましたとも」
何が王子だ、暴力男じゃないか、何がしたかったんだよアレか?王子の気紛れか?死ね
「一体ここは何ですか?」
「王妃の部屋だ」
へー…王妃の部屋…
「王妃!?」
この男、今なんて言ったんだ!?
「お前に惚れた、結婚しよう」
王子はいきなり真顔でそう言ってきた。その姿はとても甘い顔で、多分この世の美を全てかき集めたような容姿だった。
しかしながら私の答えは決まっている。
「やです」
当たり前だ、何が悲しくて王妃にならんにゃいかないんですか?本当にいやです。
「お前じゃ一生出来ない暮らしが出来るぞ?」
「一生したい暮らしがあるのでいいです」
シャルロット様の幸せを見届ける、あんなに優しくしてくれて、あんなに可愛いシャルロット様を悲しませるわけには行かない。だって余りにも可愛いのだから。
「王妃になれるなんて滅多にないぞ?」
滅多に…どころか一生ないですね。しかもこんなに美形な人となんて。でもですねー…
「だから?って話ですね」
「お前、人が結婚してやるって言ってんだから素直に頷け!」
「人がいやがってんだから、素直にひいてください」
そしてシャルロット様と結婚しなさい。そしてシャルロット様との間に生まれた子供を私に見せなさい。絶対に可愛がってやる。
「大体、何で私ですか?私は身分が違いますよ?」
「んなもん俺がどうにか出来る」
自信満々にいい出す王子…この男、どうする気なんだ…
「アレンだ、俺の名前は」
「……知ってますよ」
「なんだ今の間は?」
「別に…」
すみません、色々と衝撃的で一瞬わかりませんでした。
と言うか、本当に何なんだこの王子!?何でこんな事になってるんだよ!!あ、そうだいい事考えた!!
「実は私、子供が出来ません」
これならばどうだろうか?妻の役目は跡継ぎを生む事。いや、私は超健康体でこの間医者から「頑張れば12.3人は産めますよ」って言われたが…。
さぁどうするんだ?王子様……
「他の女に作らせてお前が生んだことにしたらいいだろう」
こいつ嫌い、考えが酷い。
「だいたい!どこがいいんですが!?私なんて身長がデカくて剣振り回して学問頑張り過ぎてドン引かれる女ですよ!?」
自分で言って悲しくなってしまった。しかしながらコレは事実なのである、この国の女としての美徳は小さくて可愛くて教養はあるが、賢しくは無い弱弱しくて儚い女の子だ。
そして私は女性としての美徳から大きく外れている。
勿論、軍人や兵士の中には女性がいるし、実力があれば男女関係なく出世しているので、その面での男尊女卑はないが、それは教養がなく、その道でしか活躍できない女を意味する。
そして私は悲しいながらそちら側の女性だ。いや、ちゃんと教養はある。シャルロット様の侍女だからよく付き添ったり、侍女としての教養はある。
だがしかし…
「私は男みたいだと言われるんですよ…」
「それはいやなのか?」
「いえ別に」
別にそれを悲観する訳ではない。この国が他の国より優れているのは、影で実力主義が徹底しているからだ。
実力があれば年齢や性別に家柄とかは何も関係なしになっている。医者や研究者や国の軍人が優れているのもそのお陰だ。
「しかし、王族の結婚は<世間体>です。ハッキリいいましょう…見た目なんですよ。小さくて可愛い女の子を民衆は望んでいるんです。」
そう、シャルロット様のように。
しかしアレン王子は鼻で笑うと
「好きな奴と結婚して何が悪いんだ?俺は自分の好きな女と結婚したいんだ」
そう言い終わった後、アレン王子に襲われ幽閉され子供が出来るまで行為をされた。抵抗しまくったが無理であった。腕っ節には自信があったが、王子にはとても敵わなかった。
そのまま何年も幽閉され、何度か脱走しまくったがその度にアレン王子に連れ戻された。
終いには、事実を大きく捻じ曲げたれ、侍女から王妃へ成り上がったシンデレラストーリーとして世に出て有名になるのは・・・少し後のはなし
結局は最終的に一途な王子の思いに絆されてしまった私の負けなのである。
ちょっとした、息抜きで書きました!!
いやー・・結構難しいですよね