第一章夜明けまでのカウントダウン
戦争。
それは、人類が辿ってきた歴史の中において最も
残酷なものである。
血が血を洗い、またそれをぬぐい取るために、同じことを繰り返す。
おかしなものである。
地球上のどの生物においても知能は他の追随を許さないというのにまったく学習しようとしないのだから。
『第三次世界対戦』
あの日から始まったその戦争は30年経った今でもなお終わることなく続いている。
現在の地球人口はおよそ12億。
人口爆発と言われていた時代がうそのように人類は人口低下の一途を辿っていた。
西暦3030年、一月四日
ーエベレスト山ー
PM 9:30
「こちらアクセスポイント2006 、B班」
通信機を手にし、男はクイとあごで五人の男たちを
左右に展開させる。
「敵の姿は一向に確認できない。一体、どうなっている?」
「今、データを再計算中だ。……出たぞ、そこから
20m先にテントがあるはずだ。そこが奴らのアジトだ。気を付けろ、あちらもプロだからな」
「了解」
電源を切り、隊列を組む。
「聴いていた通りだ、皆準備は良いな?」
「OK、ブラザー」
口八丁という言葉が似合うこの男は、
ルマノ・へルター
「心配ない」
スナイパーの
ブラッド・アレス
「任せな」
軽い感じの
シュバーク・ノモル
「はい」
16歳にして陸軍少佐にもなったことがある
タンバ・ファロ
「ああ」
中国人の
リュウ・フォンラン
歩を先へ先へと進める。
彼らの組織はイギリスのとある中心街にある。
世界が通信網を失い堕落した中で正義の心を決して
失わず闘志を燃やした者たちによって構成された。
彼らは犯罪者一味の実働部隊を倒しに来たのだ。
「いたぞ、あそこだ」
ブラッドがテントをみつける。
「うむ、間違いないな」
隊長ネープ・エーバーは頷いた。
「コートの帽子で顔がよく見えないな」
「大丈夫ですよ、シュバークさん」
タンバが銃を笑顔でわたす。
「……たまに恐いぞお前」
「……」
「……」
風に遮られ何を話しているのか分からない。
「オレに任せな、ブラザー」
親指を立ててルマノが言う。
「コミュニケーションでいく!」
バン
足下に撃ち込まれるルマノ。
「ヒィィ、シャレになってないぜ、ブラザー」
「くそっ、あのバカ。タンバ、グレネードだ」
「ラジャー」
カチ
ピンを外し、グレネードを投げる。
バァン。
「よーし、行くぞ!」
「おらっ」
シュバークの撃った弾が命中する。
「ヘッドショット!」
「頭を下げろ、ルマノ!」
ネープの声が周りに散漫する。
「うわっと」
後方にいたリュウから通信が入る。
「3時の方向に敵部隊あり、規模はおよそ一個小隊だ」
「どこの部隊だ」
「分からん」
メンバーに不安の表情が浮かぶ。
このままではまずいと、洞穴へ向かうふりをする。
敵の悲鳴が聞こえる。
ガス爆弾である。
「ターゲット、死亡」
「任務完了です」
コートの帽子を取る。
「!?、東洋人だと」
他も全て東洋人だった。
「この顔立ちは日本人だな。どういうことだ、
南アフリカの外人部隊じゃなかったのか?」
「………何が起こっている」
テントを調べていたルマノがみんなを呼ぶ。
「どうした?」
「大変だぜ、ブラザー」
テントの中にある机の上には×印の書かれた地図と
デジタル表示のリモコン装置、そしてJという文字が刻まれた金バッジがあった。
「j,JAPAN か」
この時も日本はアメリカの仲間だった。
ヴゥーヴゥー
通信が入る。
「こちら、B班、どうぞ」
「こちら、本部、作戦は?」
「完了だ、しかしひとつ問題があった。ー引いちまった」
ネープは物品をもう一度見る。
「………戦争の引き金だよ」
第二章に続く。