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第20話 正体のわからぬ敵 6

「すごいな……」


 ミルディンが持っていたカゴや布袋だけでは足らず、ランスロットも幾つか持ち合わせていた布の袋数枚を出して、ようやく採った草を種類やら効能別やらに分けて、皆で持つことが出来た。

 ハヤト一人では抱えきれないだけの量が、それらの袋やらかごには収められている。


『で、ハヤト。

 これだけ薬草を採ったとしても、これはすぐには薬として使用出来るものと、煮出して使うものや、天日に干して使うものなど色々あるんですよ。

 旅の間でどうするつもりなんです?』


「……考えてなかった……」


 ランスロットに教えられていて、ハヤトにもそれなりの薬草などに対する知識は存在いている。

 採ってそのまま使える草もあれば、ランスロットが呆れながらも口にしたように、色々と加工して使う薬草もある。

 これだけ採れたとしても。 

 そんな加工することに時間を割いていたら、出発はますます遅れるだけである。


「いいじゃん、しばらくここにいれば?

 それにあんたたち、誰かに追われてるんだろ?」


 ミルディンが何気なく発した言葉に、ハヤトたちが驚いてミルディンへと一斉に視線を集中させた。


「長老様が言ってたぜ。

 ここで慌てて動いても仕方ねぇだろうって。

 それに俺たちの村は精霊に護られているから、あんたたちを追いかけている連中も見つけることが出来ない。

 少し時間を置いて、やり過ごした方がいいと思うぜ……俺は」


 笑いながら会話を続けるミルディンに、ハヤトは緊張をしながらもどこかそういう気持ちになってきている自分がいることにも気がつき、驚いていた。


『ミルディン。

 ここは精霊に護られていると言っていたが、相手が化物のような魔物でも大丈夫だというのか?

 私たちを追ってきている者たちは人ではない。

 私たちが村に滞在する時間が長ければ長いほど、君たちにかける迷惑ははかり知れなくなる。

 申し出はありがたいが……』


 そう言ったのはランスロットだった。


 ランスロットが[クー・シー]の名前こそ出さないが、ミルディンに自分たちが危険な存在に追われることを伝えていた。


「んなこと、長老様と精霊にはお見通しだぜ。

 俺の自慢の鼻にも、この辺にそんな魔物の匂いがしてる。

 それはあんたたちが連れてきていることもな……。

 俺たちだってあんたたちがそんな迷惑な客なら、こうしてかくまったりしねぇよ」


「だったら……どうしてこの村に迎えてくれたんだ?」


 ハヤトの問いに、ミルディンはにこりと笑う。


「精霊があんたたちを気に入っている。

 だから俺たちもあんたたちが気に入って村に迎えただけだ。

 それ以上の意味はない」


 あまりに簡潔な答え。


 ハヤトはその潔さに拍子抜けしてしまった。


「何、まぬけな顔をしているんだよ、ハヤト。

 別にそれ以上俺も言いようがないんだから。素直に受け取ればいいと思うぜ」


 にこにこと愛想の良い笑いを浮かべているが、一体ミルディンはどこまで知って、こんな話をしているのだろう。


 ハヤトはそんな疑問に思い当たったが、ここでこれ以上言い合っても仕方がない。


「一度村に帰ろうか……」


 と、ミルディンに話した。


「そうそう。それでいいんだよ」


 ミルディンはそう答えて――笑った。



◆◆◆



 村ではハヤトたちのテントの前で長老――プーカがハヤトたちを待っていた。


 その側にはリアンとディルもいる。


「ずいぶんと遅かったじゃないか」


 ディルが、皆が抱えた薬草が詰まった袋や、草が山盛りになっているカゴを見て苦笑いをしていた。


「……薬草採りに夢中になってしまった。

 このミルディンがとても詳しいから……つい、こんなに……」


 ハヤトがディルとリアンに「ごめん」と言い訳ついでに謝った。


「いいよ。

 僕たちも長老と話をして、もう少しここに留まるように言われたことを、ハヤトたちに伝えたかったんだ……」


 リアンの話、ハヤトたちは互いの顔を見合わせた。


「その様子なら、話はミルディンから聞いておるようじゃな。

 今、村の外に出てはまたその[闇の生き物]たちに追われることになるじゃろう。

 だがここに居れば、その生き物たちをやり過ごすことが出来る。

 それまで辛抱して待つことじゃな……」


 プーカがそんな話をハヤトたちにも伝えた。


「……でも、それでは村に迷惑が……」


 ルゥが言いかけると、プーカは突然笑い声をあげ。ルゥを驚かせた。


「迷惑じゃったら、村には迎え入れなんだ。

 それぐらいのことは精霊の力を借りれば造作もない。

 あんたらは、精霊に認められておるのじゃ。

 安心して何日でもここにおるとよかろう……」


「……ありがとうございます……」


 プーカにはそうは言ったが……。

 

 正直ハヤトには判断のつかないことだ。


 否。出来ればすぐにでもこの村を立って、ディルの仲間たちと合流を果たしたい。


 ここは辺境とはいえ、まだ[アヴァロン]の国内にあたる。


 しかし正体のわからない敵に追われ、再度襲われることも十分に有り得るのだ。


 さきほどミルディンがハヤトたちに話した、敵をやり過ごすことも策のひとつではあるのだろうが……。


 ハヤトは小さなため息を吐き出して――これからのことを思い悩んでいた。


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