表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/24

第13話 復讐を誓う少年 1

 ルゥが思わず起き上がった。


「二ヶ月前に……このアヴァロン国に滅ぼされた国さ。

 「イ・ブラセル」の王オインガスは俺の祖父だ。

 俺がランスロットと国を留守にしていた間に、攻め込まれたんだ。

 あっという間だったらしい。

 母なる女神「ダヌ」が降り立った聖なる場所である「イ・ブラセル」は血で汚してはいけない「聖地」だったはずなんだ。

 それをドウンは自分の母親エーレのための保養地として欲しがったんだ。

 俺の祖父も仲間も……皆殺して。

 エーレは平気で……血で汚した城に住み続けている。

 俺は必ずお爺様と仲間たちの仇を討つ。

 ドウンの次はエーレ。この二人は必ずその血で罪を償わせる。

 ドウンの血筋の連中は関係ない。俺が殺したいのはこの二人だ。

 そしてこいつらは、俺の父さんと母さんも殺したかもしれないんだ……」


「ハヤトは……「イ・ブラセル」の王子だったのか……」


「もうそんな国は、この世界にはない……」


 驚くルゥに、ハヤトは悲しそうに呟いた。


「ごめん……そんなつもりじゃ」


「いいんだ。いつかは話さないといけないことだ。

 それが今だっただけだからな。

 ルゥは色々話してくれた。俺だけ話さないなんて、それは不公平じゃないか」


 ルゥは、笑うハヤトに苦笑いを作り――見つめた。


「ハヤトは……復讐なんて似合わない。真面目すぎる……」


「それはお互い様だ。俺はルゥ程、融通がきかない頑固者じゃない」


「ちょっと待て。それじゃまるで、僕が「石頭」のような言い方じゃないか」


「……そうなるかな」


「ひどいな、君はっ!! 僕の……いや……いいや」


 ルゥがそこまで反論しかけて、口を閉ざしてしまう。


 ハヤトも気がつき、改めて頬を赤らめた。


「そ、それは本当にごめん。謝るよ。

 それに君たちには命を助けてもらってる。

 俺は「誓い(ゲッシュ)」は嫌いだが……それでも君たちとの約束は命をかけて守る。

 これが俺の「誓い(ゲッシュ)」だ」


「……それは僕の方だ。引き受けてくれてありがとう。

 君の命は僕が護るから……それは僕から君への「誓い(ゲッシュ)」だ」


「いいよ。自分のことは自分で護れる。

 もうあんなヘマはしないから……約束するよ」


「どうだかな。僕らは仲間になったんだ。

 皆で助け合うのだって大事だろう? 」


「……違いない」


 ハヤトは思う。本当に不思議なことだ。


 こうして仲間がいるなんて。


 そして自分は――別の自分になろうとしているのだから。


 でもハヤトには譲れない思いがある。その「思い」のためになら、どんなこともすると誓ったのだから。



◆◆◆




『ハヤトぉっ!! 』


 ランスロットの声が聞こえた。


「ルゥぅ――っ!! 」


 これはディルの声。


「二人共無事かっ!? 返事をしてくれっ!! 」


 リアンの声も聞こえてきた。


「皆来てくれたんだ……」


 ルゥの声に――嬉しさからくる高揚感が感じられる。


「たぶんランスロの魔法で、崖を直接降りたんだ。

 後で怒られるな……」


 ハヤトも嬉しそうだが、どこか複雑そうにもしている。


「皆ぁぁっ!! 僕たちはここにいるっ!! ハヤトも僕も無事だっ!! 」

 

 あれだけ疲れていたルゥはそんなことを感じさせない、元気な声で、ディルたちに答えた。




◆◆◆




 大変な一夜になってしまった。


 だが罠の可能性が強い以上、こんな森に長居することは危険以外何者でもない。


 

 皆はそれぞれに疲れていたが、夜は交代で皆が仮眠を取り。


 日が昇るとすぐに出発をした。


 信じられないほどハヤトが体力を回復させたので、そのまま皆で歩いて「カエールの村」へと向かった。


 


 昼過ぎに、ようやく目的の村が見えてきた。


 グルシー山脈はすぐ目の前に迫り――雄大な姿をハヤトたちに晒している。




 その麓に「カエールの村」があった。


 村人は皆、肌が浅黒い。そして髪は黒く、背は小柄な者が多かった。




「そんな者たちは来ていないっ!? 」


 ディルが村人たちから、ここで仲間たちと合流する予定になっていたことを告げると、誰もそんな者たちは来ていないし、そんなことは知らないと言われてしまった。


「一体どうなっているんだ……? 」


 リアンがディルに問うた。


「嵌められた……ということか。それとも……」


『とにかく、しばしこの村で休ませてもらいましょう。

 ルゥの体力も回復しきっているわけではないのですから……』


 悩んでいるディルに、ランスロットがそんな言葉をかける。


「そうだな……出来るかどうか聞いてみよう……」


 ディルが村人に、自分たちがこの村に留まることが出来るか尋ねると。


 しばらく待たされた後、ハヤトたちはこの村の長老の家へと案内されたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ