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夢の中の彼女  作者: ぐみ
3/4

続き所望されたので頑張ります

でもネタ思いつかないのであと数話で終わる気がします

 それからさらに数日経ったある日。

 俺はいよいよもって危険な状態になっていた。

 あの日以来、毎日夢に出てくる彼女。

 毎回毎回毎回毎回繰り広げられる、甘い思い出話。喧嘩。

 そして訪れる、目覚めた時のどうしようもない罪悪感と嫌悪感。

 食べては吐くを繰り返すだけの食事。

 夢の中の彼女と、喧嘩をするのが嫌で嫌で仕方がなく、日に日に減っていく睡眠時間。

 痩せこけていく頬。会社はもう行けるような状態じゃあない。

 俺は精神科に診てもらう事にした。

 

 病院へ行くのにも一苦労だった。

 満足に食事も睡眠も取れない俺の体力は、目に見えて低下していた。

 立てば膝が笑う。歩けば数歩で息が切れる。

 朝、病院へ行くため身だしなみを整えようと、洗面台の鏡へ向かった俺が見たのは、元気だったあの頃よりも、一回りも二回りも小さく見える俺の体だった。

 体中の筋肉は削げ落ち、もはや骨と皮だけかのようなありさまだった。

 しかし、行動しない限りなにも変わらない。

 それどころか、このままでは死んでしまうかもしれない。

 俺はふら付く足並みで病院へと向かった。


 病院に着いた俺が、まずはじめに思ったのは、今の俺の姿って精神病院にぴったりだよな、という事だった。

 こんなくだらない事でにやついてしまった俺は、相当おかしくなってしまっているらしい。

 いや、ひょっとしたら嘲笑だったのかもしれないが。


 受付の人も、俺のような異常な見た目の人間に慣れているのか、特に驚いたような表情を見せずに、淡々と仕事をこなす。


「ではこの番号札をもってお待ちください」


 という受付の人の声とともに差し出された札を受け取り、近場の椅子に腰かける俺。

 翌日筋肉痛間違いない、と思えるほどの疲労感だった。


 しばらくすると俺の番号が呼ばれた。

 重たい体に鞭打ちなんとか診察室まで歩く。


「こんにちは。今日はどうしましたか?」


 入るなり気のよさそうな先生が、妙に明るい笑みを浮かべ話しかけてきた。


「えと・・・笑わないで聞いていただけますか」


「もちろんですとも」


 そして俺は話した。

 あの日から今まで、5年前に死んだはずの彼女が、毎晩夢の中に現れること。

 最初は甘い思い出の欠片が再生されるだけ。

 でも後半になると、必ず喧嘩になってしまう。

 そのせいで食事も喉を通らない。睡眠もまともに取れない。

 余すとこなく話した。

 この時分かったのだが、俺はこの事を誰かに聞いてほしくて仕方がなかったらしい。

 俺の一人語りは20分程にも及んだ。


 その後はお医者様と、所謂カウンセリングとやらを受けた。


「今後もその夢を見続けるようだったらまた来てね」


 という言葉と、よくわからないお薬の数々をいただき、今日はいったん家に帰ることになった。



 それから約1カ月。

 彼女は、まだ、夢の中から、去ることはなかった。

 あれ以来幾度となく精神科には通ったが一向に回復の目処は立たない。

 いつしか病院へ通う事もしなくなった。


 そんなある日。


 いつものように夢におびえつつ、眠りについた。

 そしていつものように夢を見た。

 当たり前のように彼女が現れる。

 しかし夢の中の俺は、そのことについて、まったく異常だという考えを持たない。

 夢とはそういうものだ。


 その日の夢は俺の家での出来事だった。

 いつものように甘い甘い思い出の欠片が、心の奥底に食い込む。

 かと思いきや、今回は勝手が違った。


 俺たちは初めから喧嘩腰だった。


「どうしてお前はいつもいつもっ!!!」


 俺はぶちぎれていた。

 どうしてこんなに怒っているのか、自分でもわからなかったが、いくら怒鳴っても心に沈むモヤモヤが晴れることはなかった。

 俺が切れている間、彼女はというと小さく縮こまり、目に涙を浮かべ俯いていた。

 夢の中の俺ですら、若干の罪悪感を感じずにはいられなかったが、それでも俺の怒りが収まる事はなかった。


 そうしてひとしきり怒鳴り散らした俺は、今にも泣き出してしまいそうな彼女を前に、冷たい沈黙を投げかけた。


 一体何分経ったのか。


 しばらく彼女の、切なく苦しい表情を見つめるだけだった状況に、動きが生じた。


「ねぇ、――くん・・・私がいなくなったら寂しい?」


 あまりにもいきなり過ぎるこの質問に、俺は何も答えることはできなかった。


「ねぇ、寂しい?」


 もう一度、噛み締めるように、期待と不安が入り混じったような声で、尋ねる。


「な、なんなんだよいきなり。」


 思わず俺は質問に質問で返してしまった。


「――くん・・・私が急に、突然、何の前触れもなく、ふっといなくなっちゃったら、寂しい?」


 それでもなお、彼女は同じ質問をぶつけてくる。


「そ、そりゃあまぁ・・・寂しいけどさ」


 さすがに少し落ち着きを取り戻した俺は、そう答えを返した。


「そっか・・・ありがと」


 そう言うと、彼女は、嬉しそうにも、悲しそうにも、あるいはもっと別の何かを秘めているようにも見える、不思議な笑みを浮かべ、そして消えた。



 朝、目を覚ました俺は何が何だかわからなかった。


 あの夢はなんだ?

 いつもと展開が違う。

 なにかあったのか?


 様々な思いが、俺の頭の中を高速で駆け巡る。


 そして、俺の中に芽生えた新たな疑問。

 この夢は、本当に、ただの、夢なのか?

頑張りました。

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