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決選のワールウィンド  作者: D.N.Tおじ


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5/10

第五話「家柄だけの小娘でしたわね」

 国王夫妻との面会後、ティエスとジルは別館の講義室へと向かって移動していた。


 本館から抜けた、屋外の渡り廊下に差し掛かる。

 室内の照明に慣れた瞳に、青空の光が眩しく差し込んだ。


 ━━いい天気だな。


 中庭からは小鳥の囀りが聞こえ、花々がそよ風に揺れている。

 ティエスは、軽く伸びをしてから渡り廊下を歩き始めた。


「ごきげんよう。ワールウィンド公爵令嬢様」


 あくびを噛み殺しているティエスの肩に、明朗な女性の声が投げかけられた。


 ティエスは振り向いた。


 中庭の一角に置かれた、円形のガーデンテーブル。卓上には三段のケーキスタンドが据えられ、焼き菓子が小さく塔を作っている。

 三つの椅子に、三人の令嬢たち。


 一人が立ち上がり、こちらの方へと歩み出た。


「良き時にお会いいたしました。焼き菓子が少々、多すぎて困っていたところでしたの。是非、お茶会にご同席してくださらないかしら」


 令嬢は小首を傾げ、揃えた指先で口元を隠した。


 綿毛のように柔らかな白髪を、ふんわりと縦に巻いている。

 蜂蜜色の瞳が甘く輝く。

 年の頃はティエスよりも下、トーリと同じくらいと見える。背丈はティエスよりも頭ひとつ分低かった。


「誰?」


 ティエスはジルに視線を向けた。


「さぁ。知りません」


 ジルは答えた。

 令嬢の片眉が少し動いた。


「カマッセ侯爵家の者とお見受けしますが」


 ジルは、令嬢の纏う家紋に視線をやる。


「お嬢様は先約があります。しかるべき段取りをふまえてもらえますか」


 ジルはまっすぐに令嬢を見据えた。

 令嬢は視線を受け止めて、逸らした。


「これは大変な失礼をしてしまいましたわ。(わたくし)ったら、噂の公爵令嬢様をお見かけして、つい舞い上がってしまいました」


 令嬢は、半歩下がってカーテシーの礼をとった。


「カマッセ侯爵家が娘。マルケーヌ・カマッセと申します。以後、お見知りおきくださいませ」


 ジルは無視した。

 構わず先に進もうとするジルを見て、ティエスは、


「私はティエス」


 片手をあげて名乗ると、ジルの後に続いて歩き出した。


 マルケーヌは顔を伏せたまま、カーテシーを続けた。

 ティエスとジルの後ろ姿が完全に見えなくなった頃。

 マルケーヌは顔を上げた。蜂蜜色の瞳が、強気に光を放っていた。


・・・・・・


 ティエスは、先導するジルの背中を眺めながらぼやいた。


「王宮のやつってさぁ。みんな、ああなの?」


「ああ、とは?」


「やたらお茶飲みたがる。好きでもない、嫌いな相手にわざわざ笑顔で声をかける」


 ━━悪意が隠せてないっつーの。


 ティエスはため息を吐いた。


「今から会う、ローデット・マイエル夫人ですが」


 ジルは、ティエスに振り向いた。


「彼女の話はちゃんと聞くように。後が面倒です」


「えぇ……?」


 ティエスは再びため息を吐いた。

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