第四十三話 勇ましい背中
大きな爆発音。突然に消えた笑い声。いつもならすぐ見つかるはずの背中がない。胸がざわついた。鼓動が早い。
―――まさか
砂埃が舞っているところへ走った。すぐそこなのに何故か遠く感じる。
『翔!待て!』
竜也さんの声が聞こえた気がしたが、そんなものはどうでも良かった。
『勇さん!』
地面がえぐれているところに人が数名倒れていた。そこにうつ伏せに横たわる背中がある。俺はこの背中を知っている。
『翔…来んじゃねぇ…』
僅かに息をしている。胸の鼓動が少し落ち着いた。急いで勇さんを起こす。
『また意地張ってんですか。今回はそうも言ってられな…』
すると、一瞬勇さんと目が合い、腹を思い切り蹴られ数メートル飛ばされた。その瞬間、また爆発音がした。何回か続いて。今回はしっかりと目に見えた。地面が爆破し、土が吹き飛び、周囲に舞う。目を細めるとそこに赤い血が混じっていた。
『翔!』
『なんで…そんな…』
『翔!落ち着け!お前ら!地雷がある!これ以上進むな!』
『勇さん…』
『おい!翔!』
『竜也隊長、翔さん!なにか来る!』
湊の声と同時に銃声が鳴った。それと同時に誰かに地面に押し倒された。だが、どこも痛くはない。体が少し重かった。
―――重い?
見ると、竜也さんが俺の上に倒れていた。
『竜也さん…!』
『二人とも!中入って!』
舞子さんの言葉を聞くと同時に体が動いていた。竜也さんを引きづり、近くの穴へ入る。同時にまた何発か銃声が聞こえた。舞子さんたちが銃を撃つが、明らかにこちらが不利だ。
『翔…平気か…?』
『竜也さんごめんなさい…俺が…』
腕と背中から血が出ている。致命傷では無いが、これでは戦えない。
『お前まで殺してたまるかよ…』
視界が歪む。
―――今じゃない
ぐっと堪え、状況を整理した。敵との間には地雷。味方は穴の中にちりじり。何人生きてるかはわからない。銃でのみの戦闘。暗くて良くは見えないが、うっすら敵が見える。その奥に通路らしきところも見えた。
『竜也!死んでないでしょうね!』
『はは…まだ死ねねぇよ。あと、朗報だ。』
『朗報?』
『やっと来やがった。あいつらが…』
『ごめん。お待たせ。』
『全員生きてっか?』
最強の救世主。暗く冷たい空間に異様にその声が馴染んだ。




