第三十六話 畏怖
あれから半月経った。俺は毎日訓練をし、明後日には第1部隊としてまた任務へ行く。陽と蒼は怪我が治ってないから留守番だ。
「おはよう、陽。」
「おはよう!」
松葉杖をつきながら陽が元気よく言った。陽は予定よりも早く治っていき、あと半月もあれば治るらしい。
「蒼起きてるかな?」
「とりあえず呼んでみようぜ!」
陽がドアを叩き、呼ぶと蒼が起きてきた。
「おはよう、二人とも」
「おはよう!朝ごはん食えるか?」
「うん…ちょっと待ってね」
蒼の顔は最近さらに青白くなっている。陽が救護室で先生と話していたのを密かに思い出した。
「蒼大丈夫かな?」
陽が小さな声で俺に言った。俺が何も言い返せないでいると、蒼が出てきた。
「お待たせ!行こう」
俺達には蒼が無理をしているようにしか見えない。でも、かと言ってなにか出来るわけではない。どれだけ強くなって生きて帰ってきても、越えられない壁がある。
―――無力だな…
食堂に着くと、勇さんといつも勇さんの隣にいる人がいた。
「よぉ、元気か?お前ら。」
勇さんの勢いがいつもより小さい気がする。
「おはようございます!元気ですよ!」
「勇さんはいつもより覇気がないですね。」
「そんなことはない!」
「昨日任務だったんだ。勇さん、意地はらないでいいですよ。」
勇さんが隣の人の言葉に少し顔をしかめる。
「そういえば…お名前、聞いたことない…ですよね?」
「こいつは翔。第3の副隊長だ!優秀なやつだから、仲良くしてやってくれ!」
「その『優秀』っていうのやめてもらっていいですか?」
翔さんは声は怒っていたが眉が少し下がっていた。
「今回は湊だけで行くらしいな!」
「はい。二人が来れないので…」
―――不安だ
「竜也もいるし、大丈夫だろう!頑張れよ!」
「俺も健闘を祈ってるよ」
そういうと勇さんと翔さんは行ってしまった。俺たちは食事をとり始めた。
「心配だな」
「うん…」
陽と蒼が俺を見て言った。俺は半場無理矢理言う。
「大丈夫。二人を置いていったりしないよ。」
食事を終えると、3人で訓練場に来た。俺が師匠と訓練してるのを二人は見ていてくれる。師匠によると見取り稽古らしい。
「もっと心拍数を上げろ。」
最近師匠はそればかり言う。言われる度に身体が熱くなる。
―――怖い
剣を振る度にあの感覚が喉元までせり上がってくる気がする。師匠はそれに気づいているんだと思う。
「湊、あれを制御できるようになるかどうかであいつらを生かせるかも変わるんだ。」
「生かせる…」
―――でも、蒼は…
「頑張れ湊!お前ならできる!」
「がんばれー!」
陽と蒼が少し離れたところから叫んだ。
―――そうだ、少しでも長く…それに陽だけでも…
俺は剣を強く握りしめた。手の震えを誤魔化すように。




