第三十四話 必殺奥義
「結構被害、大きかったわね」
久々に会った伊代が心配そうに話しかけてきた。
「ほんとにね。竜也がスピーカーで『撤退だ!』って叫ぶから何事かと思ったら、みんなボロボロで出てきたんだもの!すっごいびっくりした。」
「建物が複雑だったんでしょ?」
「らしいわね。それに途中で人も増えたって…でも地上には人なんて来なかったんだけど…」
「それを解明しないと次も危ういわね。」
「そうね…」
二人で話しながら廊下を歩いていると、訓練場から竜也と龍の声が聞こえた。
「…っ!おい!お前がそんな思っきしやったら折れるだろ!手加減しろ!」
「手加減したら…意味ねぇだろう…がっ」
龍が激しく竜也に向かっていく。
「あいつら元気ねぇ」
「竜兄怪我してなかった?」
伊代と龍は竜也のことを昔から竜兄と呼んでいる。私のことは舞子姉さん。最初、竜也に言われたのか姐さんって言い始めたときは竜也を呼び出した。
「こうなったら…くらえ!俺の必殺奥義!打ち付けるメロディーーーーー!」
竜也が棒をギターのようにもちエアギターをし始める。
「ぐっ!なんだとっ!こうなったら…」
バキッという音とともに龍が棒を真っ二つに折った。
「轟け!俺の鼓動!音の躍進!」
龍がドラムを叩くフリをする 。いつの間にか訓練場がライブ会場みたいになっていた。
「ぐあっ!貴様…なかなかやるな…」
「あいつら…!」
私は二人に向かっていき、頭をはたいた。
「痛ってぇ!」
「何してんの!このバカコンビがっ!真面目に練習しろ!」
「舞子!?何言ってんだ!真面目にやってんだろうが!くらえっ!打ち付ける…」
「はぁ?」
「すんません…」
竜也が下を向いて小さく言った。
「ここはいつからライブ会場になったんですかぁ?ねぇ、伊代。」
「ライブ…?とりあえず、龍、棒折らないで」
「ごめんなさい」
「ていうかあんた怪我は?」
一昨日まで腕に包帯を巻いてた竜也に聞いた。
「二日もありゃ充分だ!」
「俺はもうちょっと休めって言ったぞ。」
龍が呆れた顔で言う。
「竜兄、この前のやつ、敵が増えたのっていつ気づいたの?」
伊代が龍が折った棒の尖った部分を整えながら聞いた。
「知らない間に部隊の奴らが集められてることに気づいて、それに聞いてた時より人数が少なかったんだよ。でも下の階に行くにつれてどんどん人数が増えてな、これはやべぇと思って。」
「あと、真下の階からすごい足音が聞こえました。集められてるところも下の方の階でしたし。」
「私は声も聞こえたな!大勢の声がしたぞ。」
私と竜也が驚いて振り返ると翔と勇が立っていた。
「びっくりするじゃない!急に話さないで!」
「そうだぞ!怪我に響くだろうが!」
「すみません。これは言っといた方がいいかと思って。それに竜也さん、さっき訓練してましたよね?」
翔があまり申し訳なくなさそうに言った。
「詳しく状況を整理した方が良さそうだな。」
「会議室に行きましょう。」
伊代はいつの間にか棒を綺麗に整え終え、小刀用の訓練棒のところへ入れながら言った。




