第三十三話 師匠の言葉
「聞いたか?あそこのやつら、潰されたらしい。」
「おいおい、嘘だろ?またカラスか?」
「カラスの中でも、斧持ったやつがいるらしくて、そいつが異常に強ぇって」
「あぁ!会ったら最後、生きてるやつなんていねぇっていうあれだろ?」
「"カラスの鬼''」
暗い部屋の中で聞いたその言葉を俺はふと思い出した。
「足、潰れてなくて良かったわね。片方折れてるけど治りはするわよ。」
先生が優しい笑顔で言った。
「治るのってどんくらいかかる?」
「一ヶ月半くらいよ。それまでは安静にしててね。」
「任務は!?」
「第1部隊はしばらくないんじゃないかしら…第3部隊は勇がいるからあるだろうけど…」
「うちの部隊は無理だな。あっても半月後だ。」
竜也隊長の言葉に俺はほっとした。
「そっか…なぁ…先生」
「どうしたの?」
「蒼のさ、病気って、直せないの?」
先生が下を向いた。
「あいつの病気、ちゃんと治療したら治るやつだって、蒼が昔言ってたんだ…!だから…」
「できないわ。」
先生の声はいつもよりも何倍も冷たく聞こえた。
「あの子はもう、だいぶ進行してる。それに、ここは病気を治す場所じゃない。怪我をしてる人を直すのでいっぱいいっぱいよ。もう物がないからって怪我を焼いてなんとかしたりもするし。今までだって病気になった人は何人もいたけど、直したことはないわ。」
俺はただ俯くことしかできなかった。
「陽」
湊が起きてきた。俺は何故かわからないが声をかけれなかった。
「起きたのね。怪我はそんなになさそうだったけど、大丈夫?」
「はい、ありがとうございます。多分もう大丈夫です」
―――なにか、なにか言わなきゃ
「おはよう!湊!」
振り絞って出した空元気が俺の鼓膜に鳴る。
「おはよう。蒼、起きない?」
「いや…えっと、とりあえず安静にした方がいいって」
「お前もだ、湊。何があったんだ?立ったまま気絶してたぞ」
竜也隊長が今俺が最も聞きたかったことを代弁してくれた。
「自分でもよくわからなくて…蒼が危険なのを見て気づいたら敵が死んでました」
「あー、たまにいるんだよなぁ、そういうやつ。師匠が言ってた理由はこれか…」
「師匠が?」
俺と湊の声が揃う。
「湊は筋がいいからいつか急に伸びるって言ってたぞ」
竜也隊長が声を低くして師匠みたいに言った。
「でも、俺は…もうあんな風にはなりたくないです」
―――俺も、あんな湊はもう見たくない




