第二十九話 カラスの鬼
―――『カラスの鬼』
その言葉を俺はどこかで聞いたことがある気がした。
「君がこんな罠にかかるとは、そのガキ共のせいか?」
『お前ら、体勢だけ整えとけ。変なことするなよ』
勇さんは傍から見たら何も言わずにじっと男を見ている。俺たちはその間に陽を引きづり出した。
「ああ、喋れないんだったな。」
『あいつと私が戦い始めたら動けるものは周りのやつを殺せ。湊は蒼と陽を外へ連れ出せ。』
「まあいい、俺たちは剣で語り合うものだ!」
『来るぞ!』
その瞬間、皆は一斉に動き出した。勇さんは男と激しく刃をぶつける。鉄がぶつかり合う高い音が響く。俺は陽と蒼を連れ、さっき出会った部隊が来た道を進んで行った。マスクは俺たちを縛るものであり、救うものともなるのだ。守さんの素晴らしいだろ、という言葉を思い出す。
―――素晴らしい
鼓動が速くなる。力が入り、血が体の中を流れているのを感じる。
―――これが…戦い!
積み重ねてきた筋肉たちが伸びやかに激しく動く。斧を通じて男の刀に触れた。少しでも気を抜くと一瞬で切られてしまいそうだ。
洗練された筋肉、無駄のない動き、強い力。
―――強いな
私は刀を避けながら敵の死角に入る。向かってくる刀を斧の反対側で受けながら男の顔面を蹴り飛ばした。
「ぐっっ」
男の刃は私の腕を触るが、体を回し男の腹を斧で殴った。
「ぐあぁっ」
腹部から血が滴っている。
―――いい色だ
周りのやつらは怪我をしながらもほぼ戦い終わっていた。
『戦えるなら先へ進め!こいつは…私の獲物だ。私は後から行く』
『はい!健闘を祈ります!』
「随分と…余裕だな」
男は腹を抑えながら言った。もうさっきほどは動けないだろう
「決着をつけようじゃないか」
私は斧を構え、男へ走りよった。男は刀を振り私の首を狙う。
―――首がガラ空きだ
びちゃっと血が床へ飛散り、男の頭が不自然に揺れた。そして壊れたおもちゃのように崩れ、握っていた刀は床へ落ちる。
私は満足気に斧の血を払った。




