第十六話 幕開け
鼓動が早い。
―――たぶん、まだ、覚悟ができてない
そんな思いとは裏腹に扉を蹴破る音がした。鳴り響く、銃声と、大勢の足音と、叫び声と、そして仲間の声。
「ぎゃぁぁぁ!」「カラスだ!カラスが来たぁ!」「逃げろ!」
叫び声がなんだか以前と違って聞こえる。隣で陽と蒼も剣を構えた。
『まずは中距離部隊に崩してもらう!合図があったら全員切りかかれ!……今だ!かかれーー!』
ただひたすらに剣を振るった。時には陽と、時には蒼と背中を合わせながら、血と人の中をもがき続ける。黒い仲間が何人か赤くなっていくのが見えた。
『っっっ!』
『蒼っ!ぐあぁっ』
―――足に痛みが走る。訓練の時にできた痣だらけの体に刃が刺さった。
『2人とも下がれーー!』
陽が敵に切りかかり、俺たちの前に立つ。その背中がやけに頼もしい。俺は恐怖でなのか、傷でなのかわからないが震えていた。
『2人とも立て!俺が、絶対守るから!』
―――やるんだ。やらなきゃ、終わりだ!
剣を強く握りしめ立ち上がった。陽と俺は呼吸を荒くしながら蒼の前で剣を振るう
―――重い
訓練とは桁違いに重く感じる。
『湊!』
目の端で何かが動く。
『わぁぁ!』
蒼が小刀が僅かに光り、敵の腰に刺さった。鼓動がさらに早くなり、やけに大きく聞こえる。
『湊…だいじょ…はぁ…うっ…』
『蒼っ平気か!?』
その時、陽と蒼の後ろに大きな影が見えた。
『2人とも後ろ…!!』
振り下ろされた大きな影の刀が2人の前で止まる。
『竜也隊長!』
『気、抜いてんじゃねぇ…よっ!』
ザクりと刺した剣の重みが、俺たちとは全く違って見える。いつの間にか周りは静かになっていき、叫び声は無くなっていた。
『蒼、大丈夫か?!蒼っ!』
陽の声が強く鼓膜に響く。




