第十三話 何も聞こえない、聞かれない
『機械整備室』と書かれた文字が目に入る。
「ここか!」
「そうだね、守さんって人に話せばいいって言ってたけど…」
さっき竜也さんたちに教えてもらった。
―――マスク、か
暗い中見た、真っ黒のマスクをふと思い出す。
「湊、マスクって呼吸しずらくなるかな?」
蒼が少し不安そうに聞いてきた。
「どうなんだろうね。つけるのは必須っぽいけど」
「でも戦う時につけるなら、意外と呼吸しやすそうだけどなー」
陽の言葉には期待も込められてる気がした。
「苦しくはならないよ!」
俺たちが驚いて後ろを見ると、ゴーグルをつけて、作業服を着た男が立っている。驚きのあまり俺と蒼は声が出なかった。
「びっくりした!驚かさないでくださいよ!心臓に悪い!」
―――まったくだ
「わりぃわりぃ!俺は守。機械整備長だ。お前らか?マスク新しく作んのは。」
なんだか話しやすい人だ。犯罪者とは思えない。そういえば伊代さんが、怪我をしたら別の部隊に入れるって言ってたけど、この人はどこを怪我したんだろうか。
「そうです。あの…!さっきの…苦しくないって…」
蒼が恐る恐る聞いた。
「呼吸はほぼつけてない時と変わらねぇ!なんだったら呼吸しやすくもできる!ガス、匂いはほぼ完全カット!音漏れ一切なし!素晴らしいだろ!」
「すっげぇ!!」
―――『音漏れ一切なし』そういう事か
俺たちの前に現れたあの時の黒い人達は喋ってなかった訳でも、俺が身体的に聞こえなかったわけでもない。聞こえないのが当然なんだ。
「呼吸、しやすく…!」
蒼の顔が少し緩んだ気がした。
「音漏れ一切なしで、どうやって仲間同士で話すんですか?」
俺は率直に疑問に思った。
「いい質問だ!なんと小型マイクが着いていて、近くにいるほど大きく聞こえ、遠ければ小さく聞こえる!隊長なんかにはスピーカー機能も着いてるから全部隊への指示も一瞬だ!もちろん、どこにいようと情報調査員との会話もできる!素晴らしいだろ!!」
「素晴らしい!!」
俺たちは目を輝かせてそう言った。まるで子供みたいに。
「わかってるじゃねぇか!よし、お前らの作るぞ!サイズ測っからこっちこい!」
「はい!」
この時だけはなんだかこの暗い施設を忘れられるような気がした。




