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彼女のお願い10個叶えるチャレンジ  作者: 谷地雪@第三回ひなた短編文学賞【大賞】受賞


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6/8

8個目

「お揃いのものが欲しい」


 芽衣子の誕生日プレゼントに、そうリクエストされた。

 誕生日プレゼントなんだから、普通にお願い事とは関係なく欲しいものをプレゼントするつもりだったけど、お揃いだとぼくの分も用意しないといけないから、8個目扱いするんだそうだ。

 お揃いであれば何でもいいと言われて、逆にぼくは困ってしまった。


「何がいいかなあ」


 休み時間に、教室でスマホを操作し、『彼女 プレゼント お揃い』で検索する。

 次が選択授業だから、芽衣子は既に移動している。ぼくは自分の教室なので、席から動かずにいた。


 お揃いにするんだったら、日常的に使う物がいいだろう。

 マグカップ? でもそれだと使ってるのがお互いわからないしな。

 キーホルダー? 子どもっぽすぎるかも。

 パスケース? センスが悪いと思われないだろうか。


「プレゼントなら、指輪一択だろ!」

蓮也(ときや)


 前の席に座ったのは、友達の蓮也だった。

 蓮也はぼくよりも先に彼女がいたので、たまに恋愛相談にのってもらっている。


「付き合って最初の誕生日プレゼントが指輪って、重すぎない?」

「ばっか、最初だからいいんだろ! 本気なんだなーって思ってもらえるじゃん!」

「でもサイズわからないし」

「女子はだいたい9号くらいだって。希美(のぞみ)もそれで大丈夫だったし、高梨もまー……大丈夫だろ。心配だったら10号とかにしとけば?」


 指輪。芽衣子はロマンチストだから、喜ぶかもしれない。

 でもサイズを聞くのは、なあ。




「芽衣子、誕生日おめでとう」

「わあ! ありがとう!」


 平日だったので、放課後、ちょっとオシャレなカフェに寄って、ぼくは芽衣子にアクセサリーショップの袋を渡した。

 わくわくした顔で包装を解いた芽衣子が、小箱を開けた瞬間、少しだけ表情を硬くした。


「……指輪?」

「うん。お揃いがいいって言ってたから、ペアリング。ベタだけど、恋人っぽいでしょ」


 つけるのは芽衣子と同時にしようと思って、持っていたぼくの分を取り出す。


「安物でごめんね。でもこれ、シンプルなデザインだからぼくでもつけられるし、簡単だし」

「簡単?」

「ほら」


 ぼくは、ぐに、と指輪を広げて見せた。


「フリーサイズなんだよね、これ」


 芽衣子はぼくと服を買いに行きたがらない。サイズを知られるのが嫌なんだそうだ。

 だからきっと、指輪のサイズも聞かれたくないと思った。蓮也の言うように10号を買って、いざつけられなかったら、きっとすごく落ち込むだろう。

 でもこれなら、サイズ調整が自分でできる。


 芽衣子はほっとした顔で、少し広げて指輪を薬指にはめた。


「似合う?」

「うん、すごく」


 笑ってくれた芽衣子に、ぼくもほっとして、自分の薬指に指輪をはめた。

 本物を渡す頃にはきっと、サイズも教えてくれるだろう。

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