6個目、7個目
「制服でゲーセンデートしたい」
6個目のお願いを叶えるべく、ぼくは放課後、芽衣子とゲーセンに来ていた。音がうるさくて会話しにくいので、あまりデートで来る場所じゃないと思っていて、ふたりで来るのは初めてだった。
「芽衣子はゲーセン来たことあるの?」
「たまに来るよー。みるとか、さあやとか」
みるとさあやはクラスメイトで、芽衣子の女友達だ。
ぼくと芽衣子はほとんど毎日一緒に帰っているけれど、たまに友達同士で帰ることもある。休みの日も、毎回デートの約束をしているわけじゃないので、もし別の予定が入っていたら、先に入っていた方が優先。
「友達とは、制服で来ないの?」
「うーん……1回帰って、着替えて集合、とかが多いかなぁ」
「そうなんだ?」
女子は、私服でオシャレして遊びに出たいものなのだろうか。ぼくなんか、面倒くさそう、と思ってしまう。
でもオシャレを楽しんでいるにしては、芽衣子の表情が暗い。視線で続きを促すと。
「ゲーセンってさ、22時過ぎると、高校生は追い出されるじゃん?」
「うん、そうだね」
「でも大人が一緒だと、OKなんだよね。それで、あたしデカイからさ。あんま高校生に見られることなくて」
そういうことか、と内心で呟く。
芽衣子を大人扱いすることで、夜遅くまで遊んでいられるからだ。
利用されていると言うと感じが悪いけど、多分友達はラッキーくらいにしか思ってなくて、芽衣子が本気で嫌がったらやめてくれるだろう。
芽衣子もそれはわかっていて、友達の役に立ちたいから、黙っているんだ。
「じゃあ今日は、制服デート楽しもうね」
「……うん!」
そこからぼくらは、クレーンゲームをやったり、音ゲーをやったりして楽しんだ。
高校生カップルに、たまに微笑ましい視線が向けられたり、逆にとげとげしい視線が向けられたりする。
ゲーセンなんて、何歳になったって来れるけど、制服で来れるのは今だけ。
ぼくらは今しかない時間を、めいっぱい楽しんだ。
「プリクラ?」
「そう! これを制服で撮りたかったの」
制服で来た最大の目的は、プリクラを撮ることだったらしい。
プリクラコーナーは男子だけだと入れないので、実はぼくは初めてだ。
ちょっと緊張しながらビニールのカバーをくぐると、眩しいほどのライトに目が眩んだ。
「これどうすればいいの?」
「音声で全部指示してくれるから、その通りにするだけでいいよ」
芽衣子の言う通り、ブース内にはやけに明るい音声のガイドが流れた。
それと芽衣子の指示を聞きながら、速いスピードで切られるシャッターになんとかついていく。
『次でラスト! 仲良しポーズを決めちゃおう♪』
「優斗、こっちくっついて」
「う、うん」
『3! 2! 1!』
――ちゅ。
『お疲れさま! 落書きコーナーに移動してね☆』
「い、行こっ!」
さっさと鞄を持って出ようとする芽衣子を、ぼくは慌てて引き留めた。
「えっちょっと、えっ⁉」
「は、早く出ないと、時間切れになっちゃう」
「いやだって」
「キ、キスプリ、撮ってみたかったの! いいじゃん! 7個目ってことで!」
言い捨てるようにして、芽衣子は落書きコーナーに行ってしまった。
ええー……。
出来上がったプリクラには、不意打ちをくらった間抜けな顔のぼくが映っていた。
でも、これは、初めて芽衣子からキスしてくれた記念写真でもあるわけで。
「……芽衣子、これ、スマホに貼っても」
「絶ッッッ対いや‼」
撮ったの芽衣子なのに。
仕方なくぼくは、滅多に出さない生徒手帳の内側に貼った。




