4個目、5個目
「イヤホンわけっこしてみたい」
芽衣子がそう言ったので、ぼくは安い有線イヤホンを買って、学校に持っていった。
100円均一のイヤホンなので音質は良くないけど、音楽を聴くこと自体が目的じゃないから、大丈夫だろう。
ぼくも芽衣子もイヤホンは持っているけど、ワイヤレスしかない。
昔のドラマで、有線イヤホンを片方ずつ分け合っているのを見たらしく、それに憧れたみたいだ。
平成ブーム、なんてのもあったし、ちょっと不便なのが逆にいいのかもしれない。
ワイヤレスイヤホンなんて、片方ずつつけても、情緒も何もないもんな。
学校の休み時間。
階段に腰掛けて、ぼくのスマホに有線イヤホンを繋ぐ。
芽衣子のスマホには、イヤホンジャックがない。そうすると、別途変換アダプタが必要になる。古いスマホで良かった。
「はい、芽衣子」
「ありがと」
イヤホンを片方渡して、それぞれ耳につける。
ピン、とコードが張った。
「あ……」
「これ結構近づかないとダメだね」
安いやつだから、コードが短いのかも。
ぼくと芽衣子は肩が触れ合うくらいにくっついて、一緒にスマホを覗き込んだ。
「どれがいい?」
「優斗のおすすめ」
せっかくだから、平成なつかしソングとかにしようかな。
古いドラマの主題歌を流すと、芽衣子が驚いたようだった。
「あれ!? あたしドラマのタイトル教えたっけ?」
「え? これそうなの?」
「そうだよー」
偶然にも、ぼくが流した歌は、芽衣子が見たドラマの主題歌だったみたいだ。
ぼくは歌しか知らないけど、好きな歌だったから、ドラマも今度見てみようと思った。
肩が触れたまま歌を聴いていると、手が触れた。
その手がどちらともなく重なって、繋がれて。
「ね、ドラマでさ、やってた繋ぎ方したい」
「どういうの?」
「わかるじゃん」
すねたような芽衣子にぼくは怯んだ。
そりゃ、手の繋ぎ方なんて、そう何パターンもあるものじゃないけど。
間違ってたらどうしよう、と思いながら、ぼくは全部の指を絡めて、しっかりと握った。
いわゆる、恋人繋ぎ。
「ええと……これで、合ってる?」
「うん!」
にぱ、と花が咲くように芽衣子が笑った。
ああ、ぼく、手汗大丈夫かな。
休み時間が終わるまで。
ぼくらはずっと、手を繋いでいた。




