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彼女のお願い10個叶えるチャレンジ  作者: 谷地雪@第三回ひなた短編文学賞【大賞】受賞


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3/5

3個目

「かわいい~!」


 テーブルに置かれたくまのパンケーキを見つめる芽衣子の目には、ハートが散っていた。

 人気のパンケーキ屋は、ほとんど予約客だけで埋まっているらしい。店員に待ち時間を聞いて帰っている人たちを何組か見た。

 予約して良かった。芽衣子をがっかりさせずに済んだ。


「食べるのもったいないよう~!」

「でも、くまもおいしい内に食べてほしいと思うよ」

「うう……ごめんね、くまちゃん……」


 さんざん写真を撮ったあとで、芽衣子はやっとナイフを入れた。

 それを口に運ぶと、幸せそうに顔がとろけた。

 ぼくはおいしそうに食べる芽衣子が大好きだから、芽衣子がダイエットを口にしそうになると毎回話題を変えている。

 本当に芽衣子がやりたいと言ったら止めることはできないけど、それで芽衣子が甘いものを我慢することになったら、やっぱり手放しで賛成はしづらい。


「おいしそうだね」

「うん。優斗も食べる?」

「じゃあ、ひと口もらおうかな」


 ぼくも甘いものは嫌いじゃない。芽衣子はシェアするのが好きだから、こうして分けてもらうこともよくある。おいしい、という体験を共有したいみたいだ。

 ぼくはカップのゼリーを頼んでいたので、お皿に置いてもらおうとカップをどけようとすると。


「あのね。やってみたかったこと、3つめ、いい?」

「え? うん、もちろんいいよ」


 なんだろう。今このタイミングで、やりたいことって。


「あ、あーん」


 芽衣子が、パンケーキを刺したフォークを、ぼくの方へ差し出した。

 さすがに驚いて、ちょっと目を丸くする。

 赤い顔でフォークを差し出す芽衣子はすごくかわいくて、ずっと眺めていたいけど、このままだとぼくが嫌がっていると思われてしまうので。

 ぼくは努めて平静を装って、パンケーキを口にした。


「お、おいしい?」

「うん。すごく。めちゃくちゃ」


 前のめりに返事をしたぼくに、芽衣子がはにかむ。

 このパンケーキの味を、ぼくは、一生忘れない。

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