2個目
「ヒールを履いてデートがしてみたい」
恥ずかしそうにそう言った芽衣子に、ぼくは「うん、いいね」と答えた。
「いいの?」
「もちろん。なんで?」
「だって……ヒール履くと、あたし、余計デカくなるし……」
もごもごと口の中で呟く芽衣子に、ぼくは少し考えた。
確かに、芽衣子は背が高いことを気にしているから、より高くなるのは気になるだろう。
でも、そのこと自体を嫌だと思っていたら、そもそも「ヒールを履きたい」と言わないはずだ。
履きたいのに履かない理由は、なんだろうか。
周りの視線? それとも、ぼくのせい?
男子の中でも背が低いぼくは、芽衣子と並ぶと更に小さく見える。
芽衣子がヒールを履いたら、身長差は今よりもっと気になるだろう。
「ぼくの方が小さいのが、気になる? ごめんね。そうしたら……うーん、ちょっと、シークレットブーツとか探してみるから」
物理的にすぐに身長を伸ばすことはできない。でも、ごかますことはできる。
芽衣子が身長差を気にするなら、出費は痛いけど、そういう靴を探してみよう。
「ち、違うの! あたしじゃなくて、優斗が……嫌なんじゃないかなって……」
「なんだ、そんなの。気にしないよ。ぼくの方が小さいことなんて、最初からわかってるんだし。芽衣子が好きな格好してくれた方が嬉しいよ」
「ほんとに?」
「うん。今度の日曜日、履いてきてよ。オシャレして、ちょっといいカフェでも行こうか」
芽衣子は、結構女の子らしいものが好きだ。甘いものとか、かわいいものとか。
それをからかわれたこともあるらしいけど、ぼくは芽衣子がかわいいと思っているから、かわいいものは似合うと思う。
それを伝えてから、芽衣子はデートの時、だんだん自分の行きたいところを教えてくれるようになった。
そうだ、芽衣子の行きたがっていた、くまのパンケーキを出す店にしようかな。
日曜は混むだろうから、予約しておかなくちゃ。
そして迎えた日曜日。
待ち合わせ場所に現れた芽衣子は、やっぱりかわいかった。
高いヒールは、芽衣子の長い足を、さらにきれいに見せていた。
太めなのを気にしている割りに、スカートは膝上が多い。
足首丈を買うと、芽衣子にとっては短くなってしまうらしい。ふくらはぎ丈だと太い部分が強調されるから、いっそ短い方がいいんだそうだ。
「すごくかわいい。ヒール似合うね」
並んで立ったぼくがそう言ったことに、芽衣子はほっとしたみたいだった。
さあ、今日は日曜日。一日芽衣子と一緒にいられる日。
めいいっぱい、楽しもう。




