1個目
ぼくの彼女は、僕より大きい。
芽衣子は、ぼくより背が高くて、ぼくより太っている。
アンバランスだね、とよく言われる。
たしかに、アンバランスかもしれない。
芽衣子みたいに素敵な女の子に、ぼくなんか似合わないかもしれない。
でも、芽衣子が、ぼくは芽衣子だけの王子様だって言ってくれたから。
芽衣子に相応しくなれるように、彼女のお願いを10個、叶えることにした。
彼女のお願いを10個叶えてあげられたら、立派な彼氏だと思えるから。
「別にいいのに、そんなの」
公園のブランコで、足をぶらぶらさせながら、芽衣子がそう言った。
お互い高校生だから、そんなにお金もないので、放課後の公園デートはよくする。
「だって芽衣子、彼氏ができたらやってみたいことたくさんあるって言ってたじゃん」
「それは……そうだけど……」
芽衣子が恥ずかしそうに俯いた。
芽衣子は、ぼくが初めての彼氏なんだそうだ。今まで好きになった人はみんな、芽衣子のことをフったらしい。
芽衣子より背の高い男子はレアで、高身長男子は人気があるから、小さくてかわいい女の子のものになってしまうんだと。
「小さい女の子なんて、自分より大きい男の人いくらでもいるのに、なんで一番大きい人とっちゃうんだろ」とぶつくさ言っていた。
それを聞いて、やっぱり芽衣子は背の高い人が好きなんだな、とぼくは思った。でも、「あーあ、あたし、一生彼氏できないのかも。かわいくないもんね、こんな巨人」と言ったのを聞いて、ぼくは思わず言ってしまった。
「ぼくは、高梨さんはかわいいと思う。高梨さんが巨人なら、ぼくなんか小人だけど。高梨さんが彼女だったら、すごく嬉しい」
告白した時は、まだただのクラスメイトだったから、苗字で呼んでいた。
ぼくの台詞に、芽衣子は驚いた顔をした後、冗談めかして言った。
「だったら、あたしと付き合う?」
「はい! よろしくお願いします!」
「え⁉」
芽衣子は、ぼくがOKするとは思わなかったんだろう。でも、ぼくは本気だった。
こうして、ぼくらは恋人になった。
「それで、お願い、何かある? とりあえず、1個目はすぐできそうなやつ」
「うーん……」
最初から難しいと続かないと思って、情けないけど簡単にしてほしいと頼んだ。
芽衣子はちょっと悩んで、かしゃん、とブランコの鎖を揺らした。
「あたし、ブランコのふたり乗り、憧れてたんだよね。あたしは昔から大きかったからさ。足が入らないって、やってもらえたことなくて」
なるほど。ぼくは並んで座っていたブランコから降りて、芽衣子の乗る方へ行った。
「このままだと足入らないから……1回立ってもらって」
ぼくが先にブランコに立って、あとから芽衣子に座ってもらうことにした。
「これだと足の上座っちゃうよ?」
「大丈夫だよ、そのくらい」
「骨折れない?」
「大丈夫だって」
多分。靴も履いてるし、そこまで脆くない……と思う。わかんないけど。
ちょっと無理やり座ってもらって、助走は芽衣子に地面を蹴ってもらった。
ブランコが揺れたら、ぐん、と勢いをつけて。
「わあ……!」
芽衣子の楽しそうな声が聞こえた。背中側に立っているし、下にある芽衣子の表情は見えなかったけど、喜んでもらえたみたいだ。
「すごいすごい、夢1個叶った!」
「それは、良かった」
ぐん、とさらに勢いをつけたブランコに、芽衣子が「きゃー」とはしゃぐ。
ぼくは、いい彼氏に、一歩近づけたかな。
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