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終末世界の生存競争  作者: 神凪儀天水


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7話

 翌日、フィオーネとの勉強が終わった後、


「なあフィオーネ、杖が欲しいんだけどなんとかならない?」

「杖ですか?」

「ああ、俺の身長くらいあるエーテル鉱石を使ったエーテル弾を放てる杖なんだけど、やっぱり杖がないとなんか落ち着かなくて」

「……少々時間が必要かもしれませんが掛け合ってみます」

「ありがとう、よろしく頼むよ」


 そう言ってフィオーネは部屋から出ていった。

 こうして俺は杖を手に入れるためにフィオーネに頼み事をした。あとは杖が来るのを待つだけだな。

 さて、今日も昼食を食べたらジムに行こう。そして体を鍛えよう。今日は上半身、胸と上腕三頭筋と上腕二頭筋だ。

 

 それまではまた窓から街並みを眺めておくとしよう。相変わらず綺麗な街並み。そして女性しか見当たらない街。子供もみんな女の子だ。俺だけが男なんじゃないかと錯覚しそうになるこの街の風景を見ながら、今日の勉強の反復をしていると、昼食が運ばれてきた。昨日からジムに行きはじめたという情報が入ったからか、食事も体の栄養バランスに加えて肉が増えた気がする。ありがたい限りだ。


 そして昼食を食べ終えると少し休憩してからまたジムに行く。今日もまたあのシャリエッタとかいう女の子もいるんだろうか。正直護衛が1人けずられるのは勘弁してほしいが、まあいたらいたで仕方が無いか。あそこは軍の施設であって俺が使わせてもらってる側なんだし。


 そしてジムに到着すると、一瞬ジム内から音が消える。男がいるのがやはり変なのだろう。だがそんなものはおかまいなしだ。自分の理想の体を作るために今日も筋トレさせていただこう。


 取り敢えずバーベルで胸筋を鍛えることにした。幸いベンチが1つ空いていたのでそこを使おう。重さは昨日もそうだったけど単位が分からないので感覚で重量を変えつつ慣らしていくことにする。

 そしてバーベルを持ち上げてみると、結構良い感じの重さだった。このままベンチプレスを行っていく。


「あら、あの殿方は今日もいらしてたのね」


 昨日聞いた声が聞こえた。シャリエッタとやらか。


「ねえツィエラ、挨拶くらいしても構わないかしら?」

「許可できないわ。それに真剣にトレーニングしてるのに邪魔になるでしょう?」

「……それもそうですわね。どこかでご挨拶させていただきたいものですが」

「不許可よ」

「いけずですこと」


 なんて会話が行われていた。それを聞きながらベンチプレスしてたら何回持ち上げたか忘れたよ。まあ限界までやるからいいんだけどさ。

 それから限界までやると最後がバーベルが上がらなくなり、ちょっと困った時にベロニカが助けてくれた。


「助かったよ、ベロニカ」

「いえいえ、初心者がよくやるミスですので。気にせずどんどん鍛えてください。護衛ですからサポートもしっかりしますよ!」


 というベロニカがいるので俺はベンチプレスを本当に腕が上がらなくなるまでやることにした。結果、本当に腕が上がらなくなった。あと胸も痛い……数百年間使っていなかった筋肉はこれくらいで悲鳴をあげているらしい。


 だが今日はまだ上腕二頭筋が残っている。ダンベルを用意してダンベルカールで上腕二頭筋を鍛えていく。こちらはあまり危険性はないのでベロニカも後ろで黙っている。そして黙々と鍛えていると、隣に隻腕の女性がやってきて俺と同じくダンベルカールで片腕を鍛え始めた。


 隻腕か。昔孤児院のチビが街でチンピラに腕を斬り落とされたことがあったっけ。あの時は俺の回復魔法で欠損部位の治療をしたからことなきを得たけど、この女性はいつ腕を失った? もし最近なら治療できるが、最近でないなら治療は難しいかもしれない。

 というか欠損部位の治療ができる回復魔法の使い手はいないのか? 俺のいた時代には治療院で欠損部位の治療をしている院長とかいたんだが。


「ツィエラ、聞きたいことができたんだけどいい?」

「ええ、問題ないわ」

「この要塞には欠損部位の治療をできる回復魔法使いはいないの?」

「この要塞どころかどこの要塞にもそんな高度な回復魔法を使える人はいないわ」

「そっか」


 となるとここで俺が試すのも不味いのか? だが軍人なら両腕あったほうが戦いやすいだろう。少し悩んでいると、


「失礼、そちらの男性の方」

「ん、どうした?」

「私の腕を見ての先程の質問だろうが気にしないでほしい。これは自分のミスで失った腕だ」

「ちなみにいつ失った?」

「3日前だ」


 3日前。ならギリいけるんじゃないか? 治療院の院長曰く欠損部位の治療をするならどんなに遅くても1週間以内に済ませなさい、でないとどんどん治療の難易度が上がっていく。とか言ってたっけ?

 ……まあちょっとだけ。ちょっと自分のアビリティを試すだけだ。


「隻腕の女性、失った方の腕、見せてみ」

「……構わないが、面白いものではないぞ」

「それが面白くなるかもしれないぞ」

「……?」


 隻腕の女性はわけが分からないと言った顔をしていて、後ろにいるツィエラとベロニカは何故かあわあわとしている。

 が、そんなものはどうでもいい。取り敢えず回復魔法を発動させて久々に欠損部位の治療を行ってみたところ──


 隻腕の女性から腕が生えた。骨が生成され、血管が伸び、神経、筋肉と失われた肉体が再生していく。それらをものの数秒でこなしてさっきまで隻腕だった女性はもう隻腕ではなく両腕がしっかりとある女性になっていた。


「よかった。3日前なら俺でも治療できたか」

「……欠損部位の再生? まさかそんな高等魔法を?」

「昔は治療院に行けば誰でも受けれた治療だぞ、それ。まあ金は必要だったけど」

「……ありがとうございます、御身のおかげでもう一度両手で剣を振れます」

「そっか。まあ頑張ってよ、軍人さん」


 そう言ってから俺は上腕二頭筋の筋トレを再開する。そして限界までこなしてから今日もストレッチゾーンに行って体のストレッチをする。

 今日は上半身のストレッチと筋肉痛の下半身のストレッチだな。下半身のストレッチはまたベロニカを呼ぼう。


「ベロニカ、今日も背中押してくれない?」

「りょーかい!」


 こうしてベロニカに背中を押してもらって前屈をしていく。が、今日もやはり昨日のように視線を集めているな。もしかしてこれから毎日こういう視線にさらされていくんだろうか。


「今日も視線を感じるとか思ってます?」

「思ってるけど、これって毎日続く感じ?」

「まあ続くでしょうね、毎日同じ人が使ってるわけでもないですし、今日は特に不味いことになりましたし」

「不味いこと?」

「まさかアルス様が欠損部位の再生ができるほどの回復魔法の使い手だなんて誰も知らなかったのにこんなところで不用意に使うから、明日からは欠損部位を抱えた軍人がジムに集まるかもしれませんよ?」


 それは確かに不味いな。というかめんどい。いくらエーテルが無限にあるからといって欠損部位の再生は疲れるのだ。それに1週間以上前の欠損部位は治すのが難しい。だから変に期待させてしまう可能性も高いから余計にめんどい。


「明日はジムを休むか」

「それが賢明だと思います、よ」


 最後に力強く前に背中を押されて一気に体が沈み込む。2日でここまで戻るものなのか。人体って凄いな。なんて思いながら俺はストレッチを終えて自室に戻るのだった。


「そういえばあの隻腕だった女性と話してる時、2人はあわあわしてたけどなんで?」

「アルス様、あの女性は軍人の中でも将校でして、大佐の地位についている方です。アルス様は男性なので不敬にはなりませんが、女性があんな口利きをしたら怒られてましたよ」

「大佐? そういえば俺軍のこと何も知らないな。百人将とかそんな地位はあるの?」

「ないわよ。基本的に二等兵から始まって、一等兵、上等兵、兵長、伍長、軍曹、曹長、兵曹長、准尉、少尉、中尉、大尉、少佐、中佐、大佐、准将、少将、中将、大将と上に上がっていくわ」

「じゃあ大佐ってかなり上の立場じゃん。なのに剣振ってるのか……」


 さっき治療した人が大佐とかいう地位にいたことも驚きだが、それだけ地位が高くても戦闘に出るのが軍ということに驚きを隠せない。帝国兵はそこまで細かく位が分かれてなかったから元帥以外は大体戦争に出ていたらしいけど今は時代が違う。まさか時代が変わっても高位の軍人が戦闘に駆り出されるのは変わらないんだな。


「ちなみにツィエラとベロニカは階級なに?」

「私は一等兵よ」

「私も一等兵です」

「じゃあさっさと出世しないとな」


 そういうと曖昧な笑みを浮かべているが、なにか不味いことでも言っただろうか?

 なんて考えていると、ドアがノックされる。

 2人が警戒態勢を取り、


「どうぞ」


 とツィエラが言うと、フィオーネが中に入ってきた。


「なんだ、フィオーネだったのね」

「2人が中にいるのは珍しいわね、何かあったの?」

「そうなんですよ! アルス様が大佐の欠損部位を再生させちゃって明日はジムに行けそうにないんです」

「アルス様の回復魔法はそこまで強力だったのね……。というか貴方達はその現場の仲裁には入らなかったの?」

「はいれないわよ、大佐から話しかけたんだから」

「もう、今回は話す程度で済んだからよかったけど、これが襲われるだったらどうするの? もっと護衛意識を持ちなさい」

「はい、すみません……」


 フィオーネに軽く説教される2人だった。そして、


「アルス様、午前中に仰っていた杖の件ですが」

「あ、もう聞いてくれたのか?」

「はい、一応軍で支給される狙撃用の杖を貰って来ました。ただ、これ以上のものとなると貰うのは厳しいかと……」


 そう言って見せてくれたのは確かに俺の背丈に近いくらいの長さの杖だった。杖の先の方に丸く研磨されたエーテル鉱石が付いている。だが小粒だな。そしてエーテル鉱石の質が悪い。


「フィオーネ、このエーテル鉱石の質って軍の装備の中ではどのくらいの良さか分かる?」

「一応軍の標準装備の品質です」

「え? 本当に? これって低品質のエーテル鉱石だぞ?」

「しかし今はそれが標準となっております。それ以上の品質となると数が少なくて貸し出しすら厳しいかと……」

「そっか。まあとりあえず明日の午後に試し撃ちしに行くか。ジムいけなくなったし」


 こうして明日の午後に狙撃用の杖の試し撃ちをすることになった。

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