表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末世界の生存競争  作者: 神凪儀天水


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/29

5話

 入院生活1日目は既に夕方だったため、動かしにくい体でなんとか個室に備え付けられていたシャワールームに入り、使い方が分からないながらも四苦八苦しながら体を洗うことができた。


 そして風呂から出て、新しく用意されていた患者用の衣類を身にまとい、そのまま壁に寄りかかりながら歩いてベッドまで戻る。

 ふう、たかだか水浴びするだけで一苦労だな。なんて思っていると病室の扉がノックされる。


「どうぞ」


 返事をして入ってきたのはツィエラとベロニカだった。それにもう1人知らない女性を連れている。黒髪ロングストレートで紫紺の瞳をしている。少し色合い的には俺に似てるのか?


「この度、護衛任務、に就くことになりました、E11小隊です。改めて、よろしくお願いします」

「よろしく。早速明日から頼みたいことがあるんだけどいいか?」

「はい、なんなりと」

「現代語の勉強をしたいから何か教材を見繕ってほしい」


 この先ずっと帝国語を使うわけにもいかないからな、早めに現代語を覚えてしまう方がいいだろう。そのためには現代語に詳しい人間に教材を見繕ってもらうのが一番だ。


「承知いたしました。それと我が小隊の人員の紹介をさせていただきたいのですがよろしいでしょうか」

「ああ、構わないよ。あと口調も研究所で助けてくれた時みたいで構わない」

「分かったわ。こちら、私と同じ小隊のフィオーネ・アレクシスさん」

「フィオーネと申します。これから御身の警護に就かせていただきますので、よろしくお願いします」

「へえ、フィオーネさんは古代語話せるのか」

「はい、学園で学びましたので」


 学園っていうのは貴族の通うあの学園のことだろうか。だとするとここにいるのはみんな爵位持ちかもしれないな。まあそれでなにか粗相をしたとしても男性保護でなんとか許してもらえそうだけど。

 それより帝国語を話せる人間が近くにいるっていうのはいいな。言語の壁がないから会話が聞き取りやすい。


「じゃあとりあえず今日からよろしく。ちなみに何から俺を警護するんだ?」

「一部の過激派の女性たちからです」


 ここからの会話はフィオーネが引き継ぐようだ。そのほうが話しやすいからありがたい。


「過激派の女性?」

「はい、男性に対してアプローチを掛けて子種を貰おうとする輩や結婚を迫る輩から守るために警備が配属されています」

「それは流石に恐ろしいな……」

「過激派の女性たちに居場所を知られていないので安全だと思います。あとは如何にして隠し通すかですが」

「まあ俺は今瀕死の状態らしいから外には出れないだろうし、そうそう見つかることはないでしょ」


 そういった話をしてから食事が運ばれてきて、E11小隊はドアの入り口で警備することになった。

 さて、現世に目覚めてから初めての食事だが、内容はお粥だな。これは帝国時代でも風邪ひいた時にエルマリアが作ってくれたからよく覚えてる。火傷しないようにスプーンで食べていくが、味付けはやっぱりエルマリアには敵わないな。


 そんな食事をゆっくりと食べながら、俺は今はもういないだろうエルマリアのことを考える。現代の人間は何処を見ても美人ばかりで目移りしそうになるが、それでもエルマリアが恋しい。一緒に暮らそうと話したのにそれを実現できなかったのが哀しい。

 お粥を食べているとそんな気持ちが湧いてくる。時間の流れというのは残酷だな、なんて思いながらお粥を食べきり、食器を下げてもらい栄養剤の点滴を打つ。


 そして夜中、孤児院ではこんな高級そうなベッドでは眠れなかったな、なんて思いながら俺はいつぶりかの本当の睡眠をすることになった。


 翌日。

 朝食のお粥を食べ終えると、そのまま栄養剤の点滴を受け、せっかく天気がいいのだからとフィオーネが病室の窓を開けてくれた。窓から風が入り、カーテンが揺られて膨らんではしぼんでいく。

 それからしばらくすると、ツィエラがやってきて、昨日伝えた現代語の勉強用の教材と筆記用具、羽ペンではなく鉛筆というらしい道具をくれた。


 そして現代語の勉強を始めてみたが、現代語の説明を現代語でしているため、全く理解できなかった。結果、フィオーネを呼んで一々通訳してもらいながら勉強をすることになった。フィオーネには迷惑をかけてすまないと謝ったが、これくらいなんの苦労もありませんと言ってくれたので随分と優しい人なんだろう。


 そして勉強が終わり、病室から窓の外を見ると、エイト・クエレーレ・カスタルムの街並みが広がっていた。10万人規模の人間が住んでいる要塞ならばやはり帝都アッサムに匹敵する広さだと思うし、皇帝は毎日こういう風に街を見下ろしていたのかなんて思ったりもする。


「なあフィオーネ」

「はい、なんでしょうか」

「この要塞のどこに他の男は住んでるんだ?」

「そうですね……だいたいあの水路に囲まれたあたりに固まっています。男性には1人につき一戸建ての家が与えられていて、生活に必要な買い物等は離れに住む使用人が請け負っていますので本当に家からでることは少ないですね」


 どうやら今の世の男は軟弱らしい。陽の光に当たらなくてどうやって生きていくんだか。毎日の活力をそいつらはどこで得ているのだろうか。


「そんな毎日家に籠っていて楽しいものなのか?」

「それなりに娯楽はありますが……そうですね、正直なところずっと家に籠っているのも限界があると思います」

「男たちは何か付き合いはあるの?」

「いえ、男性同士の付き合いはありません。これは男性間で交流を図った計画があったそうですが、何故か男性同士で格付けが始まってあまり良い結果にならなかったので男性同士の接触も推奨していません」


 今の世の男、めんどくさすぎるだろ……。女と仲良くできなくて男とも仲良くできない。それじゃあどうやって生きていくんだか。いや、だから暇でも自宅に引き籠ってるのか。さぞかし退屈な人生を送っているんだろうな。それならいっそ軍にでも入ればいいのに。


「そういえば、男でも軍に所属できるの?」

「それは、可能といえば可能ですがそのような男性は今まで聞いたことがありません。それに任務で男性を死なせてしまうと貴重な男性を失うことになるので軍人になるのは難しいかと……」


 それもそうか。精子提供者を軍に入れるわけがないか……。貴重だもんな、男性。となると俺は今後はあの区域で生活することになるのか? だがそれはそれでつまらない。もともとは帝国狙撃兵を目指していた身だ。俺も軍に所属して活躍したかったがもしかしたら難しいかもしれないな。


 となると次のプランを考えないといけない。俺の退院後は使用人にE11小隊を選んでそのままなし崩し的に任務についていくというのはどうだろう。いや、男性警護の方が優先されて討伐任務が回ってこなくなるだけか。


 そもそも今の世界の娯楽がどれほどのものか分からないが俺が家に住んでも飽きるだけだろう。ひと月持つか? これでエルマリアがいるのならば喜んで共に過ごすだろうが、もうエルマリアはいないんだ。俺は俺のことを知っている人のいない世界で生きていかないといけない。そんな終わった世界で生きていく術を早めに見つけないといけないな……。


 それから昼食を食べ、少し昼寝をしてからまた現代語の勉強をする。そしてまた雑談をしてから風呂に入り、夕食を食べて睡眠をとる。

 そうして俺の入院生活の行動指針が決まっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ