24話
そして朝食後、少ししてから隊列を組んでモンストルムの集団のもとへ進むことになった。俺とE11小隊は一番防御の厚い中央に配置され、ある意味どこの部隊が怪我をしても中央に来れば回復できるので良い位置につけてもらった。
そして隊列を組み、陣から出てモンストルムの集団のもとへ向かう。それぞれが武器を手に持ち、いつでも具現化して戦えるようにしていて、物々しい雰囲気を醸し出している。
そんな中俺は呑気に従軍してモンストルムにエーテル弾を撃つ機会を虎視眈々と狙っていた。やはり開幕初撃にエーテル弾を撃つのが理想だろう。でないと乱戦になってからでは味方に誤射する可能性がある。そう考えると中央という位置は少し遠いな。やはり最前線が一番敵を狙いやすいから最前線に行きたい。
最前線は敵に近寄られやすいというデメリットがあるが、俺の場合無限のエーテルがあるのでエーテル弾の多重展開で押し切れる。せっかくだから大暴れしてやりたいが、さてどうしてやろうか。
「アルス様、戦闘に参加する気満々なのが表情に出てますよ」
「まさか、回復要員が戦闘に参加するわけないじゃないかベロニカ」
「その割には杖を持ってきているじゃないですか」
「万が一の自衛のためだよ、俺にとっては必ずしも敵はモンストルムだけとは限らないからね」
「ふうん? ならいいんですけど」
まさか表情に出ていたとは……。ベロニカに俺が狙撃する気満々だと完全にばれていた。これからは表情を引き締めて我慢しよう。
それから森を歩いて30分ほどのところで全体停止命令が出た。この先にモンストルムの集団がいるらしい。ミランダ大佐がスコープのようなもので確認をしている。
いいなあそれ。今度から俺もスコープ支給してもらうか。
「総員! モンストルムの集団の確認ができた。攻撃陣形へ移れ!」
そして今度は俺たちの正面に各小隊が集まり、後ろ側には小隊がほとんど残っていない陣形になる。
「今回は手足が千切れようとも欠損部位の治療をしてもらえる! 臆するな! 全力で戦え! のこり5分だ。総員時計を合わせろ、9時からモンストルムの集団へ攻撃を仕掛ける!」
「「「はい!」」」
こうして5分後、モンストルムの集団に攻撃を仕掛けることになった。
それから体感で少しの間の静寂が訪れ、ミランダ大佐の時計から音がなる。
そして、
「総員、突撃!」
ミランダ大佐の号令で各小隊が森の木々から飛び出してモンストルムの集団に攻撃を仕掛け始めた。それぞれが武器を具現化し、小隊ごとに固まりながら行動している。そして地上にいるモンストルムの集団へ攻撃を開始した。弱いモンストルムは即座に首を刎ねられ、強いモンストルムは腕を斬られ、首を砲撃され、確実に1体ずつ仕留めている。
そしてモンストルムも襲撃に気付いたのか反撃に出ている。こちらの攻撃に対して果敢に攻め込むモンストルムもいれば狡猾に中距離から戦うモンストルムもいる。あの弱いのは多分タイプ・ゴブリンだな。中距離から何か飛ばしてるのはなんだ? 飛ばしたものが地面を溶かしているからタイプ・スライムか? たしかタイプ・スライムは強酸で金属すら溶かす液体でできているとか記載されていた気がする。
そしてこうやって攻めていると怪我人というものは出てくるもので、まだ俺のもとまで運ばれてきていないものの、多少の怪我を負った軍人はいるみたいだ。
そんなことを考えていると、次は空から火の塊が複数降ってきた。あれらは見覚えがある。たしかツィエラがタイプ・ワイバーンとか言っていたな。砲撃できる小隊の軍人が砲撃しているが中々当たらない。このままだと被害がでるだろう。どれ、俺も腕試しで撃つか。狙うのはタイプ・ワイバーン。
「エーテル弾、多重展開」
その瞬間、俺の周囲にエーテル弾の魔法陣が描かれる。それも数十もの数だ。
「アルス様!」
「1回だけだから大丈夫だって」
そして狙いを決めて、
「一斉射!」
エーテル弾をタイプ・ワイバーンに向かって放った。自動追尾付きだからどれかの個体には必ず当たるはず。
そして俺の放ったエーテル弾はそのままタイプ・ワイバーンたちに直撃し、黒い瘴気となって消えていった。
「なんだ、1撃で討伐できるのか」
「アルス様、貴方回復要員って言ったわよね?」
「いや、ごめんごめん。1度くらいモンストルムと戦ってみたくてさ」
「もう、貴方のエーテル量次第では治療できない人が出るかもしれないんだから気を付けてよね」
「分かったよ、ここからは回復要員として働くさ。取り敢えず聖域結界を張ろうか」
「聖域結界?」
ツィエラが聞き返してくるが、俺は治療院での院長から学んだ聖域結界についての記憶を掘り起こす。自分を起点として結界を張り、中にいる人間の傷を癒す聖域結界。院長の規模は治療院の建物の中で納まる程度だったが、俺のエーテル量ならこの戦場をまとめて聖域結界で覆えるはず。
俺はその場で杖をつき、地面に片膝をついて杖を両手で握る。そして、
「私が祈り、私が願い、私が癒しをもたらし傷を癒す。
その結界は誰かを拒むことはなく、その結界は誰かを殺すことはなく、
人を生かし、人を癒し、人に力を与える。
祝福を。
ここに人々の癒し手が1人。汝らに快癒の力を降り注ごう。
私が天壇に願い奉る。聖域結界」
そう唱えた瞬間、俺を中心として急激に淡い緑の光が広がっていき、天と地に回復魔法の魔法陣が広がる。それもかなりの大規模でだ。これで戦場は覆えているはず。
そのまま目を開けて周囲を見ると、確かに聖域結界は完成していた。そして怪我をしている軍人の治療も始まっていた。これで怪我人を減らすことができるだろう。
「これは、一体……」
「回復魔法の1つだよ。1人を癒すんじゃなくて大勢の怪我人の軽い怪我を同時に癒していく結界だ。これを展開してる間は俺、完全に無防備だから護衛は任せるよ」
「分かったわ」
そしてツィエラたちが俺の四方に立ち、全方位からの敵襲に備える。戦場は今のところ人間優勢のようだが、さて、これがどこまで続くのか見ものだな。モンストルムは人間を陸地から追い出した張本人だ。こんな簡単に勝負が決まるとは思えない。
それからも戦闘は続くが、モンストルムの数が増えてきた。そして段々と人間側が押され始める。なんとか戦線は維持しているが、このままだと崩れてしまいそうだな。だが今俺は聖域結界を張っているためエーテル弾は撃てない。というかここから動けない。
さて、どうなる?
少し遠くではミランダ大佐の小隊も戦っている。流石はAランク小隊小隊というべきか、見事な連携だ。そしてモンストルムを確実に葬っている。近くにシャリエッタの小隊もいるが、こちらもなんとか戦線を維持しているみたいだな。だが怪我人が出ているのか剣を持った軍人が後ろに下がっている。まあこの結界内にいたらその内治るだろう。
そしてしばらくモンストルム相手に善戦していた軍人たちだったが、遂に一部の軍人が戦線を維持できなくなった。そのままモンストルムがこちらに迫ってくる。どうする、結界を解いて俺も迎撃に加わるか?
「アルス様はそのまま結界を維持に専念してて、ここは私たちが」
「そうですよアルス様、今日はもうタイプ・ワイバーン相手にエーテル弾撃ったんだから十分でしょう? あとは私たちに任せて結界の維持に専念しててください!」
ツィエラとベロニカにそう言われ、俺は結界の維持に専念することにした。まあ武器の強化もしたし、もともと弱い小隊ではないんだ。モンストルムが相手でも大丈夫だろう。
「みんな、迎撃するわよ!」
「「「了解!」」」
そしてE11小隊とモンストルムの群れがぶつかった。




