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終末世界の生存競争  作者: 神凪儀天水


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19話

 side アルス


 翌日。今日は何をするか、と考えながら朝食を食べていると、ふと街をまともに見たことがないなと思い至った。


「ねえツィエラ、街を歩きたいって言ったら護衛的にどう?」

「街を歩く? 散歩ってこと?」

「まあそんな感じ。ほら、俺がこの家に移動した初日に買い物したじゃん? あんな感じで街を見てみたい。前からどうして海の上で肉が食べれるのか疑問だったんだ。自分の目で見て解決したい」

「過激派女子にさえ気をつけてくれれば特に問題はないわ」

「ちなみに俺、過去に過激派女子にエーテル弾で牽制してるんだけどそれって許される?」

「……何やってるの? あまり褒められた行為ではないからやめたほうがいいわ」


 やっぱり過激派女子にエーテル弾は駄目みたいだ。なら過激派女子はもう護衛に任せてしまおう。俺は純粋に街並を歩いて楽しめばそれでいいや。

 それに毎日図書館というのも俺も飽きるし護衛も飽きるだろう。


「それじゃあ今日は街で散歩でいいのね?」

「ああ、徒歩で頼むよ」

「分かったわ。出発はいつにする?」

「昼食後にしたい」

「了解」


 こうして今日の俺の行動範囲が決まった。それともう少しで4人の新しい武器が完成するはず。それの知らせはくるんだろうか。


「フィオーネ、この前渡したエーテル鉱石で製作している武器って完成したら報告くるの?」

「はい、この家に手紙で連絡が来ることになっています」

「そっか、真エーテル鉱石を使った武器を持った小隊の誕生が楽しみだな」

「でもアルス様、それ多分他の小隊から嫉妬やら妬みやらを受けますよ?」

「それは俺の護衛小隊になれなかった不運を恨んでもらうしかないな」


 なんて言いながら俺たちは雑談をしている。他の小隊のことは知らん。俺は俺を護衛してくれるE11小隊のことだけを考えていればいいのだから。


 そして午後。


「それじゃあ行きましょうか」

「ああ、ゆっくりと街並みを見るのは初めてだから楽しみだな」

「過激派女子と出会わなければいいのですが……」


 フィオーネが既に心配をしている。だがまあ今回は護衛小隊もいるし大丈夫だろう。それに俺もいざという時のために杖を持っている。

 そして満を持して外へ出る。今日も晴天。いい天気だ。それからまた俺を中心として前後左右にE11小隊の面々が並び歩く。相変わらず護衛って厳しいな。


 それから男性保護区を抜けてマーケットがある区域にでた。ここで最初は買い物をしたんだっけ? もとが帝国の食物って分かるとどれも抵抗なく食べれるようになったのは記憶に新しい。そしてマーケットを冷やかしながら見物していく。


 そしてマーケットの店主は男性がくることが珍しいのかみんな驚いた顔をしている。


「店主、そんなに男が珍しいかい?」

「は、はい……男性がマーケットに来ることなんてほぼありえませんので……」


 と言って恐縮しきりだ。別に冷やかしに来てるだけで営業妨害をしているわけではないのに。なんて思いながらマーケットを抜けて、次は個人の店のある区画に出た。飲食店やら服飾店が並んでいる。ちょっと服飾店には興味があるから行ってみるか。


 そのまま服飾店に入ると、中で話をしていたらしい客と従業員がいきなり無言になる。やっぱり男が来るとこうなるか。まあ予想していたことだから別にいいけど。

 俺はそんなことを気にせず衣類を見て回ることにした。のだが、男性用の衣類が1つもない。全て女性用だ。しかも下着まで陳列してある。


「アルス様ー、それは女性用の下着ですよー。興味あるんですか?」

「正直陳列されている下着より今ベロニカが身に着けてる下着の方が興味あるな」

「そういうものなんですか?」

「そういうものだ」

「ならあとで見せてあげましょうか?」

「なら次の精子提供の時にでも見せてもらおうか」


 なんてやりとりをしながら服を見ていくが、流石に500年近く経てば服の流行も変わるし製法も変わる。精緻な柄物が増えるのも当然か。

 それから男用の服がないことに少し哀しみを覚えながら服飾店を後にする。そのまま次は近くの喫茶店に入ろうと思って歩いて近づくと、


「あの、アルス様、そのお店はやめておきませんか……?」

「え、グリューエル? どうして?」

「その、私の母が経営している喫茶店なんです。粗相をしでかす可能性がありますので……」

「ほう、グリューエルの母親が経営してるのか、ツィエラ、俺が入ると迷惑になるかな」

「迷惑にはならないわよ、男性だってこの要塞の住民なんだから利用する権利はあるわ。それにこういう落ち着いた喫茶店には過激派女子はいないから護衛の観点からもありがたいわね」

「なら決まりだな」


 そう言ってグリューエルの母親が経営しているらしい喫茶店に入る。


「はい、いらっしゃ……」


 俺が男だからだろうか、それとも護衛を引き連れているからだろうか。歓迎の声は途中で止まってしまった。とりあえずテーブル席に座ってみたが、護衛小隊は座らない。


「ツィエラ、座らないのか?」

「私たちは護衛よ、一緒に座ってお茶をするわけにはいかないわ」

「そういうものなのか」


 とりあえず何か頼もうと思ってみるもどうすればいいのか分からずにいると、フィオーネがメニュー表とやらを手渡してくれた。


「ここに飲み物や食べ物が記載されています。それと男性の護衛として金銭等は私たちが管理しているので好きなだけ食べてください」

「何から何までありがとう、フィオーネ。助かるよ」


 そうして俺はメニュー表を見て、コーヒーとチーズケーキというものを頼んでみた。それからしばらくしてグリューエルの母らしき人がコーヒーとチーズケーキを運んできてくれる。


「お待たせいたしました」

「ありがとう」


 そして俺はコーヒーを飲みながらチーズケーキを一口食べてみると、これが中々美味しかった。てっきりケーキにチーズが乗っかっているのかと思っていたが、そんなことはなくチーズが練り込まれたケーキだった。


「美味しい。グリューエル、君の母親の作ったケーキ美味しいぞ」

「あの、アルス様、恥ずかしいのであまり母の前では呼ばないでください……」

「グリューエル、護衛に私情を挟んでは駄目よ」


 あら、グリューエルがツィエラに窘められてしまった。ちょっと悪いことをしたな。なんて思いながらチーズケーキを食べていると、店内に新しい客がやってきた。


「あら、最近軍の施設で見かけなくなったツィエラではありませんの」


 やってきたのはシャリエッタだった。またお前か。ジムといいよく出会うな。ちょっと運命感じてきたぞ。


「シャリエッタ、悪いけど私たちは護衛任務中だから」

「護衛任務?」


 そう言ってシャリエッタが俺を見る。そして、


「また男性の護衛任務ですのっ⁉ しかもその男性、欠損部位の治療ができるっていう海上要塞で最高位の回復魔法使いではありませんの! どうしてツィエラの小隊が継続して護衛をしていますの⁉」

「指名依頼だったのよ。知らない女性に護衛されるより知っている女性に護衛されたいらしくて。今では護衛対象の家で暮らしてるから軍の施設では見かけないのよ」

「う、羨ましいですわ……。でもそうですわね、今日は流石に挨拶くらいしても構わないでしょう? ただの挨拶を断るほど護衛も切羽詰まってはいませんでしょうし」

「……護衛対象に判断を仰ぐわ」


 ツィエラがそう言って、


「アルス様、私の知り合いが挨拶をしたいって言ってるんだけどいいかしら?」

「いいよ、シャリエッタだろ? 危害を加えてこないなら拒みはしないよ」

「本当にごめんなさい、本来なら追い返すべきなんだろうけど」

「気にしなくていいさ。ツィエラの知人なら無碍には扱わないよ」


 ツィエラと確認のやりとりをして、ツィエラがシャリエッタを俺の対面に座らせる。そして俺はシャリエッタの顔を初めてまじまじと眺める。小隊カタログでも載っていたが、ゆるふわの金髪ロングに赤い瞳。その本体が目の前にいる。


「あ、あの、私、シャリエッタ・フローレストと申します」

「アルスだ、よろしく」

「よろしくお願いします、アルス様」


 何故か緊張しているらしい。そして少し顔が赤い。さっきまでの余裕は何処にいったんだ?


「さっきからそわそわしてるけどどうした? 緊張してるのか?」

「い、いえ、そのようなことはありませんよ、ほほほ」

「シャリエッタって軍の階級は何にあたるんだ?」

「私は上等兵ですわ、アルス様」

「上等兵ってツィエラの1つ上の階級だっけ? それでCランク小隊なのはすごいな」


 てっきりもっと上の階級なのかと思っていた。だがそれくらいの階級でもCランク小隊にはなれるということが分かった。E11小隊も今後頑張っていけば小隊のランクも上がるだろうしそれぞれの階級も上がるだろう。

 ちなみに俺は任務についていくとは言ったが階級については知らされていない。


「ところでアルス様、お聞きしたい事があるのですがよろしいですか?」

「ああ、いいよ」

「では何故ツィエラの小隊を護衛に選んだのですか? 軍の施設にいた時もツィエラの小隊を選んでおりましたよね?」

「それは俺の知ってる軍人がツィエラとベロニカだけだったからだな」

「それだけの理由で護衛小隊を選んだのですか?」

「そうだ」


 ぶっちゃけそれ以外に選択肢はないとも思っていた。知らない女性といきなり同じ家で眠るのは無理があるだろう。多分それを考えてアイーシャは俺の部屋から1番遠い部屋を使ってくれたんだろうし。


 それからシャリエッタが注文した商品が運ばれてきた。紅茶とチーズケーキだ。

 それらを小さな口で少しずつ上品に食べている。シャリエッタは黙っていれば本当に美人だ。なんて思いながらシャリエッタを見ていると、段々彼女の顔が赤くなっていき、


「あの、アルス様……そんなに見つめられると恥ずかしいですわ」

「ああ、ごめん。なんかいつもと印象が違って見えたのが新鮮で」

「いつも、とおっしゃいますと?」

「いつもはツィエラに突っかかって受け流されてる印象があるな」


 そう言った瞬間、護衛をしているうち、およそ2名が笑いをこらえきれなかったのか声を出している。


「ちょっ、今笑ったの誰ですの!」


 しかし返事は返ってこなかった。だが俺の角度からはツィエラの表情が見えるのでニヤついているのが分かる。あとは多分ベロニカだな。


「仲いいんだな」

「これのどこを見て仲がいいと仰っておりますの?」

「それくらいの軽口が叩けるなら仲がいいんだろうよ」


 そう言ってコーヒーを飲む。シャリエッタとツィエラがどういう関係かは知らないが、まあ仲が悪いわけではないのだろう。だから俺に挨拶を、という打診をしてきたのだろうし。

 それからしばらくの間雑談して、今日はお開きとした。会計を済ませて外に出る。


「それではアルス様、私はここで失礼いたしますわ」

「またな、シャリエッタ」


 シャリエッタがそのまま街並みに消えていく。それを見送ってから、そろそろ夕方になり始めたので俺たちも家に帰ることにした。


 結局、今日は肉がどこで作られてるのか調べることはできなかったな。


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