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終末世界の生存競争  作者: 神凪儀天水


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18話

 side グリューエル


 夜、アルス様が眠りについたあとに私はE11小隊の面々に聞きたいことがあって少し時間を用意してもらった。

 全員でリビングのテーブル席に座ってランプを中心に顔を合わせる。


「それでグリューエル、今日はどうしたの?」

「その、男性の護衛について聞きたいことができて……男性ってもっと女性を怖がる生き物だったんじゃないんですか?」

「それは完全にアルス様が例外なだけよ。他の男性はグリューエルの考えている通り女性を怖がって護衛小隊すらつけていないわ」

「アルス様、筋トレ後のストレッチで私が密着しても嫌がる素振りすら見せませんでしたしね」

「私が統合語を教える時も嫌な顔とかはされなかったわね……」


 なんなんだろうか、私の護衛対象は。まさか女性を怖がらない男性がいるとは思っていなかったから護衛任務はもっとストレスのたまるものだと思ってた。

 だけど実際はそんなことはなくて。初対面の私に質の良いエーテル鉱石をくれたりするし、私を怖がる素振りも見せないし、図書館に行く時なんて私とフィオーネ先輩に挟まれてるのになんとも思っていないように見える。

 その図書館でも他の女性を警戒することなくリラックスして本を読んでいる。完全に女性を怖がっていない。


「ああいう男性は初めてです。男性はもっと繊細だから関わる時は細心の注意を払えと学んでいたのに」

「私たちの今の生活というか護衛スタイルはアルス様だから許されているだけで、他の護衛対象にやったら即座に護衛からはずされるでしょうねー」

「そうね、私たちは砕けた口調で話しているけど、これは他の男性の護衛だと許されないでしょうね」


 やっぱりアルス様は普通の男性とは違うんだ……。ならなにに注意すればいいんだろう。


「アルス様の護衛をするにあたって注意すべき事って何ですか?」

「アルス様は遭難民だから海上要塞の法律とかを知らないわ。そこを無意識に破らないようにするのが私たちの役目の1つよ」

「あとは軍の施設に2度と攻撃をしかけないように宥めるのも仕事ですね」

「軍の施設に攻撃……?」

「アルス様は私たちE11小隊を護衛小隊にするために上層部に杖を持って攻撃をしかけたの。怪我人は軍人がおよそ30人。それもアルス様がたった1人で全てなぎ倒したらしいわ」


 男性が軍人をなぎ倒した? しかもたった1人で? あの夜空の様な色をした杖でなぎ倒したというの?


「他にも入院していた時にジムで欠損部位を抱えている軍人の治療をしたりとかもしてましたねー。アルス様、あんな感じで女性にもフランクだからかなり人気があるんですよ? あれ以来ジムはトレーニングをしないのに居座る人がたくさんいましたし」

「なんでそんなことを……」

「本人が身体を鍛えたいっていうからジムに行ったのよ。そしたらたまたま隻腕の大佐が近くに来てその腕を治療しちゃったの。それを見ていた人たちが話を広めたんでしょうね」


 男性で、女性を怖がらず、回復魔法で欠損部位の治療ができて、1人で軍人30人をなぎ倒せるとか実は女性なのでは?


「アルス様って実は女性だったりしませんか?」

「それはないわね。この前精子提供の義務を果たしてたから」

「男性保護法の対価とはいえ精子提供って中々大変らしいですよ? というかどんなことしてるんですかね?」

「ベロニカ、はしたないわよ」

「はーい」


 精子提供をしているのなら間違いなく男性だ。だけど行動が完全に私の知っている男性とはずれている。ずれてるなんてレベルじゃない。明らかに別種だ。それに男性なのによく外に出掛けるなんてやっぱり不思議。


「でもアルス様はそんな凄い力を持っているけど本当に現代知識に乏しいからそのあたりのフォローもしないといけないのよね。この前なんて庭の池で泳いでる魚を非常食用の魚だと勘違いしてたし」

「ああ、そんなこともあったわね……」

「庭の池の魚を非常食と間違えている……?」

「不思議でしょ? それに電子機器の扱いも全然できないの。全部アイーシャさんが1から説明したらしいわ」

「まるで別の時代の人間みたいですね」


 というか時々別の時代の人間であるかのように話をしている。例えば年齢が500歳ちょうどだとか。そんな話をしていたのは記憶に新しい。


「そうね、アルス様を見つけたのは丁度1ヶ月くらい前の洞窟の調査任務の時だったんだけど、水槽の中で全身にお札を貼られていたわ」

「全身にお札?」

「ええ、本人が言うには成長防止措置をして封印されていた、とのことらしいけど」

「それじゃあ本当に古代の人間なんですか?」

「そうなるわね。初めて会った時は古代語を話していたし、統合語を話せるようになったのはフィオーネが教えてからだものね」


 じゃあ本当に古代の人間ということ……? だとしたら古代の男性は女性を恐れていなかったということ?


「本当に初めて会話した時はびっくりしましたよね、いきなり古代語で話すからどうしようかと思いましたよ」

「そうね、まあそれからいろいろあってアルス様は他の男性より優遇されているわ。この家なんかがそうよ。普通は使用人は離れに住むはずだし、護衛小隊も同じ家の中には住まないはず。なのにアルス様の家はどちらも同じ建物の中で生活できるようになってる」

「それも不思議な話ですね……先輩方なら襲われないと判断したんでしょうか?」

「どうでしょうね。でもアルス様がそれなりに私たちを信頼してくれているのは確かだからそれを裏切らないようにしないといけません」


 それからもアルス様について話をしていると、不意にフィオーネ先輩が、


「そういえばアルス様から頂いたとても質の高いエーテル鉱石、あれはどこから入手しているのかしら?」

「あれは本当に謎ですね……そもそもエーテル鉱石って地中からしか取れないはずですよね?」

「そうね、一度大陸に接岸してから大陸の山付近の土を掘り返してエーテル鉱石を掘り当てるくらいしか入手方法はないわ。それでも手に入るのは質の低いエーテル鉱石だけど」

「それに比べてアルス様の用意するエーテル鉱石の質は見たことがないほどに高いわ。もしかしてアビリティが関係しているのかもしれないわね」

「アルス様のアビリティって回復魔法じゃないんですか?」

「それがもう1つあるんですよ。詳細は伏せられてますが」


 アビリティが2つ? それってかなり希少な人間なのでは? アビリティの組み合わせ次第では軍人ならかなり優遇されるのに、男性なのがもったいない。


「あの時の調査任務の時に読んだ日記に書いてあったのは源泉、だったかしら?」

「ただ源泉の意味が分からないからどういった効果なのか軍も判断できないらしいんですよね」

「研究者も初めて見るアビリティって言ってたわね」


 そんな希少なアビリティを持っているなんて……私のアビリティと交換してほしいくらいです。

 それからもアルス様について話して、護衛小隊としてやるべきことは、

 1つ、アルス様に法律の違反をさせないこと。

 2つ、アルス様に常識を教えること。

 3つ、アルス様に軍の上層部に喧嘩を売らせないこと。


 これらに尽きるとのことだった。

 私も若輩の身ではあるけど頑張ろう。

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