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終末世界の生存競争  作者: 神凪儀天水


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16話

 そして午後。

 俺たちは家を出て、近くの駐車場へ行き、指定されたルークスを探してそれに乗り込んだ。運転席にツィエラ、助手席にベロニカ。その後ろの座席にフィオーネ、俺、グリューエルと俺が真ん中で挟まれる形で車に乗っている。

 ちなみに杖も持ってきている。


「それじゃあ出発するわよ」


 そう言ってツィエラがエンジンをかけてルークスが動き出す。


「おお、ルークスに乗るのは2度目だけどすごく早いな」

「ここからなら図書館まで10分くらいで到着するから、そんなに時間もかからないわ」

「上層部に喧嘩売った時にしれっと追加しておいて良かったよ」

「本当に上層部に喧嘩売ったんですね……」

「胆力のある男だって褒められたよ」


 あのクールな軍人は階級はなんなんだろうか。ツィエラの母が少将だっけ? ということは少なくとも少将以上があの場にいたことになる。というか少将以上の人間があれ以上いるのか……階級制だと上が詰まって昇格できないとかありそうだな。


 なんて考えていると街並みがどんどん後ろに流れていく。そしてこの車の窓は外から内側が見えないようになっているから男が乗っていても安心できる。

 だが逆にいうと車内が見えない車は男が乗っている可能性があるわけだが、今までの男は基本的に外出しないらしいし、多分ばれないだろう。

 そんなことを考えているとルークスが減速を初めて、駐車場に収まった。


「図書館に到着したわ」

「それじゃあ降りましょうか」


 フィオーネの言葉に従ってルークスから降りる。


「アルス様、護衛として私たちがついていますが、危険だと判断した場合はすぐに帰還しますのでその際は指示に従ってください」

「分かった。その辺りの采配も全部任せるよ」


 そしてツィエラを先頭にして、俺を中心として歩き始める。なんか思っていたより仰々しいな……。そのまま図書館とやらの入り口を通ると、中は静かで物音がほとんどしなかった。ただ、どこからか紙をめくる音が聞こえてくる。


「まずはアルス様の図書館の入館証を作らないといけないわね」

「入館証?」

「入館証を作らないと図書館には入れないんですよ、アルス様」


 そういうものなのか。そして図書館に入ってから視線を感じる。あれは職員だろうか? こういう静かな場所では大人しくしていて欲しいものだが。

 そしてツィエラが受付に、


「男性護衛任務に就いているE11小隊です。護衛対象者の入館証の作成をお願いします」

「かしこまりました。では用紙に必要事項を記入してください」

「代筆でも構いませんか?」

「問題ありません」


 どうやら俺の入館証はツィエラが作ってくれるらしい。いたれりつくせりだな。


「アルス様、誕生日っていつ?」

「孤児だから分からん。毎年年初に孤児全員まとめて祝ってたから年初にしておいてくれ」

「分かった」


 よく考えたら誕生日なんて知らないな……というか俺自分の親の顔も見たことないし。いままで気にしてこなかったけど結構色んなことを適当に放置しているような気がする。


「記入終わりました」

「確認します…………問題ありませんね。入館証を発行します」


 そして1枚の板が出てきた。それをツィエラが受け取って俺に手渡してくれる。そこには名前と誕生日と有効期限が書かれていた。


「図書館の入館証には有効期限があって、10年ごとに更新する必要があるから気を付けてね」

「ああ、分かった」

「それじゃあ行きましょうか」


 そう言ってツィエラが歩き出すのでそれに従ってついて行き、ゲート前で入館証を翳してゲートを開いて通っていく。なるほど、こういう仕組みなのか……。

 そして図書館の中に入ると、どこを見ても本棚になっていて、しかも2階まである。かなり大きな図書館だな。というか334年でこんなに本が作られたのか?


「アルス様、図書館で探したい本のジャンルとかある?」

「ジャンルがなにか分からない」

「何を求めて図書館に来たの?」

「俺が封印された後の帝国を知るために来た」

「なら古代文献の方を当たってみましょうか」


 そう言ってツィエラが案内してくれる。途中で他の女性とすれ違ったり目が合ったりするが、図書館ではお静かに、という張り紙があるおかげか騒ぎにはならないようだ。


 そしてツィエラについて行くと、古代文献と書かれた書庫に辿り着いた。古代ということはアルザス帝国の時代のことなんだろう。


「ここが古代文献の書庫よ。プリモディオム・カスタルムならもっと古代文献があるんだろうけれどエイト・クエレーレ・カスタルムではこれくらいしかないわね」

「とはいっても結構な蔵書数だぞ」

「この要塞は探索に特化している要塞だから古代文献の収集物も多いのよ」

「なるほどね。それじゃあ適当に文献を漁っていくから護衛もほどほどにのんびりしててよ」

「護衛はしっかりするから。図書館でも過激派女子はいるんだからね」


 過激派女子って図書館にもいるのかよ……せめて大人しく読書させてくれるとありがたいんだが。とにかく蔵書を1冊ずつ当たってみよう。

 ……これは童話、これは小説……これは誰かの日記だな。フレデリカって知り合いはいないから俺とは無関係だろう。……いや、日記ならもしかしたらモンストルムの出現とかも書かれているかもしれない。読んでみるか。


「ツィエラ、本を読む時はどうしたらいい?」

「男性専用の読書スペースがあるからそこに行きましょう」

「分かった」


 ツィエラに男性専用の読書スペースに案内してもらう。そこには男が1人もいない無人席だった。が、俺にとっては都合がいい。そのまま杖を椅子のとなりに立てかけて座り、フレデリカとやらの日記を開く。書き始めは帝国歴846年からだ。日記の名前欄にフレデリカ・アルジャーノンと書かれているから貴族だったんだな。


 そのまま内容を読み進めていくと、彼氏が帝国兵団に入団したことが書かれていたり、隣国との戦争に彼氏が駆り出されたことが書かれている。それから無事に戦争から帰ってきたことも。そして帝国歴848年に結婚したらしい。文面からも幸せだと伝わってくるくらい幸せそうに日記が綴られている。


 そして帝国歴849年。子供が生まれたらしい。名前はフレデリック。男の子だそうだ。そこからはフレデリックの成長記録となっているが、読み進めていくと、帝国歴851年、フレデリックの2歳の誕生日を迎えた。そして旦那が昇進したと書かれている。昇進してから急に忙しそうにするようになった。なんでも意図的にエーテルを暴走させて凶暴化した獣が最近多発しているらしい。その出所を探すのに苦労しているようだ。


 エーテルを暴走させて凶暴化した獣。普通ならエーテルはその生き物の最大値以上に取り込まれることはない。だが誰かが意図的にエーテルを最大値、器以上に流し込んだら理性を失い凶暴化するようだ。というかこれって俺のエーテルが使われた可能性もあるよな? まさかとは思うけど、だが俺が誘拐されてからおよそ2年が経ってる。もし研究だったら成果が出ていてもおかしくはないだろう。


 帝国歴854年。第2子が生まれたらしい。女の子だそうだ。名前はフレンデル。そしてこの頃には凶暴化した獣を討伐するために帝国兵団が出兵することが多かったらしい。旦那もよく出兵しては怪我をして帰ってきたと記載されている。旦那曰く凶暴化した獣がかなりの数いるらしく、帝国兵団が隊列を組んでようやく討伐できるレベルらしい。


 帝国歴855年。最近街中で人さらいが増加しているらしい。もともと人さらいなんてよくある話だったが、ここ最近は度を越えて酷いらしい。特に孤児院の子供や老人が狙われているそうだ。

 孤児院。あいつらは大丈夫だったんだろうか……。


 帝国歴856年。ついに凶暴化した人間が見つかった。明らかに人為的に凶暴化させられていて、対処方法が見つからない為討伐することになったらしい。早くその人為的に凶暴化を行っている人間が見つかるといいのだけれど、と書かれている。


 それからさらに読み進めていくと、日記の最後の方に気になる記述を見つけた。

 帝国歴899年。孫も順調に育っている。旦那も今では隠居して家督をフレデリックに譲っている。家は安泰だが、最近は凶暴化した獣と人間だけでなく、闇色のモンストルムが出るようになった。奴らはいきなり無から現われ、人間だけを襲っていくらしい。今のところ数で押し切っているが、1対1の状況なら間違いなく勝てないと旦那が言っていた。それだけ強いモンストルムがいるとなると人間側は戦争なんてしていないで手を取り合えばいいのに。どうしてそれができないのかしら。


 ……モンストルムの発生は帝国歴899年からだったのか。俺が誘拐されてから50年後のことだから結構近い時期に発生したんだな。しかしモンストルムの発生理由が分からない。


 旦那が帝城に呼ばれて会議をしてきた。結果、あのモンストルムは人類を滅ぼすためにこのステラが生み出した自浄作用のような物だろうという結論に達したらしい。ここ数十年で獣の凶暴化、人間の凶暴化、そして悪趣味な宗教なんてものまでできてしまって神は私たち人間を見捨てたのだろう。そして人理防衛機能を発動してモンストルムを生み出して人間を滅ぼし、新たな文明を作ろうとしているのだと帝城で結論付けたそうだ。


 人理防衛機能? なんだそれは。ステラにそんな機能が備わっていたのか? だがこの星、ステラはまだ人類を滅ぼしていない。ステラがその気になれば人類なんてとっくに滅んでいるはずなのにだ。それはなんでだ? 人類が思っていたより粘り強かったからか? だが男性はほとんど消えている。それで女性の強化がなされたのか? そもそもスキルがアビリティとかいう呼び名に変わっているのも気になる。


 だが日記はそこが最後のページとなっていて、これ以上はこの本から分かることはなさそうだ。だが最初に読んだ本にしてはかなり情報を得られた。今後はそうだな、まず帝国歴から人類同盟歴に変わった年と、男性が減った理由を知りたい。そこを重点的に探っていくとしよう。


 そう思って本を閉じた時だった。


「アルス様、そろそろ閉館の時間です」


 ベロニカに声を掛けられて気付く。空は夕日が沈んでいる。既に夜に近い、というかもう夜だ。図書館に来てからずっとこの本を読んでいたが、まさかそんなに時間が経っていたとは……。


「分かった、本をもとの場所に戻して帰ろう」


 そうして俺たちは本をもとの場所に戻してから図書館を出て、ツィエラの運転する車で家に帰って夕食をみんなで食べるのだった。


「アルス様、今日読んでた本には何か収穫はありましたか?」

「ああ、あった。モンストルムは俺が誘拐されてから50年後に現れ始めたらしい。あとは帝国歴から人類同盟歴に変わった年が分かれば何年前からモンストルムが生まれたのかが分かる。それとモンストルムが生まれた理由もおおざっぱにだけど分かった」

「モンストルムが生まれた理由、ですか?」

「あれはこの星、ステラの自浄作用だ。帝国時代の人間が馬鹿なことをしたせいで神に見捨てられて1度人類を滅ぼして新しい文明を作り出そうとしたのだと結論付けたって書いてあった」

「人類を滅ぼして新しい文明を作り出す……?」

「そうだ、つまるところ、今のステラにとっての異物はモンストルムではなくて俺たち人間ということになる」


 そしてステラにとっての人間は、モンストルムということになる。人理防衛機能が作動しているというのなら、帝国歴899年からずっと作動していることになる。そうなるとこのモンストルムとの戦いは人類が滅びない限り一生終わらないということになるな。


 この調査、思っていたより長引きそうだ。

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