14話
翌日の昼。
昼食を食べているとインターフォンが鳴った。アイーシャが確認すると、ツィエラたちとのことだったのでそのまま家に上げてもらった。
「まさか本当に私たちが護衛になるなんて思わなかったわ」
「軍の施設でお偉いさん方の前で30人ほど軍人吹っ飛ばしたら許可してくれた」
「アルス様、貴方何やってるの……」
「というかアルス様ってそんなに強かったんですか?」
「狙撃兵としては中々のものだと思うぞ?」
なんて言いながら昼食を食べ終える。そして、
「改めて、本日よりアルス様の護衛任務をすることになりました、E11小隊です」
「改めてアルスだ、よろしく。部屋は2階に空き部屋が5部屋あるから好きにつかってくれ。部屋割りは早い者勝ちで」
そう言った瞬間ベロニカが光のごとき速さで2階へ上がっていった。それを見て呆れるツィエラとフィオーネ。そういえばあと1人はまだ入隊していないのか。
「最後の1人はいつ頃来るんだ?」
「一応明日が軍の入隊式だからその後ね、多分明日の昼くらいじゃないかしら」
「そっか。一応全員分エーテル鉱石用意しておいたから、明日最後の1人が来たら渡すよ。それで新しい武器でも作ってもらいな」
「エーテル鉱石ってアルス様の杖に使われているのと同質のものですか?」
「そうだよ」
というか俺のエーテルから生み出すから大きさの違いはあれど質に違いはない。均一の質を提供できるというのは素晴らしいな。
「そんな高価なエーテル鉱石なんていただけません」
「フィオーネ、これは護衛に必要だから支給するんだよ。もし護衛中に質の悪いエーテル鉱石が壊れて使い物にならなくなったら困るし」
「しかし、あれほどのエーテル鉱石なんていくら男性でもそう簡単には……」
「世の中にはフィオーネの知らないエーテル鉱石の入手方法があるんだ、気にしなくていいよ。俺の財布は痛まないし、俺の男性としての特権を使ってるわけでもないから」
「……では、ありがたくいただきます」
こうして明日、エーテル鉱石を渡すことになった。これで俺の護衛も装備を強化することができる。あとは防具も強化したいが、エーテル鉱石を使った防具は流石にない。やっぱりエーテルを糸のように細くして服のように編み込むのが一番効果的だろうか。ただそこまで細いエーテル鉱石だと固くてポキッと折れそうな気もするけど、柔軟性を確保したエーテル鉱石、というかエーテルの糸なんて作れるか? 後日試してみるしかないな。
「あ、あと近日中に車貰うことになったから今度図書館に連れてってほしい」
「分かったわ、その時は運転するわね」
「よろしく。それと今後のE11小隊の任務には俺も同行するって上層部に宣言しておいたから」
「……ちょっと待って。それは何? 今後私たちに遺跡調査とかの任務が回ってきたら同行するってこと?」
「そういうこと。実質俺が5人目の隊員だからよろしく」
そう言うとツィエラが額に手を当てて天を仰いでいる。フィオーネは苦笑いだ。そこでちょうどよくベロニカが1階に降りてきて、
「アルス様! アルス様の隣の部屋空いてるなら貰っていいですか!」
「いいよ」
「ありがとうございます!」
「フィオーネ、私たちも部屋を決めに行きましょう」
「そうね、護衛の細かい話は荷物を置いてからにしましょうか」
こうしてE11小隊の面々はそれぞれ部屋を選び、今日から俺と同居することになった。そして全員2階から降りてきて、一度リビングのテーブル席に座る。そこにアイ―シャが紅茶を出してくれて、話し合いの時間が始まる。
「まず、護衛は任務を解かれるまで同じ家で暮らすことになるわ」
「らしいな。だからこその部屋数の多さなんだろうけど」
「そして私たちE11小隊は他にも嫌がらせで任務に回される可能性もある」
「その時は俺もついていくから回復と狙撃は任せてくれ」
「護衛対象は家にいて欲しいのだけど……」
ツィエラが本音を吐いているが、正直護衛対象の周囲に護衛がいなければ意味はないだろう。だから俺が任務についていけば護衛もできて任務も達成できる。一石二鳥だ。
「失礼します。アルス様、私も任務の同行はやめておいた方が無難かと思います」
「アイーシャ、どうして?」
「男性保護法の週に1度の精子提供の日と被る可能性があります。男性保護法を破ると男性は保護対象から外れてしまうため、長期任務だった場合は厳しいかと」
「そうよ、男性保護法があるんだから家で大人しくしてなさい」
「つまり任務前に男性保護法の義務を果たしてしまえばいいんだな?」
なら簡単だ。どうして現代の男は週に1度しか精子提供できないのか知らないがこっちは毎日でも提供できるレベルで漲ってる。だから精子提供に関しては何の問題もない。
「アルス様任務についてくる気満々ですねー」
「そりゃやっぱり男なら冒険したいし。森の中なら慣れてるから問題なく動けるし」
「ですが私たちは一応護衛任務についた小隊ですので流石に嫌がらせでも他の任務は回ってこない可能性だってあります」
「任務が回ってこないならそれでもいいさ。多分欠損部位の治療とかで呼ばれることもあるだろうし、退屈はしないだろう」
軍からは何も言われていないが、俺が欠損部位の再生をしたことは既に伝わっているはず。だから今後欠損部位ができるような怪我をしたら俺のところに治療の依頼がくるはずだ。軍人も育てるのは楽じゃない。欠損部位を治療できるのなら治療して再び前線に送る方がいいだろう。
「それと母から手紙を預かってるわ」
「ツィエラの母から?」
手紙を受取って中身を読むと、どうやら昨日の上層部の中にツィエラの母がいたらしい。俺のエーテル弾の多重展開が見事だったと記載されている。あと娘に関しては好きに使ってくれて構わないとも。そして娘をよろしくお願いしますという言葉で締めくくられている。
「なんて書いてあったの?」
「昨日上層部の人たちにエーテル弾放つ寸前までいったんだけど、その中にツィエラの母親が混ざってたらしい。昨日の戦闘が見事だったと、あと娘に関しては好きに使ってくれていい、娘をよろしく。って書かれてる」
「娘を好きに使っていいってお母様は人使いが荒すぎるのよ……」
「いやいや、そういう意味じゃなくて男女の意味で好きにしていいって意味では?」
「ベロニカ、男性が自ら女性に手を出すなんてことは本の世界でしか起こらないわよ」
そんな本があるのか……。図書館に寄贈されてたら笑うな。しかしツィエラの認識は少し甘いようだ。俺は女性に対して嫌悪感なんてなに1つない身だから全然手を出せる。まあまだ内緒にしておくつもりだが。それに精子提供の代わりに子種を直接仕込んでも良いと言われているし、その時の選択しだいではツィエラには苦労してもらうとしよう。
「アルス様」
「どうした、アイーシャ」
「本日分の夕食の食料が足りないと思われますので買い物に行ってまいります」
「分かった、頼んだよ」
そう言ってアイーシャは買い物に出掛けて行った。
「ところでアルス様、アルス様のアビリティって回復魔法なんですよね?」
「そうだけど、不審なところでもあった?」
「いえ、以前ジムで欠損部位の治療をした時はよくエーテルがもったなって思ったので、もしかしたらエーテル量増大とかそういった珍しいアビリティも持っているのかと思いまして」
「正直に言うともう1つアビリティはある。けどこっちは公表はしないつもりだ。また成長防止措置を施されて封印されるかもしれないし」
「……そんなえげつないアビリティ持ってるんですか」
「内緒だよ?」
「はい、他言はしません」
それからは食事の話をしたり風呂に入る順番がどうのといろいろ話し合っていたが、途中雑談を挟んで庭に非常食用の魚を飼ってる話をすると、あの魚は観賞用の魚であって非常食ではなかったらしい。ツィエラとベロニカは事情を知っているから説明してくれたけど、フィオーネは事情をしらないからかなり驚いていた。……おもに俺の無知に。




