11話
翌日。
朝目が覚めると知らない天井だった。そういえば俺は新しい邸宅に引っ越したんだっけ?
そして顔を洗って朝食を食べながら今日の予定を考える。確か午後からベロニカが来るから午後は開けておかないとな。あとは今日使用人が来るんだっけ? どんな人だろうか。楽しみだな。
なんて思いながら食事を済ませて食後のコーヒーを淹れる。まさか帝国名物のコーヒーまで売っているなんて、現代も中々やるな。なんて思っていたらいきなり家の中に電子音が響く。
何事かと思って周囲を見渡して音の発信源を見ると、何やら人の顔が映っている。これは通話ボタンを押せばいいのか? 取り敢えず押すか。
「誰だ」
「本日より使用人として派遣されましたアイーシャと申します」
画面に映っているのはどうやら俺の使用人だったらしい。取り敢えず玄関を開けて出迎える。
「はじめまして?」
「はい。はじめまして。本日よりアルス様のお世話をさせていただきます、アイーシャと申します。本日よりよろしくお願いします」
そう言ってアイーシャは頭を下げる。綺麗なお辞儀だ。綺麗なピンクの髪でロングで首元で二つくくりにしている。顔は若干幼さを残しているような気もするが使用人として派遣されるのだからまあ俺よりは年上だろう。
「じゃあこれからよろしく」
取り敢えずアイーシャを家に上げて、椅子に座らせてから、
「それで使用人の言うお世話って何するの?」
「基本的に炊事洗濯、買い物などを行います。一応護衛訓練も受けておりますのでいざという時は戦闘も行います」
「すごいな、なんだか貴族になった気分だ」
「それとアルス様には護衛を付ける権利がございます。こちらに各小隊の構成メンバーが記載されたカタログがありますのでもしよければ御目通しください」
そう言われて受取ったカタログには本当に各小隊のメンバーの名前と顔写真が乗っている。流石にアビリティは秘匿されているが、ランクなどは隠さずに載っている。
「分かった。あと2階に部屋が6室空いているから好きな部屋を使ってくれ。それと今日は午後から来客があるからそのつもりで。あと夕飯は昨日の残りがあるから今日は作らなくていい」
「承知いたしました。では昼食のご用意をさせていただきます」
「ああ、よろしく」
こうして使用人との顔合わせが終わった。若干幼さを残してたけど本当に俺より年上だよな……?
それから冷蔵庫の中身を調べては昼食の食材がないため買い物に行ってくるとのことで出掛けてしまった。一応合鍵は渡しておいた。
しかしいきなり知らない女性と同棲することになるとはなあ。
まあそんなこと考えても仕方ないしもらった小隊のカタログでも眺めておくか。
カタログはAランク小隊から順に載せられていて、任務の受けた数と達成率なども書かれている。流石はAランク小隊というべきか、どこの小隊も5人揃っていてバランスのとれた陣形になっている。
それからBランク小隊。こちらも基本的に5人の小隊だが、たまに4人の小隊なども見受けられる。これはもともと4人でやってきたのか? それとも人の入れ替わりが激しいのか。こうやって護衛という観点で見ると人数が少ない小隊というのは懸念点になるんだな。
だが任務の達成率は高いし護衛としては十分な力量はあるのだろう。
次にCランク小隊。こちらは良くも悪くも普通といった感じだ。メンバーは5人のところもあれば4人のところもある。そして依頼の受注数がまだ少ないな。Cランク小隊は一人前1歩手前と言ったところか。そういえばシャリエッタもCランク小隊にいたような気が……いた。C12小隊。小隊のメンバーは5人。シャリエッタが隊長を務めているのか。任務の達成率はCランク小隊の中では断トツで高いな。そしてこのシャリエッタ。金髪ロングストレートだが少し髪がゆるふわウェーブとなっていて可愛らしい。瞳は紅くて綺麗だ。もしツィエラやベロニカと出会ってなかったら指名していたかもしれないな。
Dランク小隊。こちらは結成してまだそんなに時間が経っていないのか下積みの時期といった感じだな。依頼達成数も少ない。それに戦闘系の依頼が少ない。依頼は要塞内の連絡役や監視、警備が主になっている。小隊のメンバーも5人そろっている小隊のほうが少なくてあまり見どころが無いな。
最後にEランク小隊。任務の達成数を見る限り本当に作りたての小隊といった感じだ。それに小隊のメンバーが3人のところもある。そういえばツィエラの小隊もメンバーは3人だったよな……。そう思ってツィエラの小隊を探す。E11小隊。あった。メンバーは、4人? だが俺の護衛依頼をしていた時は明らかに3人だったが……あれ、1人だけ入隊予定と書かれている。年齢は15歳。どうやら軍に入るために必要な条件を満たしていなかったらしい。それで3人で警護をしていたのか。そしてこの小隊カタログには俺の護衛任務は記録されていないみたいだ。まあ最近の任務だから載っていないだけだろう。
さて、問題はこの家に護衛を入れる必要があるのかということだ。そもそも護衛といっても女性から男性を守るためのものであって、家にいる限りは安全なはず。ということは外に出る人が護衛を必要とするのか? もしかして図書館に通う予定の俺には護衛は必須だったりするのだろうか。
図書館ってそもそも女性がたくさんいるものなのか? いやまあ基本的にこの街には女性しかいないからいたとしても女性なんだろうが、図書館にいる女性が襲ってくるなんてことがあるのか……?
そうやって煩悶と悩んでいるとアイーシャが帰ってきた。せっかくだし聞いてみるか。
「お帰りアイーシャ。ちょっと聞きたい事があるんだけど」
「ただいま戻りました。それで聞きたい事とは?」
「図書館に行く時って護衛付けた方がいい?」
「そうですね。確実につけた方がいいです。つけなければおそらく図書館には辿り着けないと思います」
え、そんなに? ちょっと怖いんだけど?
「ちなみに何に阻まれて図書館に辿り着けないの?」
「もちろん一部の暴徒と化した女性です」
「その女性たちに自衛として杖で砲撃するのは許されるかな?」
「程度にもよりますが基本男性はそういうことをするくらいなら護衛を付けて欲しいというのが要塞としての本音です。私は使用人ですので常にご一緒することはできませんので、やはりどこかへ出かける頻度が高いなら護衛を用意するのが無難かと思われます。それに男性保護法によって護衛任務は無料ですから」
男性保護法便利だな……。生きているだけでここまでVIP待遇なんだから。取り敢えず護衛はつけよう。あとでベロニカに話を持ち掛けてみるか。
再びカタログを眺めている間に昼食が用意されているらしく、段々といい匂いがしてくる。そしてまもなく昼食が運ばれてきた。
香ばしさのもとはパンだったらしい。バゲッドにベーコンとトマトとレタスを挟んだサンドウィッチだ。
「昼食の用意が整いました」
「ありがとう。アイーシャは食べないの?」
「私は後ほどいただきます」
「別に一緒に食べてもなんとも思わないから、洗い物も時間差で増えると面倒だろうし」
「……ではご一緒させていただきます」
そうして俺とアイーシャは一緒に昼食を食べてこの後やってくるベロニカに備えることにした。




