第一話
息を吸う音。
寄り添うように優しく奏でられる音。
この曲は、一羽の鳥の物語。
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「うーん……もう一度、Fの所から。」
「「はい!!」」
……何度も練習したはずなのに。
なぜ合わないのだろうか。
緩やかなクレッシェンドから2本のユーフォニアムによって紡がれていくそよ風の様な優しいメロディー。
そこから、離れ離れになってしまう家族に愛を伝えるような、優しいフルートのソロ。
「みなさん、この曲のイメージを持っていますか?」
花宮先生からの質問に対して、顔を見合わせる私達。
「うんうん、多分、今の時点で、『イメージを持っているかどうか』って聞かれても、イメージを持っている人は少ないと思います。だけど、この曲は物語性のある曲だから、イメージを持った方がきっと良い演奏ができると私は思うから、考えておいて下さいね。」
「「はい!」」
「じゃあ、今日は合奏終わりにします。次の部活で曲のイメージについてみんなでミーティングしようと思うので、必要な人は自分のイメージについて書いたメモ書きを用意しておいて下さい。」
「気を付け、礼!」
「「ありがとうございました!」」
オーボエを片付けながら、空を見上げる。
私は、空を見るのが大好きだ。
流れて行く真っ白な雲に、曇りのない青空。
その青空の下を自由自在に飛んで行く沢山の鳥たち。
鳥を見ていると、自然と晴々とした気持ちになる。
それこそ、どこまでも飛んで行けそうな……
「はぁ、私も鳥になりたかったなぁ……。」
「まーたそんな事言ってるの?」
「!」
振り返ると、笑っている花宮先生がいた。
「花宮先生……」
「そうだねぇ、確かに、来世は鳥になるのも悪くはないかも……」
そう言いながら空を見上げる花宮先生の目には、一羽の鳥が映っていた。