三片
【個性】二〇二二年八月六日
皆で同じ物を書き、その絵を壁一面に並べて貼る。
その中で名前を見ずとも誰が描いたか一目で分かり、一際強く印象に残るのは、群を抜いて上手い絵か、群を抜いて下手な絵だった。
抜きん出ている個性は、両極端。
上ばかり見ていたら、下から足元を掬われる。
光の中で輝くか、闇の中で煌めくか。
【原級留置】二〇二二年八月十八日
「俳優になりたいんです」
「僕は応援するよ」
友人が進路相談に行ってそう言われたと喜んでいたのは半年前。
卒業式の今日、何故かその子がいない。
「進路について助言したのに、何の挨拶にも来なかった子には、単位をあげなかったんだ」
そこには、ずっと学校を卒業出来ていない子供がいた。
【白か黒か】二〇二二年八月二十三日
「頭の中は真っ白なのに、お先真っ暗な人ってある意味、潔くて面白いよね」
「いや、どこが?」
「だって白か黒か聞かれたら、ほとんどの人が灰色じゃない?」
確かに、白か黒か聞かれたら、その時は僕も灰色だった。
あの時、そう言って笑っていた君は、今の僕を笑い飛ばしてくれるだろうか。
【目には目を歯には歯を】二〇二二年八月三十一日
「うちの娘を弄んだ男に罰を与えたいんです」
「では、こちらに被害内容を記入して下さい」
その書類に目を通した弁護士は、口角を上げる。
「まだ足りませんね」
「はい?」
「彼の母親の名前に見覚えは?」
「……ま、まさか」
「彼女にしたことを覚えていますか? これはあなたの罰なんです」
【断捨離】二〇二二年九月一日
アレはいる、コレはいらない、ソレはどっちでもいい。
私はどっちつかずなモノになってしまったが、この部屋には仲間がたくさんいる。
そんな私たちに囲まれているこの人も、どっちでもいい存在なんだろう。
私たちにとっても、そうであるように。
私はアレになれないなら、コレになりたい。