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一片





 【呪い】 二〇二二年二月二十七日


 「私が死んだら続きを書いて」


 そう言い遺して亡くなった桜姉さん。


 その呪いの言葉どおり、いつでも私の筆には彼女が乗っていた。


 でも帰らぬ旅に出る前になって、急に自分の作品と創りたいと、私が私を強く引き留める。


 だからこの世に忘れていくことにした。


 さぁ、私は誰の筆に乗ろうか――――



  




 



 【呪詛人形】二〇二二年五月十三日


 この家の住人がよく見渡せる戸棚は、とても快適だ。


 人が集えば皆、自分が他所でしてきた愚行を、ギラギラと目を輝かせ次々と語りだす。


 その度に生まれる『黒』が、私に力を与えることも知らずに。


 さあ、そろそろ『黒』が全身に廻る頃。


 後ろ暗い富者達の手を渡って来た私は、幸運を運ぶ人形ではないのよ。










 【インフルエンサー】二〇二二年七月二十六日


 他人の秘密、歴史の真実……人間は隠されたものに強く惹かれる。


 だから私は、私を隠して嘘で塗り固めた。


 経歴詐称、作り話、加工写真。


 そうしたら私にたくさんの愛が送られてくる。


 架空の世界では、私は人気者。


 毎朝毎夕、独りぼっちの部屋で理想を映した世界を創り続ける。


 『外の世界も嘘ばかり』









 【不死】二〇二二年七月二十六日


 着物を着て、三味線と小唄が上手で、恋に奔放で、女に厳しい伯母が大嫌いだった。


 それはもう私が若い頃の話。


 墓参りの際、伯母が吸っていた缶ピースの蓋を開けたときの馨しい香りが、ふと鼻を掠めた。


 そのとき、伯母の姿と私が娘に抱いている感情が重なる。


 まさか、その血がここに生きているなんて。








 【密室殺人】二〇二二年七月二十六日


 「疲れてるんじゃなくて、憑かれてるんだよ、お兄さん」


 人気のない終電には似つかわしくない少年の声で目を覚ます男。


 「他殺で亡くなった人ばっかりだね」


 男は綺麗に笑う少年の背後の窓に映る人々に見覚えがあり、後ずさる。


 「最期まで救えないね」


 逃げ場のない場所には目がないでしょ?












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