強襲作戦 p.5
スリンガー達が撃ち込んだ避雷針の破壊を別車両の者達に任せ、海斗達は街の中をひたすら走る。
焦った様子で護送車を運転する兵士がまっすぐ向いたまま舌打ちする。
「どうする! どれだけ走っても相手が展開した異界からは出られない! 誰かがあのでかい槍みたいなのを壊してくれないと逃げられないぞ!」
「分かってる。けれど、今は一か所に留まらずに逃げ回るしかない。きっともう少しで異界の解除が……あれは?」
ふと、海斗は護送車が走る先の道中に、待ち構える人影を見た。
猛スピードで突っ込んでくるターゲットの護送車を前に、シャムはふふーん、と得意げに鼻息をならして右腕をぐるぐると回す。
『シャムさん、俺達も援護します!』
シャムの無線から、周辺で待機しているスリンガー達の声が響く。
「大丈夫大丈夫。財閥の人達がどんな手を使ってくるのか分からないんだし、最初の接触は私がやるよ。それに……」
そう言ってシャムは右手を真横へと延ばす。
体内の渦を回し、邪術が発動すると、シャムの右手の周りに九つの青い炎が出現した。
それぞれの炎の中には血濡れた心臓が浮かんでおり、血管がどこにも繋がっていないはずのそれは、ドクンドクン、と鼓動を刻んでいる。
「私の近くにいたら巻き込んじゃうしね!」
九つの心臓のうち、一つを鷲掴みにし、それを握り潰す。
心臓の元持ち主の邪術の術式と大量の渦がシャムの中へと流れ込む。
「そりゃあ!」
心臓を握りつぶした右こぶしを大きく横へと薙ぎ払う。
その軌道に沿って現れたのは、道路一帯を横断するほどの大量の氷の礫。
氷の礫は一斉に発射され、護送車に横へ逸れる隙間すら与えない。
弾丸となった氷の礫は真正面から護送車へと飛び、車の装甲すら軽々と貫通し、五秒ほど掃射され続けた。
乗車している者が無事に逃れるはずもない。
護送車は少しの間蛇行したのち、氷の礫の攻撃によって横転し、シャムの少し前で動きを止めた。
「ありゃ。もう終わっちゃった?」
呆気なく敵の動きが止まってしまい、拍子抜けしたシャムはぽりぽりと頭をかく。
だが、突然護送車のボディが中から蹴破られ、財閥の兵士達が複数飛び出してきた。
全員が上半身に機械を身にまとい、背中からは四本の銀色の触手を生やし、手には最新鋭のアサルトライフルを装備している。
「え? 何あれ、強化外骨格?!」
メリッサと同じリアクションをするシャムの周りに財閥の兵士達が囲んで着地する。
『シャムさん! 今行きます!』
無線の先からスリンガー達が叫ぶ。
安全を期して距離を置いて待機させたのが仇となったか。
他の団員達がシャムの援護に回れるまで少しの隙が生まれてしまった。
「氷程度の攻撃なら耐えれる! 構わず撃て!」
兵士達は一斉に発砲するも、シャムは揺るがない。
「バレッツを舐めてもらっちゃ困るなぁ!」
そう言ってシャムは一瞬にして右腕の周りに浮かんだ心臓を掴み、空いていた左拳で叩き潰す。
瞬間、シャムの足元から大樹の蔦が地面を押しのけて天高くそびえ立った。
財閥の兵士達が放った弾丸は突如現れた大樹によって次々と弾かれていく。
「な、どうなっている! 邪術は一人につき一種類しか使えないんじゃ……」
「これが私の邪術てこと!」
シャムが腕を振り、大樹の蔦がうねる。
巨木の鞭は周りにいた兵士達を薙ぎ払い、肉を割いて押しつぶす。
一瞬できた隙を見てシャムは大樹の網から外へ出た。
大樹によって押しつぶされた兵士の死体があったが、その傷がみるみると治っていく。
「ん? これって……」
そう思った途端、死んでいたはずの兵士が上半身を起こして発砲。
ギリギリのところで身をかがめてシャムは弾丸を交わした。
「ちくしょう!」
兵士は悪態をついてライフルを捨て、右こぶしを上げる。
その手の甲には紋章のような入れ墨が刻まれていた。
「うわ、契約者ぁ?!」
シャムももう一度体内の渦を廻し、邪術を発動。
兵士が発動させた雷の邪術は光の速さでシャムの頭上から落ちてくるも、野生の勘に似たシャムの先読みが早かった。
相手が邪術を発動させる数舜前に、またしてもシャムを巨木が囲う。
雷は巨木を伝って地中へと流れていき、シャムへの攻撃が逸れる。
間を置かずシャムは腰裏から銃を抜き取り、兵士へ向かって発砲。
不意を突いたはずの邪術すらも防がれ、呆気に取られた兵士はシャムの弾丸の餌食となった。
契約者も獣と同様に強力な再生能力を保有しており、邪術による攻撃では仕留めることは出来ないが、シャム達が使う銃の弾丸を脳天に当てれば一撃でトドメを刺せる。
シャムは仕留めた兵士にも目をくれず、すぐに無線でスリンガー全員へ通信を繋げる。
「気を付けて! 財閥の兵士は最新鋭の強化外骨格を装備した契約者だよ!」
シャムの忠告を受けたスリンガー達から『了解!』と返事がすぐに返ってきた。
シャムもすぐに最前線へと駆けだし、戦況は激化の一途を辿る。




