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Slinger - スリンガー -  作者: 速水ニキ
第二章 因果ノ楔
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強襲作戦 p.3

 海斗は護送車の助手席に座り、時折車が揺れる中、手元のタブレットを操作する。

 拠点内の装備品状況と調達スケジュールチェック、原典の頁回収任務の担当決め、衣食住の改善案、とやることは山積みだった。


「いやぁ、海斗さんが来てから本当に助かってますよ。財閥は金はあっても立ち上がったばかりで環境構築がまだまだで」


 ドライバーの男が海斗と海斗のタブレットを横目で見ながら話しかけてきた。

 男は、護送車の後部座席や後列の車に乗っている者達と同様に、防弾チョッキやいかついヘルメットを着用し、重武装した軍人のようないでたちをしている。


 対する海斗はいつもの服装に防弾チョッキを上から付けているだけで、大分軽装だ。

 長い黒髪を煩わしく思いながら払いのけ、タブレット操作を黙々と続ける。


「俺なんて全然……どうにか皆の役に立とうとしてるだけですよ」

「いやぁ、でもヒンメルさんに気に入られてるってことは相当優秀な証ですよ。あんなに仕事してるのにピンピンしてるし」

「褒めても何も出ませんよ。それより、本部に着くまで何もないことを祈りましょう」


 確かに、とドライバーがボヤく。

 護送車二台は現在、財閥の拠点から出て車で一時間ほどの距離の街中を走っており、夜中ということも相まって、人の通りは少ない。


「流石の”組織”とかいうスリンガーの奴らも街中でドンパチはしないでしょう。一番ピリつくのは街を出た瞬間でしょうかね」


 ドライバーはハンドルを切りつつ目の前の暗闇を眺める。

 海斗はタブレットを仕舞い、ふと護送車の窓から見える夜空を見上げた。


「まぁ、俺達も連中も、民間人を巻き込むようなことはしたくないはずだ。だから……ん?」


 海斗は暗い夜の空に何かが点滅しているのを見た。

 暗がりでよく見えないが、空高く飛んでいるそれは黒いシルエットながらも飛行機のような両翼を左右へ延ばし、海斗たちの上空を飛んでいる。


 と、同時に、何か黒い影がその飛行機の横を抜き去り、海斗たちの方向へと、上空からほぼ直角に堕ちてきた。


「ブレーキ! 敵襲!」


 海斗が叫び、ドライバーが咄嗟にブレーキを叩く。

 急停車した護送車の後ろを走っていた車もハンドルを切って横になって停車する。

 瞬間、二台が通っていたであろう車道の真ん中に、一本の柱が降り、アスファルトの道を突き刺す。


 それは獣の骨で編まれた、歪な形をした槍だった。

 人の三倍は大きい槍のあちこちに獣の頭蓋骨や身体の骨が組まれており、それぞれの隙間から怪しい紫色の光が漏れ出ている。


「異界が展開される! 警戒態勢!」


 海斗は耳にかけていた無線からすぐに全員へ指示を出す。

 すると、槍から漏れ出る光がさらに輝きだし、紫色の光の柱は天高く昇っていく。



 街の少し上空を飛ぶ飛行船は後部ハッチを全開にし、ハッチの近くに人影がいくつも並んでいた。

 空の風を全身に受けながら、メリッサ、シャム、そして後ろに控えるスリンガーの団員達は夜を煌めく街を見下ろす。


避雷針リードランスの着弾を確認。空間湾曲発生。異界が展開されます』


 オペレーターの報告通り、さきほどこの飛行船から投下された異界展開用兵器、避雷針リードランスの効力が発揮され、メリッサ達が乗る飛行船のすぐ横を、地上から登って来た光の柱が空へと駆けていく。


 ぐにゃりと辺りの光景が歪む錯覚を覚え、メリッサはそれを合図に戦闘態勢に入る。

 真っ黒だったはずの空は紫色に塗りつぶされ、街の一部とメリッサ達の飛行船は避雷針リードランスが展開した異空間、”異界”へと引きずり込まれる。


 本来この異界の展開は獣や契約者達が人間を秘密裏に引きずり込み、誰からの邪魔をされずに巻き込んだ人間を殺すために使われるが、メリッサ達”組織”は獣の死骸を使って異界を展開する邪術の道具として改造することに成功していた。


「作戦開始、先行するわ」

『ヒャッハー! いこうぜメリッサちゃん!』

「あ、それ私が言いたかったのにー」


 メリッサは作戦開始を告げてルーズが茶化し、シャムも文句を垂れながら空へと身を投げた。

 二人に続いて他の団員達もそれぞれ飛行船から地上へ向かって落下を始める。


 空気抵抗を一身に受けながら、メリッサはターゲットの様子を伺った。

 避雷針リードランスの眼前に停車していた護送車のうち一台が残り、もう一台がその場から走り始めていた。


「シャム。予想通り、相手の一台が逃走、それに原典の頁が積まれている可能性が高い。残った一台は避雷針リードランスを破壊して異界の解除に回るつもりよ」

「分かった! それじゃ打ち合わせ通り、私は原典の頁を持ってる方を追う。メリッサは避雷針リードランスの防衛だよね!」


 そう言って、シャムは他の団員達と共に、メリッサと着地点をズラして降下していく。


「頼んだわよ」


 聞こえたかは分からないが、メリッサはそう呟き、両足へ邪術を発生させるエネルギーの源、”渦”を回す。

 渦はメリッサが保有する邪術の効果に沿い、両足が炎に包まれ、邪術による爆発が生まれた。

 爆炎の衝撃を利用し、メリッサは空中落下から軌道を変え、眼下に待ち構える財閥達へと突撃する。

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